福澤:現役時代に大事にしていた考え方や野球への向き合い方で、指導者になった今も共通する部分、選手育成に生きている部分はありますか。
鳥谷:野球ってめちゃくちゃ確率の悪いスポーツなんです。超一流でもたった3割しか打てない。だから、「失敗の受け入れ方」は常に意識していました。私も2,000本打つまでに、数え切れないほどのアウトを重ねています。でも、そのミスを受け入れて、マイナスをどうプラスに変えていくかを考えることで、成長につなげてきました。この習慣は指導にも生きていると思います。
福澤:失敗を受け入れることで、自然と次に取るべきアクションに目が向くということですね。スポーツ界でもいまだに問題になっていますが、ミスだけにフォーカスして叱責する指導者も多いですよね。
鳥谷:ミスしたことを責めても意味がない。選手が受け身になり、次に「ミスをしない」ための選択をしてしまうことが一番怖いです。教える側も失敗と向き合い、次に結果を残すための選択をしていくことが大事ですね。
福澤:指導の中で特に気を付けている点はありますか。
鳥谷:指導をしていると、自分ができたことと選手ができないことのギャップがどうしても出てくるわけですね。例えば、バランスボールに最初から立てる人もいれば、立つために1週間、2週間とかかる、もしくは立てない人だっています。でも、自分はできたという感覚で接してしまうと、それが時に選手にとってマイナス要因になる。自分の経験は当然選手に伝えるんですが、誰でもできるというような、自分の感覚と照らし合わせての判断はなるべくしないようにしています。