【大阪・関西万博】大人も子どもも最新技術による「Unlock」体験を~パナソニックグループパビリオン「ノモの国」が竣工

2025年3月21日

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【大阪・関西万博】大人も子どもも最新技術による「Unlock」体験を~パナソニックグループパビリオン「ノモの国」が竣工

4月13日の開幕が近づく「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」。2月中旬、会場となる大阪市此花区の夢洲において、パナソニックグループの体験型パビリオン「ノモの国」の竣工式が行われた。「解き放て。こころと からだと じぶんと せかい。」をコンセプトに掲げる当パビリオンでは、次代を担う子どもたちの感性を刺激し、想像する力を「Unlock(解き放つ)」するさまざまな仕掛けが用意されている。建築設計を手掛けた建築家・永山 祐子(ながやま ゆうこ)氏とパナソニック ホールディングス株式会社(以下PHD) 関西渉外・万博推進担当参与の小川 理子(おがわ みちこ)をはじめとする関係者の思いを交えながら、完成したパビリオンの様子をお伝えする。

「Unlock」体験を提供する「ノモの国」が竣工

パナソニックグループのパビリオン「ノモの国」は、特にα世代の子どもたちに、物も心もサステナブルもウェルビーイングも全てはつながっているという「循環」の考え方を体感してもらう場所として企画された。
この循環というキーワードは、展示内容に留まらず、パビリオン建築そのもののテーマでもある。使用済みの家電から回収したリサイクル鉄・銅や、工場から出る端材・廃材などを積極的に活用し、調達から解体までのプロセスにおいて、トータルでカーボンニュートラルを実現する資源循環型の建築となっているのだ。永山氏は、ただ再利用して使えるというだけではなく、そこを超えた「楽しさと美しさ(Joy and Beauty)」を提供すると語る。

写真:パビリオン外観

竣工披露されたノモの国は、「Unlock your nature」をタグラインに掲げ、922m2のUnlock体験エリアと、それを支える165m2の展示エリア「大地」で構成されている。(※1)

※1 ノモの国全体の延床面積は1,731.64m2、敷地面積は3,508.08m2

写真:パビリオンのファサード

ファサードに貼られているのは、オーガンジー(※2)に特殊な金属を積層させた膜。海風に布がたなびくような柔らかな印象を与えている。「見方によって、さまざまな形が見えてくる、見え方が変わっていく構造体」(永山氏)

※2 薄くて軽く透明感のある織物

写真:パビリオンのファサード

2025年1月末までに、ファサードフレーム730個にオーガンジー膜を施工(フレームは全部で1,404個)してパビリオンの外観が完成。循環を表す曲線を持った構造体が積み重なり、ファサード全体を形成する。このユニットは一番多いところで20段ほどの重なりを見せる

写真:「ガラス型ペロブスカイト太陽電池」のプロトタイプ

屋外には、障がいのある作家が描くアート作品で街を彩るプロジェクトを数多く手掛ける株式会社ヘラルボニーとのコラボレーション作品として、作家の輪島楓さんがデザインした「ガラス型ペロブスカイト太陽電池」のプロトタイプを展示

写真:パビリオンのライトアップ点灯式の様子

ノモの国では、ゼロカーボン電力由来の水素で発電した電力を使用し、会期中に夜間ライトアップ演出を行う。3月1日には、ファサードに照明とミストで幻想的な演出を行う、パビリオンのライトアップ点灯式を実施した

また、来場できない方にもノモの国の世界観を理解してもらうためのオリジナルアニメのティザー映像も公開された。

Unlock体験エリア 各ZONEの概要

ノモの国は、Unlock体験エリアと、それを支える展示エリア「大地」で構成される。ノモの国の体験エリアでは、子どもたちが自身の中に眠る感性に気付いてもらうことで、常識や思い込みから解き放たれ、自身に秘められた力を解き放つ体験を提供する。

Unlock体験エリアは四つのZONEで構成されており、パナソニックグループの光・映像・音・空気に関する「空間演出」技術を駆使して五感を刺激する、イマーシブ空間となっている。加えて「ひとの理解」研究に基づく表情・行動解析の技術も用いて体験者の個性や特性が反映された一人ひとりの可能性やストーリーを「蝶」をモチーフに描き出す。

図版:パビリオンのゾーン構成

ZONE1:カガミイケの奥深く ノモの国に迷い込む

ここでは、部屋の設置場所に合わせて最適な音質に調整する「Space Tune™」を応用した技術やTechnicsの高音質スピーカーで構成された23.4チャンネルの立体音響サウンドシステム、高輝度プロジェクターなどを活用。

体験者は立体音響・映像・振動によってクロスモーダル(感覚複合的)に感覚が研ぎ澄まされ、「風、水、光、生命」など普段は意識せず、当たり前に感じている世界を全身で捉えるようになり、Unlock体験が始まっていく。

写真:ZONE1「カガミイケの奥深く」を体験する様子
写真:ZONE1「カガミイケの奥深く」を体験する様子
写真:ZONE1「カガミイケの奥深く」を体験する様子

ZONE2:ノモの森 未知の世界を探索

写真:ZONE2「ノモの森」を体験する様子

次に足を踏み入れるのは、生命やエネルギーが巡る美しい森。ここでの展示体験の鍵となるのが、無線タグ(RFID)を埋め込んだ「結晶デバイス」だ。

写真:無線タグ(RFID)を埋め込んだ「結晶デバイス」

体験者はこの「結晶」を手に、自分の感性(ココロ)の赴くままに未知の世界を探索する。
結晶を木々や岩々にかざすと、それぞれが呼応し、別々の音や光を発する。
このエリアには6台のカメラが設置されており、無線タグとカメラの情報から、体験者の行動を分析する。

写真:「結晶デバイス」を岩にかざす様子

ZONE3:古木の谷 結晶から蝶を解き放つ

展示空間にある17本の古木にはそれぞれ透明OLEDディスプレイや表情を解析するための4台のカメラが内蔵されている。体験者が古木をのぞき込むと、表情分析を行い、ZONE2での行動データを「感性モデル」で分析。それに基づき、一人ひとりの個性や特性を反映した異なるストーリーが映し出される。そして蝶が結晶から解き放たれ、「滝=ミストウォール」の向こうへと導いていく。

写真:ZONE3「古木の谷」を体験する様子
写真:ZONE3「古木の谷」を体験する様子

滝 勇気を出して一歩を踏み出す

ここで現れるのが、幅7m×高さ3.5mの「ミストウォール(※3)」。
2流体ノズルから生み出される極微細ミスト「シルキーファインミスト」を用いて、滝状のミストのスクリーンを創出。そこに「蝶」などの映像が高輝度プロジェクターを用いて映し出される。体験者は勇気を出して、その先の空間へと一歩を踏み出していく。

※3 拡散を抑制して遠方まで気流を届ける技術で作られた粒径6μmの極微細ミストの映像スクリーン

写真:「ミストウォール」を体験する様子

ZONE4:大空へ 解き放たれた蝶たちは羽ばたき、響き合う

ZONE4は、21台の高輝度プロジェクターによって360°の空間に映像が映し出され、音と映像が立体的に連動するダイナミックなイマーシブシアターとなっている。
体験者がそれぞれの結晶デバイスを指定の場所にかざし、「葉っぱ=うちわのようなデバイス」を持って風を起こすと、床面に蝶が生まれ、大空へ羽ばたきながらさまざまな音を奏でる。
別々の音はやがてハーモニーとなって音楽を奏で、映像が照射された直径1.3mのボルテックスリング(ミストの渦輪)(※4)が天井の5カ所から降り注ぎ、没入空間を創り出す。

※4 渦輪気流にミストを閉じ込めて遠方まで飛ばす技術で作られたミストの輪

写真:結晶をかざす様子(左)。自分の「蝶」をうちわであおぐ様子(右)

この空間でも自分の結晶をかざすと、フロアに自分の「蝶」が映し出される。その蝶をうちわであおぎ、大空へと解き放つ

写真:ZONE4「大空へ」を体験する様子
写真:ZONE4「大空へ」を体験する様子

エピローグ

体験終了後、結晶デバイスを指定の場所へ返却すると体験結果が反映された一人ひとりの「Unlockカード」が出てくる。カードに記載されたQRコードにアクセスするとノモの国での体験を振り返ることができる。

写真:体験終了後、結晶デバイスを指定の場所へ返却する様子(左)と、体験結果が反映された一人ひとりの「Unlockカード」(右)

「大地」エリア ひとと自然の営みが循環する未来社会を体験

「大地」エリアでは、ひとの営みと自然の営みの循環が作用し合うつながりの中で、より良い未来を共に考える展示空間を創出。子どもたちには、実際に手に触れたり、匂いを嗅いだりする直感的な体験を通じて、ひとと自然がお互いの可能性を広げる未来を体感する機会を提供する。

展示空間には、主に以下五つの未来を実現する技術が紹介されている。

  • 光合成微生物のチカラによる食の未来 シアノバクテリア(光合成微生物)
  • 「発電するガラス」によるエネルギーの未来 ペロブスカイト太陽電池
  • 自然に戻るモノづくりの未来 生分解性セルロースファイバー
  • 発光微生物のチカラによるあかりの未来 バイオライト(発光微生物)
  • ひとと自然の営みが循環する未来 バイオセンサリードーム

光合成微生物のチカラによる食の未来 シアノバクテリア(光合成微生物)
光合成微生物の一種であるシアノバクテリアの力を活用し、CO2の有効利用と食糧生産力の向上を同時に実現するアイデアを紹介。野菜や果物が生き生きと成長する姿を観察しながら、CO2活用による環境負荷の低減と持続可能な食糧生産を両立する“720°の循環”を体験できる展示内容

写真:ペロブスカイト太陽電池

「発電するガラス」によるエネルギーの未来 ペロブスカイト太陽電池
「発電するガラス」を通じて、まちやくらしに調和しつつ、人々に再生可能エネルギーをもたらすだけでなく、地表の植物や微生物にも木漏れ日を届けるアイデアを紹介。ペロブスカイト太陽電池にアートの感性を取り入れた吊りオブジェなどを通じて、都市の景観に溶け込むデザインの自由度の高さを体感できる

写真:生分解性セルロースファイバー

自然に戻るモノづくりの未来 生分解性セルロースファイバー
生分解性と強度を高めた新たなグレードの生分解性セルロースファイバー「kinari」を活用した高強度とデザイン性を兼ね備えた多様な生活必需品の可能性を示すなど、石油由来プラスチックの使用量を減らすためのアイデアを紹介。子どもたちとのワークショップからつくられたさまざまな形のハンズオン用小物や3Dプリンターによる大型オブジェを展示

写真:バイオライト(発光微生物)

発光微生物のチカラによるあかりの未来 バイオライト(発光微生物)
大阪・関西万博の準備および開催期間を通じて発光微生物の長期培養技術の経験値を蓄積するとともに、未来の日常生活を彩るあかりへの応用やあかりそのものの在り方について議論するきっかけとなるアイデアを紹介。発光微生物を培養している展示水槽に酸素を送り込むことで、微生物が発光する様子を観察できるハンズオン型展示を実施

写真:バイオセンサリードーム

ひとと自然の営みが循環する未来 バイオセンサリードーム
外界からのノイズを軽減しつつ、さまざまな感覚刺激により自然環境に包まれる心地よさを感じることのできる、バイオフィリックデザインの考え方を取り入れたドーム空間のアイデアを紹介。光、音の技術に加え、自然な香りや質感のある菌糸をパネルにして建材として活用し、五感を心地よく刺激する空間を創出

大人が真剣に創った世界を、ありのまま、素直に楽しんでほしい

竣工式の後、小川と永山氏は次のように語った。

小川:2021年10月からスタートした本プロジェクトが、ついに竣工式を迎えることができ、ようやくここまで来たという気持ちでおります。今後は多くの子どもたちにも直に体験してもらい、貴重な声を聞かせてもらいながら、開催までにできるだけのチューニングを図ってまいります。
本パビリオンは、子どもたちに向けて創られたものではありますが、大人の方も入場いただき、童心に返って楽しんでいただける空間になっていると思います。ぜひ多くの方に自らを解き放つUnlock体験をしていただきたいですね。

永山氏:子どもたちは、言わば「形が決まっていない」、有機的に変わっていく存在。何の形をしているのか、まだこれから見つけよう、変わっていこうとしている状態と言えます。そんな子どもたちに、まずはノモの国のファサードを見てもらい、七変化する膜の色や動きの変化を楽しんでもらえるとうれしいですね。次々と変化していくパビリオンの姿を自分と置き換え、ワクワクしてもらえればと思います。

写真:永山 祐子氏(写真左)と小川 理子

小川:本パビリオンは、パナソニックグループの200人近いエンジニアたちが、通常業務とは別のプロジェクトとして推進してきたものです。大人が真剣に創ったモノや技術は、子どもたちの心にもなにがしか響くものがあるはず。ワクワクしながら体感してもらいたい。そして一人ひとりの記憶に末永く残ってくれたらいいなと思います。

パナソニックグループは、「物と心が共に豊かな理想の社会」を実現し、人々のくらしを幸せにするというミッションを掲げ、さまざまな取り組みを推進している。
4月13日~10月13日までの大阪・関西万博期間中、ノモの国においても、「2025年には当たり前となっていると思われる技術、考え方を先取りする」という姿勢で実現したグリーンパビリオンとして、一人でも多くの方にUnlock体験をしていただくべく、取り組みを推進する。また、未来社会のアイデアを具現化した展示エリア「大地」、さらには万博閉幕後も子どもたちとつながり続けるオンライン共創プラットフォームなどの活動を通じ、子どもたちの未来をより豊かで希望に満ちたものにできるよう取り組みを加速していく。大阪で創業した企業として、世界中から訪れる人々に、大阪・関西万博から日本企業が誇る技術力、魅力を発信していく。

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