
2026年5月19日
- 企業・経営
- プレスリリース
- 企業・経営
- 空間ソリューション
- メディアエンターテインメント

パナソニックグループは2026年5月12日、2025年度決算と併せて2032年を見据えた「グループ成長戦略」を公表した。従来の「中期経営計画」ではなく、あえて「成長戦略」として打ち出した今回の発表。その背景にある思い、グループ経営改革を経て成長フェーズへと舵を切ったグループが目指すお役立ちの姿、その中で強調した「デバイス領域」「ソリューション領域」における成長の道筋とは。
グループCEO楠見へのインタビューを通して、その輪郭を浮き彫りにする。
――今回、従来の中期経営計画ではなく、2032年を見据えた「グループ成長戦略」を打ち出されました。その背景と、この成長戦略に込めた思いを改めてお聞かせください。
楠見:これまで当社グループでは、「中期経営計画」として3年単位で経営計画を策定し、見直しを行ってきました。しかし現在は、社会情勢や技術進化のスピードが速く、数年で状況は大きく変化します。そのため、より長期の視点で目指す姿を見据えながら、何を変えていくかを継続的に考えていく必要があります。1年ごとに必要な見直しを加えつつ、3年後、6年後を見据えて戦略を研ぎ澄ませていく――そうした考え方へとシフトし、従来の中期経営計画ではなく「グループ成長戦略」としてお示ししました。
この成長戦略は、グループの持株会社であるパナソニック ホールディングス株式会社(以下、PHD)による意思決定だけで策定したものではありません。今年度から執行役員体制を刷新し、各事業会社のトップが「事業CEO」としてPHDの執行役員に相当する立場を担う体制としています。その狙いは、グループ全体最適の視点で意思決定を行うとともに、事業会社の戦略とグループ戦略の整合を自らの責務として捉えることにあります。今回の「グループ成長戦略」は、こうした体制の下で議論を重ねてきた最初のアウトプットです。
2032年は、創業者・松下幸之助が1932年に「物心一如の繁栄」、すなわち「物と心が共に豊かな理想の社会の実現」を当社グループの真の使命として宣言し、その使命を知ったことを「命知」として「250年計画」を発表してから100年という節目に当たります。この節目に向けては、核となる理念を伝えるだけでなく、グループとしてどのように成長していくのかを具体的に示し、「何によって成長するのか」「どのような手を打つのか」を全員で共有し、着実に実行していく必要があります。今回の成長戦略は、まさにその第一歩です。
――グループ成長戦略では、「2032年に向けたお役立ち」の姿を示されています。この実現に向けて、成長の道筋をどのように描いているのでしょうか。
楠見:今回の発表では、2032年に向けては「エネルギーの有効活用」と「現場労働力不足の解消」といった社会課題に向き合い、「AIインフラ」と「社会オペレーション」を支える事業に注力することで、お役立ちを果たしていく決意を示しました。これらはいずれも、当社グループが競争力を発揮して貢献できる領域と考えています。
楠見:この方向性の下、各領域でのお役立ちを積み重ねることで、2026年度に調整後営業利益6,000億円、2028年度には7,500億円以上を目指すとお伝えしました。まずは2028年度までをPhase1と位置付け、デバイス領域がグループの成長をけん引します。具体的には、データセンター向け蓄電システムと、GPU(※1)・ASIC(※2)・CPU(※3)の進化に対応する高性能多層基板材料や、導電性高分子コンデンサなどが一体となり、AIインフラを支えます。
同時に、ソリューション領域では、お客様のオペレーションの進化を支えるサービス・エンジニアリングを強化し、ビジネスモデルの変革を進めます。これにより、Phase2に当たる2029年度以降には、グループの収益の核へと育てていきます。
※1 GPU:Graphics Processing Unit(AIの大規模演算を担う半導体)
※2 ASIC:Application Specific Integrated Circuit(特定用途向け集積回路)
※3 CPU:Central Processing Unit(中央演算処理装置)
楠見:スマートライフ領域、いわゆる家電事業は、パナソニックグループのブランドをけん引する重要な役割を担っていきます。家電は、最も多くのお客様に当社のブランドに触れていただける事業でもあります。家電を通じて多くのお客様の信頼を得ることは、パナソニック全体に対するポジティブな想起を高め、B2B領域における認知と信頼の向上にもつながると考えています。
今後、家電事業は高収益化と持続的な成長の実現に向け、グローバル標準コストを徹底して追求し、競争力を高めていきます。その上で、独自のコア技術で差別化できる商品については、「違い」を感じていただける差別化を進めるとともに、宣伝・マーケティングを強化して多くの方々に知っていただき、その価値を実感いただく。さらにはSNSでの拡散も含め、パナソニックの家電に対するお客様のポジティブな認知を広げるサイクルを回していきます。一方、機能や性能よりもお求めやすさがより重視される商品については、徹底してアセットライトでマネジメントしていきます。
――2028年までの成長を大きく牽引する「AIインフラを支える」事業とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。また、パナソニックグループにとってどのような成長機会があるのでしょうか。
楠見:「AIインフラを支える」事業は、デバイス領域を中心に、生成AIデータセンターに設置されるAIサーバーの「頭脳」と「心臓」を支えていくものです。具体的には、パナソニック インダストリーの高性能多層基板材料や導電性高分子コンデンサは、AI処理の「頭脳」部分を担うGPUやASIC、CPU周辺の回路、またさまざまな周辺機器へのお役立ちを広げています。また、パナソニック エナジーのデータセンター向け蓄電システムは、GPUやASICに電力を供給する「心臓」としての電源周辺において、停電時のバックアップのみならず、GPUやASICの進化に伴ってますます重要になるピーク電力の抑制で、継続的に貢献していきます。これらの事業を通じて、急成長する生成AIデータセンター市場の需要に応えていきます。さらに将来的にはAIで駆動される自動運転やロボティクスなどのエッジ領域に対しても貢献の幅を広げていくことができると考えています。
楠見:AIサーバーでは、AI処理の需要増に応えるため、GPUやASIC、CPUなどの高性能化がますます進んでいます。これにより消費電力は増え、当然、発熱も大幅に増大します。そのため、周辺回路を支えるコンデンサなどの部品には、高温環境下でも容量や性能を維持することが求められます。当社グループは、独自のケミカル技術を生かし、こうしたニーズに対応しています。
さらに、AI処理に必要な消費電力は大きく変動します。全てのAIサーバーのピーク電力に合わせてデータセンター全体の電力供給を確保すると設備面でも電力契約面でも過大となり、ハイパースケーラー(※4)を含むAIデータセンター事業者にとってもコストや運用面で大きな負担となります。そのため、BBU(Battery Backup Unit)やCBU(Capacitor Backup Unit)を活用した電力ピークの抑制、電力負荷変動の吸収が重要になります。この領域では、電池セルやキャパシタといったデバイス、またBBUやCBUなどシステムの両面で、電源への要請の高度化に応え続けるための進化が求められます。それを実現できる開発力こそが当社グループの強みであり、ハイパースケーラーからのニーズにお応えし続けるための源泉だと考えています。
※4 大規模なデータセンターを運営し、クラウドサービスを提供する事業者
楠見:このAIインフラを支える事業だけで、2028年度には売上高約1兆4,000億円、調整後営業利益2,900億円を目指します。これらの数字は既にお客様からいただいている将来需要の見通しをベースにしています。中でも、データセンター向け蓄電システムは、開発推進合意・受注案件を示すAwardの獲得率が売上目標の80%に到達していることを5月12日に発表させていただきました。現時点ではそこからさらに高まり、売上目標に含まれる商品はほぼ全てAward獲得済です。
この需要拡大、お客様の要望に基づき、次世代商品の導入・拡大や生産能力の増強に向けて、2026年度から2028年度までに累計約5,000億円の投資を、このAIインフラを支える事業に実行します。AIへの投資が世界規模で続く限り、データセンターの建設と拡張は今後も継続的な成長が見込まれます。これらの需要を確実に取り込むことができれば、今回グループの目標として掲げた2028年度の調整後営業利益7,500億円以上の達成も十分に視野に入ると考えています。
――将来の収益の核となることを目指す「社会オペレーションを支える」事業では、どのような成長の姿を描いているのでしょうか。
楠見:製造や物流、サービスをはじめ、さまざまな現場で労働力不足が深刻化しています。エネルギーコストの上昇や環境対応への要請も重なり、現場の課題はますます複雑になっています。それでも、社会のオペレーションは止めることはできません。では、どうするか。当社グループは、こうした現場に向けて、これまでも幅広いハードウェアを提供してきました。
ソリューション領域の「社会オペレーションを支える」事業では、その現場との接点を生かし、お客様の経営課題に深く寄り添いながら、「止めない・省エネ・省人化」をサービス・エンジニアリングで支えていきます。こうしたお役立ちを広げ、将来の収益の核となる事業へと育てていく。そのために、2028年度までの3年間で、ハードウェア販売中心の事業から、サービスを含む価値提供へと重心を移していきます。
――パナソニックグループが今改めて「ソリューション」を収益の柱に据えようとしている背景には、どのような狙いがあるのでしょうか。ビジネスモデルをどのように変革し、成長につなげていくのでしょうか。
楠見:ソリューションという言葉の意味は非常に幅広く、これまではお客様のニーズに応じてさまざまな要素を組み合わせて提供することを指して使われることもありました。しかし、本当の意味でのソリューションとは、お客様のビジネスの成果、すなわち売上や収益の向上に貢献するものであると考えています。
私たちの強みは、すでに世界中の現場にハードウェアを展開している点にあります。製造や物流、航空など、業界ごとに異なる課題に向き合いながら、さまざまなハードウェア事業を通じて、幅広い分野のお客様に選ばれてきました。市場に設置され稼働している製品はMIF(Machines In the Field)と呼ばれますが、今後はこのMIFを起点に、AIやデジタルの力も活用しながら、コンサルティングや運用支援、保守・メンテナンス、システム連携といったサービス・エンジニアリングの提供領域を広げていきます。ハードウェアを提供して終わりにするのではなく、他社に代替されにくいサービスを継続的に提供し、お客様への貢献の幅と期間を広げていく。これが、ソリューション領域における成長の方向性です。
当社グループ内には、すでにサービス・メンテナンスを組み合わせて収益を上げている事業があります。例えば、オフィスビル向けとして、従来は照明機器等の売り切り型ビジネスが中心でしたが、ビル管理の一環としてエネルギーマネジメントを提供することで、サービス・メンテナンス収入へとつなげています。蛍光灯交換といった従来型のメンテナンス需要はLED化の進展により減少していますが、省エネやエネルギー価格高騰への対応ニーズはむしろ高まっています。こうした変化を捉えながらMIFを積み上げ、各事業においてサービス・メンテナンスを含めた価値提供へと広げていけると考えています。
楠見:一方で、ソリューション領域には、まだ解像度を高めていくべき課題も残っています。例えば、サービス・メンテナンスの比率をどの程度まで高めていくのか。また、まだコネクティッドが進んでいない領域において、トータルソリューションとしてお客様に提案する力をどう強化していくのか。こうした点については、さらに具体化が必要です。加えて、単に売上を伸ばせばよいというものではありません。収益性の観点では、それをいかに効率的に実現するかが重要であり、お客様にとってワンウィンドウで対応できる体制を整えることも大きな課題です。
そのため、新たな執行役員体制では、Solution Revenue Officer(SRO)を新設し、ソリューションビジネスを率いてきた経験と豊富な知見を持つ鈴木洋史さんを招きました。私がこのポジションをお願いしたのは、「お客様の収益を高めるためには何が必要か」を徹底して考え続けてきた人物だと感じたからです。お客様の要望にただ応えるだけではなく、本当に売上や利益につながる価値は何かを見極める。こうした根底にあるべき考え方を、当社グループのソリューション事業に根付かせてもらいたいと考えています。
また、今年度に事業CEOを設けた大きな狙いも、とりわけこのソリューション領域において、事業会社が保有するアセットと知見を相互に学び合い、それを生かしながら戦略を構築することにあります。販売やサービス、メンテナンス、エンジニアリングを一体として提供できる体制を整え、ソリューション領域の変革を着実に進めていきます。
――最後に、パナソニックグループは今後、何の会社として、どのような成長を遂げていくとお考えでしょうか。
楠見:これは時間軸を区切って考える必要があります。何の会社になるかということ以前に、時代の変化に応じて事業の進め方も変わっていくからです。その上で、2032年までに注力する社会課題は、ここまでお話ししたように「エネルギーの有効活用」と「現場労働力不足の解消」です。いずれも当社グループが競争力をもって貢献できる領域であり、こうした課題の解決に向け、AIインフラと社会オペレーションを支える事業に注力していきます。
もう一つ申し上げたいのは、私たちは「経営基本方針に則って経営を行う会社」であるということです。1970〜80年代の成長期において、当社グループが多くの会社を擁しながら発展してきた背景には、それぞれの会社が松下幸之助創業者の確立した経営基本方針に基づき、自主責任経営の下で意思決定を行ってきたことがあります。
創業者は、経営基本方針を大切にする重要性を社員に説き続けると同時に、新たな考え方を取り入れ、積み重ねていくことの重要性も示してきました。
企業に必要なのは「絶えざる改革」です。一つの改革で終わるのではなく、その次の改革へとつなげることが重要です。成長を持続させるために、変革と挑戦を途切れさせてはなりません。当社グループには「日に新た」という言葉があります。2032年以降も、その時々の社会情勢に応じて必要な変革を重ねていく。その積み重ねこそが、次の150年の持続的な成長を支えていくと考えています。
パナソニックグループの成長は、30年にわたり停滞してきたと言われています。この状況を変え、次の世代へと引き継いでいかなければなりません。これは私だけでなく、経営チーム共通の強い思いです。昨年度、グループ全体で進めてきた大規模な経営改革は、あくまでその第一歩にすぎません。成長軌道へと転じるための足場を築き、次のフェーズ、さらにその先へと確実につないでいく――それが、いまこのグループを預かる私の重要な責務だと認識しています。
記事の内容は発表時のものです。
商品の販売終了や、組織の変更などにより、最新の情報と異なる場合がありますので、ご了承ください。