臼井は言う。「経営者自身が未来を描くことがすごく大事。それはグループCEOの楠見が早々に見抜いていました。
楠見はCEO就任前、オートモーティブ事業のトップを務めていた時代に、全社の、どの事業部よりも先駆けて、『車室空間ソリューション室』というBTCチームを作ったんですね。
当時のオートモーティブ事業は主体が横浜にありましたが、『車室空間ソリューション室』はあえて京都のデザインセンターに置き、そこに未来を共に考えていくメンバーを集めて、自由に意見交換をしていく場所とした。その後、2021年にグループCEOとなった際に、あの時と同じように、『越境型BTC』組織の取り組みをグループ全体でやろうということになったのです」。
変化が起きるところにビジネスチャンスがある。自らが変化を起こさないといけない――まずは経営者がこうした思いを持つことが重要だ、というのが臼井の考えだ。
「昔は技術そのものが変化を起こしていて、そこにデザインが求められていました。例えばVHSからDVDになったら、横ではなく縦にも置ける。となればプロダクトのデザインも変化し、お客様もそこに魅力を感じ、新しいビジネスチャンスが生まれていきました。
しかし今は変化するのは技術ではなく、お客様の価値観のほう。そこを見据えながら、未来がどう変化していくかを検討し事業にどう紐づけるかが、成功につながるキーだと思うのです」。
大量生産により、広くあまねく多くのお客様に豊かさをお届けしていた時代には、「つくる」のスペシャリストが多かった。しかし今後は「気づく」「考える」「伝える」に長けた人材も貴重となってくる。
「UXデザイン」の実現には、リサーチャーやストラテジストなどの新たな専門人材が必要とされ、その層も近年厚くなり、デザインの機能も多様化している。
「創業者 松下幸之助の『ものをつくる前に人をつくる』という精神にも則り、多様な専門人材の採用と育成にも力を入れていきます」。
従来とは違ったやり方で未来を「ソウゾウ」していく――現代のパナソニックグループとしての「成長のメカニズム」を確立させ、会社のDNAとして浸透させていくデザイン経営の取り組みは、グループ全体にとっての新しいチャレンジといえる。
より多くのお客様の課題解決にお役立ちするべく邁進しているパナソニックグループ。お客様視点で真に価値あるクリエイションを目指すパナソニックデザインの挑戦は、グループが持続的に成長していく未来を実現する大きなチカラとなっていくに違いない。