2024年12月13日
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2025年4月13日の開幕まで2年を切った「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」。パナソニック ホールディングス株式会社(以下、PHD)は「解き放て。こころと からだと じぶんと せかい。」をコンセプトに、パナソニックグループのパビリオン「ノモの国」を出展する。2023年7月12日には夢洲(大阪市此花区)のパビリオン建設予定地で起工式を実施し、構想から実行フェーズへと移行。同パビリオンは、使用済みの家電から回収したリサイクル鉄・銅や工場から出る端材・廃材などを積極的に活用する、資源循環型の建築となる。今回はパビリオンの設計を手掛ける建築家・永山 祐子(ながやま ゆうこ)氏や、PHD 関西渉外・万博推進担当参与の小川が、チームで一丸となって挑んでいるプロジェクトへの思い、環境配慮への取り組みを紹介する。
「パナソニックグループとして、万博に対してどのような貢献ができるか。パビリオンありき、ではなく、フラットな状態から社内で意見を出し合い、あるべき姿を決めていきました」と話すのは、起工式に続いて同日の発表会にも登壇した、PHD 関西渉外・万博推進担当参与の小川 理子(おがわ みちこ)だ。
小川:パナソニックグループは、1970年の日本万国博覧会に「松下館」を出展しました。当時、小学生だった私は会場で海外の人たちと初めて出会い、輝く未来を感じました。今回の大阪・関西万博においても、今を生きる子どもたちに「明るい夢と希望を思い描くことのできる未来」を提示したいと思っています。
大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。
一方、当グループは「物と心が共に豊かな理想の社会」を経営理念(パーパス)としており、その実現に向けて長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」を掲げ、さまざまな取り組みを進めています。当グループとして万博のテーマに親和性を感じたこともあり、2021年10月に参加申し込みを表明しました。
小川:「物と心が共に豊かな理想の社会」を実現して人々のくらしを幸せにするための大前提となるのが、地球環境問題の解決です。この喫緊の課題に取り組むことは、社会の公器である当グループの責務であると考えています。
「ノモの国」で私たちの思いを世界中の方々に体感いただき、大阪で創業した企業として、関西の良さ、さらには日本の良さを発信していきたいと思います。
「ノモの国」では、特にα世代の子どもたちに、物も心もサステナブルもウェルビーイングも全てはつながっているという「循環」の考え方を体感していただきます。そして「つながる世界の中の自分」に気付いてもらうことで、知らず知らずのうちに感じている思い込みや制約から解き放たれ、「自分にもこんな力があったんだ」「自分にもきっと何かできる」「やってみたい!」と、一人ひとりのソウゾウする力を解き放つ体験を提供します。
この「循環」というキーワードは、展示内容に留まらず、パビリオン建築そのもののテーマでもあります。調達から解体までのプロセスにおいて、トータルでカーボンニュートラルを実現し、「3つの循環で生まれるパビリオン」を実現します。
使用済みの家電から回収したリサイクル材料や工場から出る端材・廃材を、パビリオンとして生まれ変わらせる。さらに独自開発による「廃材を使ったアップサイクル製品」なども積極的に採用します。
「循環」をテーマとした「ノモの国」は、生きとし生けるもの・万物の内側にある「つながり」を表現した国となる。パナソニックグループのこの思いを受け、建築体としての具現化を行ったのが、2020年ドバイ国際博覧会(ドバイ万博)日本館を手掛けた建築家・永山 祐子(ながやま ゆうこ)氏だ。
永山氏:今回のパビリオンのコンセプト「解き放て。こころと からだと じぶんと せかい。」の具現化に当たり、パナソニックの皆さんと共に検討を重ね、ひとの営みと自然の営みの循環が作用し合って一巡りする「720°の循環」というイメージを膨らませていきました。そして720°を体現するパーツを創出し、パビリオンのファサードの原単位とすることにしました。
ファサードの原単位となるモチーフの形状は、「720°の循環」を表現しつつ、子どもたちの「無限の可能性」を表す「無限大(∞)」のイメージとも捉えることができる。このモチーフを集合体として形成することで、子どもたちの心が「解き放たれる」デザインを形にした。モチーフのフレームに薄いオーガンジーを張ることで、風に揺らぐ軽やかで自由な建築を実現し、その時々の条件でさまざまな見え方が楽しめる、「自由」や「多様性」を表現した建築体だ。
続いて永山氏は、パビリオン建築の外観図と模型を披露した。
永山氏:「循環」を表すモチーフが集まり、ファサード全体を形成することで、「私たちも循環する世界の一部」であることを感じ取っていただければと考えています。
永山氏:最初に思い描いたスケッチは、以下のような、柔らかなクレヨンタッチのものでした。その形状についてパッと見たときに、一言では説明できないような、自由な形態が実現できればと思いました。
永山氏:「720°の循環」を建築体として体現し、子どもたちの心を解き放つきっかけとしたい。その実現のためには、構造的な合理性を探求するプロセスが必要であり、そこが一番大変でした。
当初はフレーム自体も自由に揺れ動くような構造を模索していましたが、会場となる夢洲には常に風速5mほどの海風が吹いていることもあり、断念。風は建築物にとって脅威とも言えますが、逆にうまく活用する方向での検討を続け、安全性を優先しながら、かつ生物のように自然な動きが加えられる工夫として、薄いオーガンジーの膜に着目しました。この膜の動きによって建物自体が動いているような、生物のような皮膚感覚を表現できるのではないかと考えました。
私たちは建物であったり、衣類であったり、常に何かに覆われて過ごしていますが、その「覆っているもの=膜」と捉え、それが風によって動くことで「解き放たれる」感じが出せるのではないかと思ったのです。
「720°の循環」を表すモチーフの原単位を形作るフレーム(写真左)。この集合体がファサードとなる。フレームに薄いオーガンジー(写真右)の膜を張り、金属的なスパッタリング加工を施す。これにより光が当たるとキラキラと輝く独特の表現が実現する。風を受けて膜がさまざまな表情を見せ、夜間の照明にも美しく映えるものとなる
フレームにオーガンジーを掛けた状態で風洞実験(ふうどうじっけん)を行い、コンピュータで解析して最終的な構造の強さを確認していく
フレームを3段に組み合わせた1分の1スケールのモックアップと永山氏。膜の張り方、掛け方によって、風のいなし方がどのように変わってくるかの検証を重ねた
永山氏:ファサードの原単位となるフレームは、さまざまなトライアンドエラーの後、3次元曲げの機械を使って製造することになりました。
今回のファサードのようなアーチ構造の建築体や、オーガンジーの膜で動きを表現する手法は、従来の建築ではあまり見掛けないものであり、完成させることは建築業界としても大きな挑戦と言えます。
以前、ドバイ万博で日本館の設計をしたときも挑戦する気持ちで臨みましたが、今回も同じです。常に新しいことにチャレンジすることに大きな意義があると思っています。
私たちの思いが建築体を通して会場に訪れる人たちにも伝わることを願っています。子どもたちにも「今まで見たことがないものがある!」とワクワクしてもらいたいですね。
小川は、パビリオン「ノモの国」は、以下の3つの「循環」によって創出される資源循環型の建築となることを発表した。
パナソニックグループでは、「商品をつくる」「商品をつかう」「資源にもどす」という考えの下、20年以上前からさまざまな協業先と共に家電のリサイクルに取り組んでいる。
グループの家電リサイクル工場では、「商品から商品へ」をコンセプトに、使用済み家電から貴重な資源(樹脂・非鉄・鉄など)を高純度で取り出し、その資源を使って再び商品を作るという資源循環のスキームを構築している。
この資源循環型のモノづくりの考え方と、独自に培ってきたリサイクル技術をパビリオン建築にも活用し、リサイクル由来の鉄・ガラス・銅などの素材を採用。使用済み家電をパビリオンへと生まれ変わらせる(※付帯鉄骨、リース部分およびファサードを除く)。
主要な柱や梁には、家電リサイクル鉄を使用。外構部分には洗濯機のガラスを使用した舗装ブロックを設ける。また主要な幹線ケーブルの銅部分には全てリサイクル銅を採用する。
パナソニックグループは2013年から、東京製鐵株式会社(以下、東京製鐵)と共創し、家電リサイクル工場から回収した鉄スクラップを再び製品材料の鉄として使用する資源循環のスキームを構築してきた。
今回のパビリオンの建築でも、パビリオンで利用する鉄約118トン(付帯鉄骨、リース部分およびファサードを除く)の約82%、主な柱・梁(接合部のプレートなどを除く)約98%に当たる97.1トンに、このリサイクル鉄を使用する。
万博の期間終了後は、解体したリサイクル鉄を再び東京製鐵との循環スキームに戻し、パナソニックグループの製品などの材料として使用していく。
太平洋プレコン工業株式会社の協力の下、パビリオン外構部の舗装ブロック(約749㎡)に、世界で初めて(※)ドラム式洗濯乾燥機 約4,600台分のリサイクルガラスを使用して製造した、インターロッキングブロック(廃ガラス含有率7%)を全面採用する。
万博の期間終了後は、ブロックとして新たな場所での活用などを検討していく。
※世界で初めて、ドラム式洗濯乾燥機のリサイクルガラスを使用してインターロッキングブロックを製造。2023年7月12日時点、パナソニック ホールディングス株式会社調べ。
三菱マテリアル株式会社・住電HSTケーブル株式会社協力の下、パビリオンで利用する主要幹線ケーブルに使う銅のほぼ100%に当たる約1.2トンに、使用済み家電のプリント基板から取れる銅を原料としたリサイクル銅線を採用する。
銅線は万博の期間終了後に回収し、リサイクル活用する。
パナソニックグループでは、「工場端材を『主材』に」という考えの下、「データ活用」「二次利用エコシステム」「クリエイターとの協業」という3つのアプローチにより、工場から出る端材のアップサイクルに関するノウハウや仕組みの構築に力を入れている。(参照:工場端材「そのまま」を新たなプロダクトへ~端材活用エコシステム開発プロジェクト)
これらの取り組みで培ったノウハウ・仕組みをパビリオンにも活用し、例えば応接室においては以下のようなアップサイクルを目指している。
植物生まれの万能な油として人気が高いパームオイル。その収穫のために植えられるアブラヤシは、伐採後に腐敗や分解が進むとメタンガスを含む温室効果ガスを排出し、環境に大きな負荷をかけている。パナソニックグループは、世界中で廃棄・焼却されているこの廃材を「循環」させるべく、独自ボード化技術により木質ボードへとアップサイクルする「PALM LOOP®」の事業検証を推進している。
今回のパビリオンでは、マレーシアのアブラヤシの廃材からアップサイクルした木質ボードを使用し、永山氏とのコラボレーションによる応接室用のオリジナルのバーティカルブラインドを試作品として制作。また洗面所の自動ドアの面材などにも活用する。
PALM LOOP® | 技術 | パナソニック ハウジングソリューションズ株式会社 | Panasonic
https://panasonic.co.jp/phs/technology/palmloop/
同じく応接室の床材には、建築廃材や森林の未利用材を原料としたリサイクル材を基材に用いた「サステナブルフロアー™」を採用。廃材自体を燃やさずに再生するため、CO2貯蔵に貢献するとともに、売上の一部を森林保全に役立ている。
永山氏:ファサードを含め、パビリオン全体のスタンスとしては、ただ再利用して使えるというだけではなく、そこを超えた「楽しさと美しさ(Joy and Beauty)」を提供していきたいと考えています。
2023年10月には、夢洲の建設地にファサードのモックアップを設置し、現地での実証実験を実施予定です。
小川:世界と自分がつながっていることや、命の循環、地球環境の循環が脈々と続いていくことを世界中の方々に体感いただけるパビリオンが、いよいよ着工となります。
今後もさまざまなステークホルダーの皆さんと共に「2025年には当たり前となっていると思われる技術、考え方を先取りする」という姿勢で、私たちの思いを込めたグリーンパビリオンを実現します。
パビリオン内部の展示内容や体験設計についても本格化させ、2025年の開幕に向けた機運醸成への貢献、社内外の共創活動などにも取り組んでいきます。引き続きご期待ください。
記事の内容は発表時のものです。
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