東口:意外となかったね。安易な考えやけど、当時、自分がプレーしていたステージがJ1リーグだったことで、仮にそこで通用しなくてもJ2リーグという道があると思っていたから(笑)。それに、僕の場合、学生時代から決してエリートな道を歩んできたわけではなかったから。大学卒業後はJFLとか社会人チームに行けたらラッキーくらいにしか思っていなかったし「サッカーで就職できないならやれる仕事は何でもしよう」と腹をくくっていた中でプロになれたから、最悪、プロで通用しなければその時は、自分にできる仕事を選べばいいと思っていた。
福澤:どのタイミングで、自分はプロの世界でも通用すると思えた?
東口:2年目で、試合にもコンスタントに出させてもらえるようになって「ああ、いけるかも」っていう感覚にはなったかな。結果的に、その年も途中、左眼窩底骨折と鼻骨骨折で一時期は戦列を離れたけど「しっかり治せばまたピッチに戻れる」と思えていたし。それは3年目、4年目と大きなケガが続いて長期離脱になった時も揺らがなかったね。
福澤:プロとして生きていくための武器はあった?
東口:自分では正直、これというものがないと思っていたのに、試合に出始めてからいろんな人にセービングや、倒れてから立ち上がるまでの速さ、飛び出しの速さ、といった「速さ」を評価されるようになって。それによって「速さ」は自分の武器かもしれないな、と思うようになった。福澤は?
福澤:僕も学生時代から決して器用なタイプではなく、バレーも下手くそだったし、レシーブなんかは特にセンスがなかったけど、ジャンプだけには自信があった。18歳で初めて日本代表に呼ばれた時も、ジャンプで常に一番になれば「もしかしたら鍛えたら伸びるかも」って可能性を感じてもらえるんじゃないか、と思っていたし。そういう意味では、ジャンプは自分が選手としてステップアップしていくための入口になったと思う。
東口:武器と思えるものを備えることが心のよりどころになったり、自信を備えさせてくれることもあるよね。
福澤:間違いない。トップレベルの選手に近づくために、苦手な分野を補おうとするとすごく時間がかかるし、もともとそれを武器にしている選手にはいつまでたっても追いつかない。だからこそ僕もまずは自分の武器、長所を伸ばせるだけ伸ばす方が、早く評価を得られるんじゃないかと思ってた。