2024年12月17日
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北海道北広島市で2023年3月に開業する北海道日本ハムファイターズの新球場「ES CON FIELD HOKKAIDO(エスコンフィールドHOKKAIDO、以下、エスコンフィールド)」には、パナソニックグループのスタジアム照明、映像制作プラットフォームをはじめとするスポーツソリューションが多数採用されている。施設運営側、観客、さらにはプレーヤーの視点にも寄り添いながら、グループの総合力をもって細やかな提案を実施。スタジアム演出による新しい感動体験のみならず、街全体の賑わい創出にも貢献する実績を築いた。今回は、自らの担当領域や組織の枠にとらわれることなく推進力を発揮した営業のリーダーと、映像制作ソリューション「KAIROS(ケイロス)」のスタジアムへの初導入を実現したメンバーの思いを聞いた。
エスコンフィールドは、敷地面積5ヘクタール、収容人数は3万5,000人。掘り込み式フィールドから地上4階まで観客エリアが広がる日本初の開閉式屋根付き天然芝球場だ。フィールドを見渡せる360度型のコンコースや、世界初の球場内温泉・サウナ、フィールドが一望できる日本初の球場内ホテルなどがあり、さまざまなシチュエーションで新しい観戦体験を楽しめる。
このエスコンフィールドを核にした「北海道ボールパークFビレッジ(以下、Fビレッジ)」において、パナソニックグループは、株式会社 ファイターズ スポーツ&エンターテイメント(以下、ファイターズ)をクライアントとし、数多くのパートナーとも足並みを揃えながら、開業に向けて着々と準備を進めてきた。
Fビレッジでは、宿泊施設や商空間、農業学習施設、認定こども園、レジデンスなどを設けた持続可能な街づくりを目指しており、野球観戦に加え、地域社会の活性化や社会への貢献につながる“共同創造空間”の実現を推進している。
このいわば新しい「街づくり」とも言える取り組みにおいて、中心となるスタジアム、エスコンフィールドは「これまでにない観戦体験」の実現を目指し建設が進められてきた。パナソニックグループでは主に競技・演出照明の設置、KAIROSを軸とした総合演出システムの導入により、新たな観戦体験の提供や、選手と同じ目線の高さで観戦できるプレミアムな空間「Panasonic CLUB LOUNGE」でのパナソニック製品の体験など、多様な観戦スタイルの実現を目指すことで、「世界がまだ見ぬボールパーク」としての価値向上に貢献している。
パナソニックグループの総合力を発揮できる貴重な機会を生かすべく、「パナソニックグループの顔」として案件全体の営業を取り仕切ったのが、パナソニック株式会社(以下、パナソニック) エレクトリックワークス社の馬杉 道裕(ますぎ みちひろ)だ。
馬杉「北海道で電気設備資材の市販営業・開発に携わる中で、スタジアム建設のお話を伺ったのが2016年のことです。私自身、高校まで野球をやっていましたし、大学では体育教師の免許も取ったほどのスポーツ好き。街おこしにもつながる新しいボールパークの誕生と聞いて、パナソニックとしてぜひ参加させていただきたいと思いました」。
馬杉「これまで開発に関わってきたこともあり、新しい取り組みに対してあまり抵抗感がないんです。まずはやってみよう、と気概を持って臨みました。
私の担当は照明機器ですが、スタジアムはそれだけで構成されているわけではない。私たちのお客様、つまり施設運営側の方たちが掲げる思い、それは『世界にまだ見ぬボールパークを創りたい』ということでした。そこで『パナソニックさんとして、何ができますか』と問われたときに、私としても『グループの顔』となり先方のご要望にお応えしていかねばと。そうでなければ、本当の営業活動とは言えません。
私個人はエレクトリックワークス社というパナソニックグループの一部門の社員です。しかしお客様は『パナソニックグループ』全体に期待を寄せてくださっている。一人ひとりが、パナソニックグループの顔としてお客様と向き合うことが不可欠だと改めて実感しました」。
馬杉は北海道の定例会議で、各事業会社に向けてグループ横断型の「ボールパークワーキンググループ」の立ち上げを提案。「パナソニックグループとして、複数のカテゴリーに対してコンペティションに立候補しよう」と働き掛けた。
馬杉「当然、取り組む領域やお客様が異なりますので、それぞれの事業領域ごとに文化の違いといったものはあります。でも、そこで足踏みしていてはいけない。
私たちが最初に提出した企画書は1枚だけのシンプルなものでした。でもそこに、パナソニックグループとして実現可能な、幅広い領域での多彩なソリューションをできる限り盛り込んだんです」。
先方からは当然のことながら、照明関連以外の相談も寄せられる。そこでパナソニックグループとして窓口を一本化し、馬杉自身がその役割を一気に引き受け、グループ内の各担当者につなげることで、先方との信頼関係を確固たるものにしていったのだ。
馬杉は、プロジェクトリーダーとしての役割を果たしながらも、自社で扱う照明機器の提案にもこだわり抜いた。
馬杉「野球、サッカー、ラグビー……国内の複数のスタジアムをファイターズさんと視察させていただきました。どんな照明が何台あるかということ以外に、スタジアム運営そのものについても勉強させてもらいました。
通常、スタジアムの照明というと500~700台ほど設置されますが、エスコンフィールドの場合は開閉式ドームということもあり、照明を外野側とバックネット側にしか置けないという制約がありました。その上で、明るさを確保する必要がありました」。
限られた設置面積で必要な明るさを確保するための解決策としては、そこに従来よりも大きめの照明機器を置くことが考えられる。しかし照明1台当たりのサイズが大きくなれば、プレーする選手にとってはまぶしさが増すことに直結する。
馬杉「高校で野球をやっていた時は、ピッチャーのほかに、センターも担当しました。当時、光の加減で守備の際にまぶしくて、ボールが見にくいということもありました。そういう実体験もあって、できるだけプレーヤーの皆さんに寄り添ったスタジアム照明を実現したいと思っていました」。
馬杉は他のメンバーと検討を重ね、2種類のLED投光器を組み合わせ、搭載する機器を1台ずつ制御することで、明るさを確保しながらも、まぶしさを抑える照明設計を提案。プレーヤーファーストを考慮したソリューションを実現した。
今回採用されたLED照明は従来のHIDランプと比較して省エネな上、個別に点灯・消灯できるため、試合以外での利用においても柔軟な演出が可能。また今回のために新たにフィールド上を光が駆け巡る演出手法を開発し、354台の照明を個別に制御。これまでにない照明演出を実現している。
馬杉「会社としてのお客様は施設運営・管理側の方たちですが、その視点に留まらず、来場する観客の視点、そして選手の視点、これら3つの視点でメリットのある照明環境を創ることで、全ての方の満足を目指したソリューションが提案できたと思っています」。
エスコンフィールドでは映像・照明・音響を一元的に制御する「統合マネジメントシステム(S-CMS)」との連携により、スタジアム全体をICTでシームレスにつなぎ、場内約600台のデジタルサイネージに、ほぼリアルタイムに映像を映し出し、照明・音響と連動したエンターテインメント性の高い観戦体験を提供する。
例えば、ホームランやファインプレーの際、従来型のスイッチャーであればその瞬間を狙って複数のスタッフが同時に操作する必要がある。KAIROSでは、システム連携により、ワンオペレーションでのリアルタイム演出が可能だ。観客席はもちろんのこと、サウナやホテルの部屋からと、これまでにない多様な観戦スタイルが可能となる。
この現場でキーパーソンとなったのが、パナソニック コネクト株式会社 現場ソリューションカンパニーの加藤 暁之(かとう あきゆき)。エスコンフィールドにおける「KAIROS(ケイロス)」を軸とした総合演出システムの導入を担当したSE(システムエンジニア)の一人だ。
KAIROSはパナソニック コネクト株式会社が2020年9月に発売したIT/IPプラットフォーム。映像フォーマットなどの制約なく、自由に大型映像やサイネージコンテンツの制作が可能で、現場の「撮る・創る・映す」を革新する次世代のソリューションとして開発された。プロスポーツ、コンサートなどの各種イベントおよび放送局の映像制作・会場演出・映像配信の用途に向けて、ライブ映像制作のクオリティと生産性を飛躍的に向上させる映像制作システムサービスだ。
エスコンフィールドでは、大型ビジョンを生かした映像演出を行うにあたり、16:9という従来のアスペクト比にとらわれないコンテンツ制作が必要に。そこで、自由な画角・解像度で直感的にレイヤーを重ねられるIT/IPプラットフォーム「KAIROS」の強みが生き、採用につながった。KAIROSのスタジアムにおける映像演出としての納入は今回のエスコンフィールドが全国初となるため、その実装に向けては慎重に準備が進められてきた。
加藤「長年、映像系のSEを担当してきました。基本的には映像制作会社様など、お客様の現場にご一緒させていただいて、現場に求められる最適解をシステムとして構築していく仕事です。今回は2020年ごろからプロジェクトに参加して、放送局を中心にKAIROS導入の実績を重ねながら、初のスタジアムへの導入をプランニングしていきました」。
導入するKAIROSの心臓部はこれまでの放送局への納入実績と同じもの。しかし今回は、新たに統合マネジメントシステム(S-CMS)を軸に、周辺のシステムと連動するシステム構築にチャレンジし、パナソニックグループとして画期的なソリューションを実現している。
加藤「エスコンフィールドには世界最大級の大型ビジョンが2つあります。この両面をいかに効率的に運用いただくか。どうすればスタジアムの一体感・没入感を生み出せるか、それは図面を引いただけでは表せない部分です。よって私も現場に通わせてもらって、ボタンアクションなど含め、お客様にさまざまなご提案をしています。
KAIROSは演出の自由度が高いので、お客様ご自身でカスタムいただけるところもメリットの一つ。お客様とのやり取りを通じて、私自身も勉強させてもらっています」。
加藤「私の信条として、現場に入るときは『お客様と同じ気持ちで取り組む』というものがあります。地方の放送局にお邪魔したときは、その地域の方たちが大切にされているもの、大切に思われているものに寄り添う。お客様と同じ価値観でもって仕事に取り組むようにしています。
例えば、今回はお客様やファンの方々の気持ちに近づくために、ファイターズさんのユニフォームを着て業務に取り組んでいました。
職場は神奈川県にあり、かつコロナ禍の折でしたが、何度も北海道に通いながら、システム構築を進めてきました。開業が近づいてきたこの数カ月は、平日はほぼ現場に入らせてもらっています。パナソニックグループをはじめ、多くの企業が一丸となって創り上げてきたエスコンフィールドで、皆さんに新しい観戦体験をお届けできるのがうれしいです」。
エスコンフィールドには競技照明の他にも球場内に約9,000台、そして外構用として約450台の照明が納入されている。
馬杉「ファイターズさんは新しいライブ・エンターテインメントや最先端ウェルネスライフをテーマに、野球観戦に加え、地域社会の活性化や社会への貢献につながる『共同創造空間』づくりを目指しておられます。当社の照明演出により、エスコンフィールドを含めたエリア全体の活性化をサポートし、持続可能な街づくりを支えていくことができればと思います」。
加藤「Fビレッジにおける街づくりの面では、馬杉さんをはじめとしたエレクトリックワークス社が先行して取り組んでおり、われわれも追随していきたいと思っています。
KAIROSは、放送業界のベテランと若手の間を取り持って、世代を超えたコミュニケーションから新しい文化を創出していく、そんなポテンシャルを持った技術だと思っています。この技術を街づくり、街おこしのカギとしてどんどん活用いただきたい。地域の皆さんが集まる場所の中心にスポーツがあり、その現場をKAIROSがサポートすることで、あらゆる世代が交流し、楽しめる――そんな空間を増やしていくことができればと思います」。
今回実現したスポーツソリューションを新たな通過点とし、今後もパナソニックグループは先進の製品・サービスをご提案しながら、グループとしての総合力を発揮し、人々にスポーツを通じた感動・驚きをお届けしていく。そして、一人ひとりのくらしを豊かにするウェルビーイングの実現に寄与するべく、進化を続けていく。
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