
2025年11月28日
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パナソニック ホールディングス株式会社(以下、パナソニックHD)は、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に出展したパナソニックグループパビリオン「ノモの国」において、万博閉幕後にパビリオン建築に使用している建築部材の再利用・再資源化を徹底することで、建築物における99%以上(※1)のリユース・リサイクル率および廃棄率1%未満を実現する。この取り組みは、パナソニックグループが掲げる長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」を体現するものであり、万博が掲げる「未来社会の実験場」というテーマに対して、持続可能な社会の新たなスタンダードを提示する挑戦でもある。「ノモの国」総合プロデューサーの原口 雄一郎(はらぐち ゆういちろう)が本取り組みに懸けた思いと、今回のレガシーを次世代へとつなげるグループとしての決意を述べた。
※1 展示物を除く建築物(コンクリート、鉄、廃プラスチック、外壁、混合廃棄物、石膏ボード、外構など)を重量ベースで算出。
パナソニックグループは、「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現に向け、100年以上にわたり社会課題の解決と人々のくらしの向上を目指して事業活動を展開している。その実現の前提として地球環境課題の解決があり、長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」(以下、PGI)を掲げ、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの実現に挑み、さまざまなインパクトを広げている。
今回「ノモの国」で建築物における99%以上の資源循環を実現するにあたり、総合プロデューサーの原口 雄一郎(はらぐち ゆういちろう)は次のように語る。
原口:「ノモの国」は資源循環型のパビリオンとして、企画段階から、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会が掲げる「98.1%(重量ベース)のリサイクル率」を超えることを目指して取り組んできました。グループ内外の協力会社と知恵を出し合いながら、建築・展示内装工事を進めてきました。
パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 万博推進プロジェクト 「ノモの国」総合プロデューサー 原口 雄一郎(はらぐち ゆういちろう)
原口:建築においては「3つの循環で生まれるパビリオン」として、工場で出た端材・廃材からアップサイクルした家具に加えて、家電から回収したリサイクル鉄や銅、ガラスを建築資材として活用するなど、パナソニックならではの技術と循環スキームを生かした取り組みを展開しました。企画の段階から、設計・施工を請け負っていただいた株式会社大林組や社内外の関係先と連携し、使用する建材や素材のデータベースを構築しながら、最終的なリユース・リサイクルの方法を見据えて準備を進めました。
企画段階から進めてきた取り組み内容は、「使用済みの家電がパビリオンに生まれ変わる」として、2023年7月時点で発表しています。
原口:今回のパビリオン建築における前例なき挑戦は、パナソニックグループが長年にわたり培ってきた技術力と思想の結晶とも言えます。家電を製造するメーカーとしての素材知識、設計段階からの循環設計、そしてグループ内外の連携力が結集した成果であり、まさにPGIを体現する取り組みとなりました。
この挑戦は、万博が掲げる「未来社会の実験場」というテーマに対して、資源循環型社会を可視化することで、持続可能な社会の新たなスタンダードを提示するものとなります。
「ノモの国」では、「商品からパビリオンへ。そして再び商品へ」をテーマに、社内外のノウハウを最大限に活用し、パナソニックグループならではのリサイクルモデルを構築した。
主要な柱や梁の98%に使用している家電リサイクル鉄(約97トン)、残り2%のパビリオンで使用した鉄も含め、全ての鉄を、東京製鐵株式会社との連携により、リサイクル鉄の循環スキームに戻し、再びパナソニックグループ製品の材料として活用する。幹線ケーブル(891m)に使用した家電リサイクル銅(約1.2トン)も、三菱マテリアル株式会社と連携により同様に循環スキームに戻すことで再びパナソニックグループ製品の材料として活用。加えて、重量ベースで建築物の大半を占めるコンクリートをはじめ、石膏ボード、プラスチック、塩ビ管、金属屑などの建築資材についても再資源化する。
原口:パビリオン建築には木造、鉄骨など複数の選択肢がありましたが、当社の家電のリサイクル技術を最大限に生かせる鉄骨を採用しました。とはいえ、建築のリサイクルには家電とは異なる知見が必要であり、今回の鉄骨やコンクリートのリサイクルなど、株式会社大林組の知見とノウハウにも大きく助けていただいています。
建築においても、例えば、電気工事を請け負う会社、部品を調達する会社といった、建築物が出来上がるまでの多様なサプライチェーンが存在します。リサイクルを実現するには、そのサプライチェーンを下流から上流まで遡って、一つひとつ、どうやって扱っていくかを、解体業者や素材処理会社など各社と事前に連携し、素材ごとにリサイクルの手法を構築する必要がありました。閉幕後を見据え、建設前から関係各社と協議を重ね、鉄や銅などの素材ごとに循環の仕組みを創り上げていきました。
パナソニックが長年蓄積してきた家電リサイクルのノウハウと技術があったからこそ、関係各社との連携が可能となったと思っています。設計段階から、「最終的にリユース・リサイクルする」という強い意思を全員で共有できていたことが、今回の成果につながりました。これは一社では到底成し遂げることはできない、共創の賜物です。
原口:リユース、そしてアップサイクルの取り組みでは、既存の素材をどう生かすかが重要になります。リサイクル以上に創造力が求められる領域で、社内外の共創があってこそ実現しました。
今回のパビリオンでは、3年前から、当社グループの全国の工場と連携し、さまざまな工程で出る端材・廃材を集めて、それらをパビリオンの中にいかに取り入れていけるかを建築家や設計者と共に検討していきました。端材を使うことから、どんな形や分量が得られるかも分からない中で、皆さんと共に共創しながら、応接室の家具、照明器具などを製作しました。
閉幕後は、応接室で使用したアップサイクル製品(円盤照明、PALM LOOP®ボードを用いた家具、プリズムシート照明)やパビリオン内で使用した設備機器などは、パナソニックグループ内外で再活用が決まっています。
教育・創造・研究の場においても次のような新たな価値を創出しています。
※2 「ノモの国」の外観を構成している鉄のフレーム
※3 2025年7月29日プレスリリース https://news.panasonic.com/jp/press/jn250729-1
原口:今回、GREEN×EXPO 2027に出展する東邦レオ株式会社のSTUDIOのデザインを、「ノモの国」の建築デザインを手掛けた永山祐子氏が担当されることがきっかけとなり、永山氏の提案により、ファサードフレームのリユース先が決定しました。
「自然との共生や幸福感を、新たな明日の風景として可視化する」というGREEN×EXPO 2027の理念は、パナソニックグループの使命や「ノモの国」のコンセプトと深くつながっています。特徴的なファサードがそのままの形で活用されることをうれしく思います。
今回のリユースは、単なるモノの継承にとどまらず、「循環」や、「心を解き放つ」といった、当社が大事にしてきた思いも含めて、次のEXPOに受け継がれていく。未来につながるかたちで思いが残ることは、非常にありがたいことです。
※4 金属のスパッタリング加工によって光沢や機能性を持たせた、薄くて軽い膜状の布地
原口:学生たちは、環境配慮型のモノづくりに関心を持ちながらも、社会において実際に貢献する機会が少ないと感じておられましたが、今回の素材を扱うことで、リユースを実践し、創造的な挑戦ができると喜んでおられます。
原口:その他、一部の展示物はそのまま残すことが難しいものもありますが、科学館などの施設と連携し、部分的でも継承できるよう調整を進めています。
「ノモの国」には、α世代の子どもたち11万人以上を含む多くの来場者が訪れ、当初目標(45万人)を超える約47万人となった。
原口:開幕最終の日まで、一人ひとりのお客様と共に過ごし、楽しんでもらえるよう努めてきました。これからは、ここで紹介したリユース・リサイクルの取り組みを本格始動していくことになります。
資源循環の取り組みは、普段、なかなか表からは見えにくい活動です。しかし、私たちパナソニックグループにとっては、環境に配慮した活動そのものが企業としての根幹を成す、まさに事業の柱であり、目立つかどうかに関わらず、継続して取り組んでいくべきことです。
今回得た知見・ノウハウ、新たに開発した技術などは、裏方で日々、汗をかいている方たちの努力によって実現したものであり、その取り組みや思いが来場者に少しでも伝わっていれば幸せです。
世界中で働くグループの社員にも、「ノモの国」で実現した資源循環の姿を誇りに感じてもらい、このレガシーが次世代につながる新たなスタンダードとして根づいてほしいと思います。
パナソニックグループは、今回の大阪・関西万博での共創を通じて得た新たな知見・技術・ノウハウを、今後の社会実装に向けたレガシーとして生かし、さまざまな取り組みを積み重ねることで、「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現を目指していく。
記事の内容は発表時のものです。
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