
2026年6月5日
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パナソニックグループは2026年5月12日に「グループ成長戦略」を発表。当社グループが競争力を発揮できる「エネルギーの有効活用」や「現場労働力不足の解消」といった課題解決に向き合い、「AIインフラ」と「社会オペレーション」を支える事業に注力することで、2032年に向けたお役立ちを加速していく方針を示した。
生成AIデータセンターをはじめとするAIインフラを支える「デバイス領域」が、今後3年のグループの成長をけん引。一方、社会オペレーションを「止めない・省エネ・省人化」で支える「ソリューション領域」では、ビジネスモデルの変革を進めるとともに、サービス・エンジニアリングを強化し、2029年度以降、将来の収益の核へと育てていく。本記事では、グループのソリューション領域の中で、「空気・水・食」を軸とした事業を展開するパナソニック HVAC & CC株式会社(以下、HVAC & CC)CEOの片山 栄一に、同社の事業展望を聞いた。
HVAC & CCは、旧パナソニック株式会社の分社であった空質空調社とコールドチェーンソリューションズ社を統合し、2026年4月に発足した。売上高約1.3兆円、グローバル約3万人の従業員を擁し、「空気・水・食」に関する事業を展開している。
「空気・水」領域では、ルームエアコンや業務用エアコン、換気扇や空気清浄機といった空気質関連製品(IAQ)(※1)、ヒートポンプ式給湯機や温水給湯暖房機(A2W)(※2)などの水関連製品、空調デバイスを展開。「食」領域では、冷凍・冷蔵ショーケースや厨房機器といったコールドチェーン(※3)事業を展開している。そのほか、トンネル換気浄化などの環境エンジニアリングも行っている。一般的な空調会社ではなく、空気質、食品流通、環境設備までを包括的に扱う事業会社だ。
※1 IAQ:Indoor Air Qualityの略。室内空気質に関わる製品・サービスを指す。
※2 A2W:Air to Waterの略。空気中の熱を利用して水を温め、暖房や給湯に活用するヒートポンプ式のシステム。
※3 コールドチェーン:食品や医薬品などを適切な温度で保管・流通させる低温物流体系。店舗のショーケースや冷凍機、関連する保守サービスなども含まれる。
同社の特徴は、売上高に占めるB2B比率が約70%と、グループ内でも高い水準にある点だ。片山は、その理由の一つに同社の納入ルートを挙げる。
片山:「例えば、ルームエアコンの事業は一般的にはB2Cと考えられるかもしれません。しかし、個人が家電量販店で購入するだけでなく、設計・施工会社や設備会社を通じて住宅や建物の設備として導入されるケースも多くあります。当社はこうした納入ルートを非常に多く有しており、選定・導入の意思決定が事業側にあることから、仮にルームエアコンでもそのようなものはB2Bと定義しています」
パナソニック HVAC & CC株式会社 代表取締役 社長執行役員
片山 栄一(かたやま えいいち)
空質空調事業とコールドチェーン事業の一体的な展開は世界的に見ても例が少なく、その試みは決して容易ではない。
片山:「HVAC & CCが向き合う市場には、空調機器メーカーと正面で競合する領域もあれば、独自性を発揮しやすい非競合領域もあります。前者にはルームエアコンや業務用エアコン、A2Wが含まれ、後者には空気清浄機をはじめとするIAQやコールドチェーン、環境エンジニアリングがあります。
新たに発足した当社では、両領域の売上構成比はほぼ半々で、利益の約7割を非競合領域が占めています。非競合領域を成長の基盤としながら、競合領域での売上拡大を図っていきます」
中長期的な需要拡大が見込まれる成長市場として、片山は非競合領域の一つであるコールドチェーンのCO2冷凍機を挙げる。同市場は温暖化を起点とした環境規制の強化に伴う需要構造の変化を追い風に、年率で2桁を大きく上回る成長を続けている。
一方、競合領域において売上拡大の鍵を握るのはA2Wとルームエアコンであるという。
片山:「A2Wは足元では苦戦が指摘されているものの、欧州市場における普及率はまだ5%程度にとどまっており、今後も高い成長が期待できます。ルームエアコンも、世界的な普及率は冷蔵庫や洗濯機の半分程度にとどまっており、さらなる拡大の余地があります」
HVAC & CCの事業は、ハードウェアからサービスへと価値提供の軸を移し、ソリューション領域の拡大を進めるグループ成長戦略において重要な役割を担う。
では、同社が提供するソリューションとは何か。
キーワードとなるのは、顧客の現場で稼働している自社の機器・設備を意味する「MIF(Machines In the Field)」だ。同社はこのMIFを重視し、継続的な収益の源泉へと変えていく方針だ。新規顧客への機器・設備販売を通じて収益を得るフロー型モデルではなく、MIFをストック(資産)と位置付け、その優位性を生かしてサービス提供の幅を広げ、継続的かつ長期的に収益を生み出すストック型モデルへとビジネスモデルを変革する。2029年度以降のグループの収益成長を支える核としていく計画だ。
片山:「当社のハードウェアは、幅広い顧客企業や公共機関の設備に組み込まれ、既に社会オペレーションを支えています。加えて、購入後5年、10年が経過したルームエアコンも重要なストックと位置付け、省エネ提案などのサービスを展開していく考えです」
こうしたMIFを起点とするソリューションの一例が、コールドチェーン領域におけるショーケースや冷凍機の保守・運用支援だ。店舗に納入した機器に対し、サービスやメンテナンス、部品補修、遠隔監視、エンジニアリングなどを通じて「顧客のオペレーションを止めない」という価値を提供していく。既に同領域では「StoreConnect」などのサービスを展開している。
業務用エアコン向けのAI省エネサービス「Panasonic HVAC CLOUD」もその一例だ。空調機器を起点に遠隔管理やAI制御を行い、省エネや運用支援につなげることで、設備の稼働そのものを継続的な価値提供の接点へと変えていく。
ネットワークにつながるショーケースや冷凍機、空調機器、給湯機器などの設置済みの機器を、設置後にソフトで遠隔管理や省エネ提案などができる点も、多様なMIFを保有するHVAC & CCならではの強みとなる。顧客の現場に設置・稼働する機器が増えるほど、保守・運用の効率化や省エネ、顧客のコスト構造の改善に貢献できる余地も広がる。
HVAC & CCは、こうした「ストック価値が存在する市場」に加え、「機能価値が重視される市場」「総合的な提案が求められる市場」の三つを、注力市場として位置付けている。
片山:「空気質を担保する『ナノイー(帯電微粒子水)』技術や、次亜塩素酸により空間の除菌・脱臭を行う空間浄化機器『ジアイーノ』といった独自技術を搭載した製品を、機能価値が重視される市場に投入していきます。
さらには、『空気・水・食』の事業領域を横断的に有する強みを生かし、コールドチェーンと空調、空気質と空調の連携など、総合的な提案が求められる市場にも注力していきます」
HVAC & CCがグローバルで向き合う市場規模は29兆円に上る。このうち同社の注力市場は4.1兆円だ。市場全体を広く狙うのではなく、自らの価値を発揮しやすい市場に絞り込み、ストック型ソリューション事業の拡大を通じて注力市場での着実な売上成長を目指していく。
HVAC & CCの発足前、片山がCEOを務めていた旧パナソニック株式会社 空質空調・食品流通グループは、2025年度を「トランジションの1年」と位置付け、同年の調整後営業利益は330億円強にとどまった。しかし、転換期を経た2026年度には、ほぼ倍増となる600億円を見込む。
更なる事業成長を目指し、MIFを起点としながら、サービスやエンジニアリングを含むストック型事業の拡大を進め、ハードウェア販売後のサービス、エンジニアリングで稼ぐ収益構造へと転換する。ハードウェアの販売後も顧客との接点を維持することで、収益の安定性と成長性を高めていく。
片山:「MIFを起点とする事業拡大の方針は、同じくパナソニックグループのソリューション領域を担う『パナソニック コネクトグループ 』『パナソニック エレクトリックワークス株式会社』のCEOとも合意しています。ソリューション領域に位置付けられるHVAC & CCにとって、ストック型事業の拡大は、グループのソリューション領域における将来の利益成長を支える重要な柱となります」
片山:「私たちは、『空気、水、食。技術で支え、未来へつなぐ。』をスローガンに掲げ、お客様解像度ナンバーワン企業を目指すことを社員に呼び掛けています。事業ごとに形態やお客様は異なるものの、常に“幅の広さ”と“深さ”を意識してお客様に向き合い、そのオペレーションを止めないことが、われわれのミッションです」
パナソニックグループの成長戦略で示された「2032年に向けたお役立ち」。創業者・松下幸之助が「物と心が共に豊かな理想の社会の実現」をグループの真の使命として宣言してから100年という節目に向け、ソリューション領域の拡大を通じて、社会オペレーションを「止めない・省エネ・省人化」で支え続ける。その一翼を担うHVAC & CCは、さらなる事業成長を通じ、社会課題の解決とグループの企業価値向上に貢献していく。
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