「グループ全体最適」「領域横断」の強化で次なる成長フェーズへ——新執行役員体制に見る決意と狙い

2026年4月10日

企業・経営 / Stories

「グループ全体最適」「領域横断」の強化で次なる成長フェーズへ——新執行役員体制に見る決意と狙い

シリーズ:

パナソニックグループが示した2026年4月1日付の新執行役員体制から浮かび上がるもの――それは、グループとしてさらなる企業価値の向上へつなげるため、意思決定と実行の仕組みを強化する姿勢だ。パナソニック ホールディングス株式会社(以下、パナソニックHD)を持株会社とした事業会社制への移行後、事業会社の自主責任経営を徹底してきたパナソニックグループ。各事業領域での迅速な意思決定と競争力強化が進む中から見えてきたグループの構造的・本質的課題の早期解決に向け、2025年を「グループ経営改革」に注力する年と位置付け、覚悟を持って取り組んできた。

2026年は「成長フェーズへの転換」を掲げ、新たなグループ体制への移行とともに執行役員体制も刷新し、強靭なグループとしての再始動を目指す。そのキーワードは、「グループ全体最適」と「領域横断」だ。この二つを単なる掛け声に終わらせるのではなく、役割と権限を通じてスピーディに実行していくための決意が、新設した「事業CEO」「SRO(Solution Revenue Officer)」「グループCAIO(Chief AI Officer)」といった役割に色濃く表れている。

新執行役員体制に見る“パナソニックグループが重視していること”

新たな執行役員体制は、近年グループ全体で注力してきた事業会社それぞれの「専鋭化(※1)」を土台としながら、グループ全体最適と領域ごとの最適を同時に実現する次の段階へと移行するための設計となっている。

※1 事業会社制への移行時にグループとして掲げた、絞り込んだ領域において競争力を徹底して磨き上げる姿を示す造語

注目すべきは「全体最適で決める」「領域横断で実行する」「AIを実装フェーズに移行する」「基盤をスピーディに刷新する」ための役割だ。今回新設した三つのポジションから、今後のグループ経営戦略における注力ポイントをひもといていく。

図版:パナソニック ホールディングス(株)執行役員体制について

1)事業CEO:グループ全体最適視点で企業価値向上を実現

まず今回の役員人事における重要な変化点は、全事業会社社長が「事業CEO」としてパナソニックHDの執行役員を兼任することにある。「事業CEO」という呼称は、特定事業の業務執行責任者であることを明確にするためのものだ。

執行役員の人数は増えるが、それによって意思決定が遅くなることはない。事業会社に関わる事項については、これまで通り事業会社で完結して意思決定することを基本とし、業界に向き合う専鋭化によって、事業競争力と迅速な意思決定体制を今後も維持・強化していく。その上で、パナソニックHDと事業会社が一体となってグループ戦略・方針を定め、グループ全体最適の視点による経営判断を通じて、意思決定のスピードと実行力、さらには収益性・成長性を高め、グループの企業価値向上を実現していく。

2)SRO:ソリューション領域での収益構造の向上をグループ横断でリード

パナソニックグループが注力領域と定めたソリューション領域の強化に向け、事業会社単体でなくグループ全体で取り組む体制を構築するために新設されたのがSRO(Solution Revenue Officer)だ。ソリューション領域における収益構造の向上をグループ横断でリードし、営業・マーケティング・プロダクト開発などの部門を統括する。Go-to-Market(市場進出戦略)の仕組みづくりやB2Bマーケティング戦略の立案を通じて、ソリューション事業の拡大を実現する役割を担う。一方で、グループ全体のソリューション領域に関する事業責任を負うものではなく、各事業領域の事業責任は、これまで同様に各事業会社社長が負う。

このSROには、ERP(※2)ソリューションやサプライチェーンマネジメント(以下、SCM)ソリューションを手掛ける企業において経営トップを務め、ソリューションビジネスを率いてきた経験を持つ鈴木 洋史を招聘した。「全体最適の追求」や「顧客利益の最大化」を基本の考え方として実績を積み、キーアカウントに対する法人営業力の強化にも携わってきた経歴を持つ。

※2 Enterprise Resource Planning(企業資源計画)。人材・情報・資金・設備といった経営資源を集約して管理・有効活用するという考え方、またそれを実現するためのシステム。

鈴木 洋史

パナソニック ホールディングス株式会社 執行役員 SRO、ソリューションパートナー担当
鈴木 洋史(すずき ひろふみ)

また、鈴木はSROに加え、グループのソリューションパートナー担当を兼任する。パートナー企業との協業戦略を企画し、キーアカウントマネジメントを軸に、関係強化や共同での価値創出、顧客へのソリューション提供を推進していく役割を担う。この役割をSROと兼任することで、市場や顧客ニーズの把握から、パートナーとの価値共創、事業戦略への反映、顧客への提供に至るまでを一気通貫で推進し、グループ全体でソリューション領域に向き合う総合力の強化を図る。

特徴的なのは、SROが単なる“グループ横断の旗振り”で終わらない点だ。鈴木はパナソニック HDの執行役員としてSROおよびソリューションパートナー担当を務めながら、B2Bを主軸とする事業会社であるパナソニック エレクトリックワークス株式会社(以下、PEW)で副社長執行役員(CIO、SCM・物流担当)も兼務する。これは、ソリューション事業をPEW中心で進めるということではない。事業会社制の下で育ててきたグローバルに競争力のある事業を基軸に、顧客接点を横断的につなぎ、グループ全体でシナジーを発揮しながら成長させていく狙いがある。事業戦略と連動したIT戦略やサプライチェーンマネジメントの強化、データ連携や業績評価の仕組み化を通じて、鈴木の経験や知見、考え方をグループへ具体的に根付かせ、ソリューション領域の事業成長と企業価値創出を加速していく。

3)グループCAIO:グループ横断でAIを実装し、AIを活用したビジネスへの変革を推進

もう一つ、パナソニックグループの次の成長フェーズに向けた重要な柱となるのが「AI(人工知能)」だ。今回の役員人事では、顧客課題の解決と内部オペレーションへのAI利活用の加速をグループ横断でリードするポジションとして、グループCAIO(Chief AI Officer)が新設された。このCAIOには、パナソニック コネクトグループでCTOも務める榊原 彰が就任した。

榊原 彰

パナソニック ホールディングス株式会社 執行役員 グループCAIO
榊原 彰(さかきばら あきら)

榊原はAIやアジャイルソフトウェア開発等に関する高い専門的な知見を備えた人物だ。これまで、パナソニック コネクトでCTOとして、R&Dの近代化、特にサプライチェーンソリューション事業をグローバルに展開するBlue Yonderとの連携による技術シナジーを主導し、さらにSaaSビジネスへの展開など、具体的な成果を上げてきた。こうした経験と知見を生かし、グループ横断でのAIの実装と競争力の強化を担う。AIを活用したビジネス変革をリードしながら、ハードウェアやソフトウェア事業、ソリューション事業の拡大を実現すべく、グループ全体のAI戦略策定やAI技術開発、グループ内へのAI実装を一層強化していく。

パナソニックグループは、AI改革の次のフェーズとして、AI関連の継続的な投資を集約し、イノベーション/インキュベーション(※3)のフェーズから事業化フェーズへと段階的に移行していく。この方針の下、これまで複数の地域・組織に分散していたAI戦略·開発機能の最適化を図る。その一環として、グループコア事業のAIへの戦略的シフトを推進し、ハードウェア企業からAIソリューション企業への進化に向けた基盤づくりを担ってきたPanasonic Well本部を2026年3月31日をもって発展的に解消した。同本部の主要プロジェクトであるAI Data Platformの開発やリソースはグループ内へ移管・集約し、事業環境の変化に即応できる、柔軟で効率的な体制への転換を進めている。これまで培ってきた技術資産を生かしながら、グループワイドでAI基盤とその応用開発をスピードと効率の両面で大きく向上させ、グループ全体としての価値創出力をより一層高めていく狙いだ。

※3 インキュベーション:新たな技術や事業アイデアを検証・育成し、事業化に向けて立ち上げる段階。

グループCIO専任化:横断の改革を進めるキー IT基盤刷新をリード

SROがグループ横断でソリューション領域の成長をリードし、グループCAIOが顧客課題の解決と内部オペレーションの両面でグループのAI利活用を加速していく。この体制において重要となるのが、ERPを含むIT基盤だ。そこで、グループCIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)を専任とする執行役員を配置し、ERPをはじめとしたIT基盤の刷新をこれまで以上にスピード感を持って推進する。併せて、ITガバナンスとデジタル戦略のさらなる強化を目指す体制としている。グループCIOには、パナソニック インダストリー株式会社でCIOを務め、SCM変革やITの全体最適化などをリードしてきた近田 英靖が就任した。

事業戦略と整合したグループ横断のIT戦略の立案・実行、IT基盤の開発・保守・運用、共通基盤システムを軸としたERPをはじめとするIT基盤の刷新をリードする。グループ全体で重要性が高まる業務プロセスの標準化とデータ連携の実現に加え、それらを支える組織やITサプライチェーン全体のマネジメントについて最終責任を負い、IT投資価値の最大化を図っていく。

また今回、グループ戦略地域である中国・北東アジアの統括体制も更新した。これまでグループ中国・北東アジア総代表として、中国市場における渉外機能を担い、現地政府や産業界との強固なネットワーク構築を進めてきた本間の後任として、パナソニック株式会社 中国・北東アジア社で副社長を務めてきた中山 正春が就任した。これまでに構築してきた関係性と知見を次世代へ確実かつ円滑に継承するとともに、変化の激しい事業環境に即した地域戦略のさらなる深化を図り、中国・北東アジア地域における持続的な成長を目指す。

左:近田 英靖 右:中山 正春

(左)パナソニック ホールディングス株式会社 執行役員 グループCIO 近田 英靖(ちかた ひでやす)
(右)パナソニック ホールディングス株式会社 執行役員 グループ中国・北東アジア総代表 中山 正春(なかやま まさはる)

パナソニックグループの新たな執行役員体制は、「事業領域ごとのスピード・競争力強化の基盤を維持しながら、グループ全体最適の執行を強化する」ための設計と言えるだろう。事業CEOの配置によって、グループ全体最適の視点に基づく意思決定のスピードと実行力を高めるとともに、注力していくソリューション領域における収益構造の向上をSROがグループ横断でリードする。さらに、グループCAIOがAIを実装段階から事業における成果創出のフェーズへと導き、グループCIOがIT基盤の刷新を通じて、これらの取り組みを下支えする。パナソニックグループの成長フェーズへの転換に向けた動きは、ここから本格的に加速していく。

記事の内容は発表時のものです。
商品の販売終了や、組織の変更などにより、最新の情報と異なる場合がありますので、ご了承ください。

シリーズ:
カテゴリ:

Panasonic Stories へ

注目ニュース

同シリーズの記事

Article Rankings