Fujisawa SSTではパナソニックグループをはじめ多くの企業がFujisawa SST協議会に参画し、住人の声を具現化する企業体「Fujisawa SSTマネジメント株式会社(以下、TMO)」と共に街の新たなサービス、仕組みづくりを行っている。しかし、従来の仕組みでは自転車や車を借りて返却する「ステーション」にあたる場所はFujisawa SST内に1カ所。アナログな鍵の受け渡しが必須で、窓口の営業時間(8時~20時)のみ利用可能という制限もあった。また、近隣の駅や施設での乗り捨てもできず、使い勝手の面で改善を望む声も聞かれていた。
豊北は言う。「皆さんの声が集まり、課題が見えてきたのが2021年10月ごろ。この時期は新しい試みとして電動バイクをご提案してみて、試乗体験の感想をいただくなどしていました。しかし、それらはまだ新しいモビリティということでなじみがなく、使い勝手や交通ルール、道路環境の観点からFujisawa SSTに多いファミリー世代にはあまり響かず……やはり、まずは自転車の課題にフォーカスすることが先決だ、ということが見えてきました。
そしてこのタイミングで、『UXデザイン』思考に長けたメンバーにも参加してもらうことになりました」。豊北が白羽の矢を立てたのは、パナソニック株式会社 くらしアプライアンス くらしプロダクトイノベーション本部 デザインセンターの相田 将明(あいだ まさあき)だ。
「UXデザイン」とは、UX=ユーザーエクスペリエンス、つまり、お客様の潜在意識を観察(インサイト/探索)し課題を発見。新しい体験を生み出すことで、課題や潜在的ペイン(悩みの種)を解決するという考え方だ。
「街のモビリティソリューションを手掛けるのは初めてでしたが、これまでに担当してきた調理領域のサービス開発やアプリケーションのUIデザインなどの業務同様、パナソニックグループのデザインフィロソフィーである『Future Craft』の考えに基づいて取り組んでいくことにしました。ポイントは『ありたい未来』からバックキャスト(逆算)してそのギャップをどう埋めるかを検討する、そして『答えはお客様が持っている。お客様から気づきを得て、真の課題を見出し、最善策を導いてお届けする』ということです。今回はモビリティの見直しを通じて、Fujisawa SSTとしての『ありたい未来』を想像し、新たな『人とコミュニティの可能性』の提示を試みました」。