
2026年3月6日
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歴史資料にまつわる創業者・松下幸之助のエピソードを紹介する「歴史ものがたり」。
今回は、1932年5月5日に幸之助が掲げたパナソニックの「真の使命」を紹介します。
創業50周年記念式典で会長の幸之助と夫人のむめのに謝辞を述べる副社長の髙橋荒太郎と中尾哲二郎、松下電工社長の丹羽正治(当時)
1932年の春、37歳の幸之助は、松下電器(※1)の設立から14年を経て、真の使命に目覚めました。
5月5日、社員168人を大阪・堂島の中央電気倶楽部(※2)に集め、宣言します。
「精神的な安定と物資の無尽蔵な供給が相まって、初めて人生の幸福が安定する。松下電器の真の使命は、生産に次ぐ生産で物資を無尽蔵にし、楽土を建設することにある」
さらに、この使命の達成に250年をかける遠大な計画を発表し、所主告辞(※3)を読み上げました。
(左)所主告辞には「生活必需品を充実させ、人々のくらしを豊かにすることが私の願いである」と記されている (右)37歳の幸之助
社員は胸を打たれ、決意を述べようと次々に壇上へ向かいます。会場は熱気に包まれ、午前10時に始まった式典は午後6時まで続きました。この日を境に、松下電器は飛躍的な成長を遂げていくのです。
※1:1918年3月7日、23歳の幸之助は、22歳の妻・むめの、その弟・15歳の井植歳男と共に「松下電気器具製作所」を設立した。
※2:電灯、電力、電鉄、電機、電線会社などの関係者が主体となって設立された社交場。
※3:松下電器の真の使命について、幸之助の考えや思いを明文化したもの。幸之助は真の使命を知った体験を「命知」と呼んだ。
松下電器の設立から50年後となる1968年の5月5日、松下電器体育館(現・パナソニック アリーナ)で「創業50周年記念式典」が挙行され、7,637人が出席しました。
創業50周年記念式典で、世界の繁栄に寄与する経営を説く幸之助
73歳となった幸之助は夫人を伴って列席し、壇上に立つと「50年前、私ども夫婦はささやかな姿で仕事を始めたが、今日のように会社が発展を遂げるとは、夢にも思っていなかった」と切り出し、こう続けます。
「当時、私たちは一生懸命に努力を重ねていた。それは意義のある歩みだったが、その多くは社会通念に基づくものだった。商売に誠実に向き合い、良い製品を作り、お得意先を大切にし、仕入れ先に感謝する――そうした考えを土台に努力していたのである。しかし、それだけでは十分ではないのではないか。より高い、産業人としての使命があるのではないか。そう考えるようになり、1932年に見いだした使命を所主告辞としてまとめ、松下電器の真の使命として発表したのである」
1932年5月5日――この日を境に、パナソニックは「ただ懸命に働く会社」から「確固たる使命を備えた会社」へと生まれ変わりました。創業記念日が、松下電器を設立した3月7日ではなく5月5日であるのは、幸之助がこの日を「真の創業」と考えたからにほかなりません。
幸之助は、さらに続けます。
「それ以来、松下電器は真の使命に基づいて経営されてきた。その歩みは決して平坦ではなかったが、困難に直面するたびに、その使命が支えとなった。真の使命があったからこそ、困難に耐え、努力を重ねることができたのだ」
そして、夫人に「どうも長い間、ありがとう」と語りかけ、長年の労をねぎらうと、会場は大きな拍手に包まれました。
各事業部の総力を結集して開発した「創業50周年記念モデル」全61製品が、1968年に相次いで発売された。中でも、カラーテレビの本格的な普及を後押しした「TK-1100D」は、その代表例。家具調デザインが好評を博し、販売拡大と市場占有率の向上に大きく寄与した
創業50周年記念式典を終え、会場を後にする幸之助夫妻(中央)と松下正治(当時社長/奥)
式典の最後に幸之助は「所主告辞に明示されている通り、松下電器には明確な経営基本方針がある。これに則し、一人ひとりが知恵と才覚を存分に発揮してほしい」と呼びかけました。改めて一人ひとりに経営基本方針の実践を強く求め、「企業は成長そのものを目的とするのではなく、世のため人のために価値を生み出し、世界の繁栄に寄与する存在であるべきだ。松下電器は、一人ひとりの努力を結集し、その範を示さねばならない」と訴えます。そして、次の50年、100年に向けた新たな決意を促すとともに、これまでの歩みへの深い感謝の思いを述べ、言葉を結びました。
パナソニックは、1932年5月5日に幸之助が掲げた真の使命と、その実現の“よりどころ”となる経営基本方針を胸に刻みながら、今日まで歩みを重ねてきたのです。
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