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2013年3月19日
製品・サービス / トピックス
パナソニック株式会社 デバイス社は、窒化ガリウム(GaN)[1]パワートランジスタの量産化に向けて必要不可欠となる連続安定動作を実現しました。本開発のGaNパワートランジスタにより、産業用あるいは民生用の各種電力機器における省エネルギー化が可能となります。2013年3月より耐圧[2]600V品のサンプル出荷を開始致します。
【効果】
本開発により、耐圧600Vを有するGaNパワートランジスタとしては業界で初めて(※1)、安定な連続動作を確認できました。これにより、各種電源等の機器へのGaNパワートランジスタ適用が進み、機器の省エネルギー化・小型化が実現できます。
<商品情報>
http://www.semicon.panasonic.co.jp/jp/products/powerics/ganpower/
【特長】
本開発のGaNパワートランジスタは、以下の特長を有しています。
1) 6インチSi基板上に形成した当社独自のGIT(Gate Injection Transistor)[3]によりノーマリオフ動作[4]を実現
2) 耐圧600V品においてスイッチング動作時のオン抵抗[5]上昇を抑制することで連続安定動作を実現
3) 横型トランジスタ構造を採用、従来の縦型Siパワーデバイスと比較し高速かつ高効率なスイッチング動作が可能
【内容】
本開発は、以下の新規技術開発により実現しました。
1) 大面積Si上へのGaN結晶成長を可能とする有機金属気相成長(MOCVD)[6]技術、およびp型ゲート構造を有するGaNパワートランジスタ技術
2) 高電圧印加後にオン抵抗が増大する電流コラプスと呼ばれる現象を抑制するデバイス構造、およびこれを可能とするための量産化プロセス技術
3) 低オン抵抗かつ低容量であるGaNパワートランジスタを1MHz超の高周波動作に適用するための回路設計・評価技術
【従来例】
従来のGaNパワートランジスタでは、機器の安全性を確保するために必要なノーマリオフ動作の実現に加え、高電圧での電流コラプスが大きな課題でした。このため耐圧600V品において実用化レベルの高速・高効率動作が確認できていませんでした。
【特許】
国内 130件、外国 112件 (出願中含む)
※1 耐圧600Vでノーマリオフ動作可能なGaNパワートランジスタとして。2013年3月19日、当社調べ。
【備考】
本開発は、2013年3月17日~21日に米国ロングビーチで開催のAPEC2013にて展示されます。この成果の一部は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の共同研究「エネルギー使用合理化技術戦略的開発」の結果得られたものです。
▼本件に関するお問合せ先
●報道関係お問合せ先
デバイス社 経営企画グループ 広報・調査チーム
TEL:06-6904-4732
●商品に関するお問合せ先
http://panasonic.net/id/jp/contact/
●パナソニック株式会社 デバイス社 ホームページ
http://panasonic.net/id/jp/
<商品情報>
http://www.semicon.panasonic.co.jp/jp/products/powerics/ganpower/
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【特長の説明】
1) 6インチSi基板上に形成した当社独自のGIT(Gate Injection Transistor)によりノーマリオフ動作を実現
GaNパワートランジスタが実用化されるためには、GaNの結晶成長に用いられる基板の低コスト化が必要不可欠です。本開発では6インチSiという大面積基板を用いることで、この課題を解決しました。機器の安全性確保のためパワートランジスタにはゲートに電圧が印加されない状態で電流が流れない、いわゆるノーマリオフ動作が強く求められますが、GaNパワートランジスタでは分極[7]と呼ばれる材料物性があるためにノーマリオフ動作の実現が困難でした。本開発ではGITと呼ばれる独自のデバイス構造を提案し、これを解決しました。
2) 耐圧600V品においてスイッチング動作時のオン抵抗上昇を抑制することで連続安定動作を実現
GaNパワートランジスタにおいては高電圧印加後にオン抵抗が増大する、電流コラプス現象が大きな課題でした。この電流コラプスのために連続動作時にはオン抵抗がさらに増大してしまい、トランジスタが安定動作しない場合がありました。本開発では耐圧600V品において、この現象を完全に抑制することで連続安定動作を実現しました。
3) 横型トランジスタ構造を採用、従来の縦型Siパワーデバイスと比較し高速かつ高効率なスイッチング動作が可能
GITは横型構造を有しており従来のSi系パワーデバイスと比較して低オン抵抗かつ低容量が特長です。当社ではこの特長を最大限に活かした回路設計・評価技術を開発しており、その一例として共振型LLC電源回路[8]において1MHzでの高出力・高効率動作を実現しました。
【内容の説明】
1) 大面積Si上へのGaN結晶成長を可能とする有機金属気相成長(MOCVD)[6]技術、およびp型ゲート構造を有するGaNパワートランジスタ技術
6インチSi基板上においてGaN結晶に存在するストレスを低減する層構造を導入することで、クラックの発生しない良好な結晶性を有するGaNトランジスタ構造の形成に成功しました。さらにp型ゲートより正孔を注入するGITにおいては伝導度変調を生じさせることで、ノーマリオフ動作を実現しつつドレイン電流を増大できるので、低オン抵抗の実現が可能となります。
2) 高電圧印加後にオン抵抗が増大する電流コラプスと呼ばれる現象を抑制するデバイス構造、およびこれを可能とするための量産化プロセス技術
電流コラプスの原因は高電界により電子がトラップに捕獲されてしまうためと考えられますが、今回、量産化プロセス技術の開発を通してトラップ密度を減少させると共に、電界を緩和するトランジスタ構造を導入しました。これにより600Vでの連続動作でオン抵抗増加を完全に抑制することに成功しました。
3) 低オン抵抗かつ低容量であるGaNパワートランジスタを1MHz超の高周波動作に適用するための回路設計・評価技術
パワートランジスタのスイッチング動作においてはオン抵抗(Ron)とゲート電荷量(Qg)[9]の積であるRonQgの低減が高速動作に向けての指標となります。本開発において、最新のSi MOSトランジスタと比較して約1/13の715mΩnCという小さなRonQgを実現しました。当社では、このGaNトランジスタをAC-DC電源における代表的なDC変換回路である共振型LLC回路に適用しました。ここでは1MHzという高周波動作時に1kWの高出力かつ96%超の高効率動作を確認しました。この結果は本開発のGaNパワートランジスタが実用化レベルの特性を有していることを示すものです。
【暫定仕様】
品番:PGA26A10
しきい値電圧(Vth):1.2V
耐圧(Vds):600V
定格電流(連続):15A
オン抵抗(Rdson):65mΩ
ゲート電荷量(Qg):11nC
【用語の説明】
[1]窒化ガリウム(GaN)
周期表の3族に属するガリウム(Ga)と窒素(N)の化合物で、電気的にはバンドギャップ(半導体中で電子の存在し得ないエネルギー範囲)の大きい半導体です。一般にこのバンドギャップが大きな材料ほど電気的な耐圧は高いといわれています。
[2]耐圧
オフ動作時においてソース電極・ドレイン電極間に電圧を印加した場合に、耐えうる最大電圧のことです。
[3]GIT(Gate Injection Transistor)
当社が独自に開発したノーマリオフ型のGaNトランジスタです。正孔注入時に、ドレイン電流が増加することを利用した新しい動作原理で低オン抵抗とノーマリオフを両立することができます。
[4]ノーマリオフ動作
ゲートに電圧を印加していない時に、ソース・ドレイン間に電流が流れない半導体デバイスの特性です。
[5]オン抵抗
トランジスタをオン状態 (導通状態) にした場合の、ソース電極・ドレイン電極間抵抗のことです。
[6]有機金属気相成長(MOCVD)
有機金属原料をガス化して供給することにより結晶を成長させる方法で、GaNの結晶成長方法として最も代表的なものです。3族原料に有機金属を、5族原料にアンモニアを使用します。供給された原料ガスが加熱された基板上で、分解・化学反応を起こすことで結晶成長が行われます。
[7]分極
窒化ガリウムのような半導体では、結晶を構成するGaとNがプラスとマイナスに帯電しています。そのために、結晶の表裏に正負の電荷が現れ、これを分極といいます。
[8]共振型LLC電源回路
スイッチング電源において広く利用されている電源回路方式の1つで、インダクタンスとキャパシタンスとで共振現象を発生させ、スイッチング損失を低減し、ノイズを低減できる特長があります。
[9]ゲート電荷量(Qg)
スイッチング動作時にトランジスタのゲートへ充放電される電荷量です。
[10]伝導度変調
電子の通り道であるチャネルに正孔を注入すると、電荷中性条件を満たすように注入された正孔と同数の電子がチャネルに誘起されます。当初の電子に誘起された電子が加わるため、チャネルの抵抗が大きく下がります。このように半導体の電気伝導度を変化させ、より電流を流し易くする効果のことを伝導度変調といいます。
<商品情報>
http://www.semicon.panasonic.co.jp/jp/products/powerics/ganpower/
記事の内容は発表時のものです。
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