
2025年11月27日
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パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社(以下、パナソニック)は、神戸市立工業高等専門学校 機械工学科 鈴木 隆起教授との共同研究により、小型高濃度ファインバブル(以下、FB)発生デバイスを開発しました。
FBとは直径100 μm未満の微細な気泡の総称であり、表面がマイナスに帯電しているため、異なる極性の物質を引き付け、同じ極性の物質を反発させる電気的相互作用を持っています。さらに、油性物質を表面に集める疎水性相互作用や、気泡の消滅時に発生する衝撃波による圧力変化など、さまざまな作用が研究されており、洗浄効果や美容・健康分野において高い期待が寄せられています。
FBの発生手法の1つとしてベンチュリ構造が用いられていますが、高濃度の気泡を発生させるほど流路抵抗が増し、圧力損失による流量低下が課題となっていました。今回開発したFB発生デバイスは、ベンチュリ管の入口部に球体を設置する独自構造を採用することで、水流速度を高めつつ圧力損失を抑制。さらに内部構造の精密設計により、FBの発生効率を大幅に向上させ、流量低下を防ぐことに成功しました。また、水流モードの切り替えにより、ウルトラファインバブル(以下、UFB)とマイクロバブル(以下、MB)のバランスを調整できるため、目的に応じたFB数の発生が可能です。
さらに、FBの美髪効果についても検証を実施。水道水に含まれるカルシウムなどの金属イオンが毛髪表面に吸着し(※1)、トリートメント剤の浸透を阻害する現象を確認しましたが、UFBが金属イオンによる妨害を低減するとともに、UFBの増加により剤の吸着を促進する効果が認められました。モニター評価においても、本デバイスを組み込んだシャワーヘッドに切り替えることで、「まとまり感」「やわらかさ感」「ツヤ感」などの実感効果が得られ、ヘアケアの品質向上に寄与する技術として高く評価されています。
パナソニックは、今後も新たなヘアケア習慣を提案するとともに、さらなる技術革新を通じて、お客様一人ひとりが輝く美しさと健やかさの実現に貢献していきます。
ベンチュリ管によるFB生成は一般的ですが、シャワーヘッドなどの小型機器において、圧力損失の低減と高濃度のFB生成を両立させる最適な形状は明らかになっていませんでした。本研究では、数値流体解析を用いてFBの発生現象と生成量の関係を明らかにし、独自構造で従来にない高濃度FBの生成に成功しました。洗浄力の向上に加え、毛髪へのトリートメント剤の吸着を促進するなど、より効果的なヘアケアが期待できます。
通常、濡れた毛髪はマイナスに帯電しています。そのため、水道水に含まれるカルシウムなどの金属イオンが毛髪表面に吸着すると、プラスの電荷を持つトリートメント剤の成分が金属イオンと反発し、髪への浸透が妨げられます。
マイナスに帯電したFBは、金属イオンを引き寄せて濡れた毛髪表面への吸着を抑制。プラスの電荷を持つ成分が吸着し、トリートメント剤の成分を毛髪間に行きわたらせることで、トリートメント剤の効果をより高めることができます。
図1. FBによるトリートメント剤成分の吸着阻害抑制作用(イメージ)
トリートメント剤の吸着促進効果を視覚的かつ定量的に評価するため、トリートメント剤と同様に水中でプラスに電離する性質を持つ塩基性染料を用いた代替評価を実施するとともに、高濃度FB水流が髪に与える効果に関する感応評価を実施
■検証機関
パナソニック株式会社、神戸市立工業高等専門学校
■使用装置
■試験方法
使用装置により生成した40℃のUFB水、MB水、そしてブランク水に白髪毛束を1分間浸漬した後、塩基性染料を溶解した試験水の中に1分間浸漬。染色後の毛束の明度を色差計で計測
■検証結果
図2. 染色後の毛束の明度比較(純水)
図3. 染色後の毛束の明度比較(水道水)
図4. 毛束染色処理におけるキャリア効果と金属イオン吸着阻害抑制効果
■検証機関
パナソニック株式会社、神戸市立工業高等専門学校
■使用装置
本開発デバイスを搭載したFB発生機能を有するシャワーヘッド
■試験方法
装置により生成した40℃のFB水に塩基性染料を溶解し、白髪毛束を所定時間浸漬後、毛束の明度を色差計で計測
■検証結果
水道水中のUFB数の増加に伴い、明度が低下する傾向が確認されたため、UFB数が多いほど、剤の吸着促進作用の向上が示唆
図5. UFB数と明度の関係
■検証機関
パナソニック株式会社
■被験者
20代から40代の一般女性16名
■使用装置
下記2種類のシャワーヘッドを使用
■試験方法
各シャワーヘッドを用いて、以下の条件下で洗髪試験を実施
■検証結果
図6. FBシャワーの毛髪効果に対する検証結果
「ファインバブル」とは、直径100 μm(=0.1 mm)未満の気泡の総称です。ファインバブルのうち、直径100 μm未満で1μm以上の気泡を「マイクロバブル」、それより小さい直径1 μm未満の気泡を「ウルトラファインバブル」と呼称します。「ファインバブル」「マイクロバブル」「ウルトラファインバブル」は一般社団法人ファインバブル産業会(FBIA)の登録商標で、国際標準化機構(ISO)で定義されている用語です。
※1 A.O.Evans, J.M.Marsh and R.R.Wickett, The structural implications of water hardness metal uptake by human hair. International Journal of Cosmetic Science, 2011, 33, 477-482.
※2 当社から依頼し、いただいたコメントを編集して掲載しています
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