2024年12月20日
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近年、ライフスタイルの変化に伴って人々の働き方が多様化する中、企業と個人の関係は大きな転換期を迎えている。2024年4月、パナソニックグループは、アルムナイ(※)と緩いつながりを保ちながら、協業・共創を生み出すコミュニティとして、「パナソニックグループ・アルムナイコミュニティ」の本格運用をスタートさせた。創業以来、人材を重要な資本として捉える「人的資本経営」の考え方を重視してきた当グループでは、それまで退職によって途切れていたアルムナイとの関係を見直し、離職や退職で終わらない企業と個人の新たな関係の構築を目指している。今回は、グループを退職した後に縁あって復職を果たした、かつてのアルムナイの2人を紹介する。
※アルムナイとは英語で「卒業生、同窓生」という意味があり、一般的には定年退職者以外の離職者を指す。
「パナソニックグループ・アルムナイコミュニティ」は、グループ共通の人事戦略の柱である「やりがいを持って、はたらく。」「個性を活かしあって、はたらく。」につながる、グループの正式なコミュニティだ。設立に向けて奔走したのは、自身もかつてパナソニックグループを退職し、数年後に復職した経験を持つ、本田 慎二郎(ほんだ しんじろう)。本田は、「一度社外に出たことで、グループの良いところも、改善すべきところも、より客観的な視点で評価できるようになった」と話す。
本田:
私は新卒で入社し、4年ほど人事業務に就いたのちに、経営企画部門に異動しました。入社して10年経ったころ、新しい環境で挑戦するべく退職を決意しました。転職先ではそれまでのスタッフ系ではなく事業系の仕事に就いて生産性分析・UX改善などを担当し、多くのことを学ばせてもらいました。転職してから3年が経とうとするころ、再びパナソニックグループとご縁があり、2023年に復職しました。現在は人事部門でグループ全体の採用に関わる企画に取り組んでいます。
従来、パナソニックグループとアルムナイの交流については、社内の有志によるコミュニティ「One Panasonic」を通じた自主的な活動に留まっていました。そのため、多くの退職者は、会社を離れた時点で、公にはグループとの縁は途切れてしまっていたんです。
私も退職当時、会社からのメールなどが全く届かなくなって初めて、グループから完全に切り離されたのだと実感し、寂しく感じたのを覚えています。元の職場の同僚や仲の良かった社員たちとは連絡を取り合っていましたが、それはあくまで個人的なつながりでした。
再就職のきっかけは、一言で言えば「ご縁とタイミング」でした。自分の人生について、次の一手をどうするかの迷いが出ていた時に、交流が続いていたかつての仲間に声を掛けてもらったことで、「これまで社外で得た知識・経験を、最初に育ててもらった場所に還元したい」という思いが強まり、復職することにしました。
いわば出戻りの自分を、配属先のメンバーは温かく迎えてくれました。そんな雰囲気をありがたく思う一方で、会社を一度離れた者だからこそ分かる「気付き・課題」もたくさん見つかって……。1カ月ぐらいかけて課題のリストを作成し、上司に率直に伝えたところ、上司はそれらを歓迎してくれました。今回のアルムナイコミュニティにつながるアイディアも、その時の課題に含まれていたものなんです。
本田:
アルムナイとの関係構築については、私が退職したころから特に状況が変わっていないようでした。自らの経験を踏まえ、「一度会社を離れたからこそ生まれた視点や気付きは、会社をより良くすることに役立てられるはず」との思いもありましたし、時代が変わる中、「これからはもっと柔軟な姿勢で人材確保の取り組みを進めるべき」との課題意識から、本格的にアルムナイコミュニティの企画を立ち上げました。2023年の夏ごろからグループ内への働き掛けを続け、この4月から本格運用の運びとなりました。
本コミュニティでは、アルムナイメンバーと緩くつながり続ける場として、公式サイトを新設した。
ポイント1:さまざまな企業とのつながりが生まれる
サイト内では名簿機能でアルムナイメンバーの現職が一覧でき、企業訪問や事業の相談を円滑に行える。
ポイント2:アルムナイ同士で気軽に情報交換できる
アルムナイや企業の担当社員とスタンプやメッセージのやり取りが可能。気軽な情報交換の場を提供。
ポイント3:アルムナイの近況を簡単に知ることができる
ワンクリックでメンバーに現在の状況を質問できるなど、気兼ねないコミュニケーションが続けられる。
本田:
このコミュニティには、アルムナイだけでなく社員も参加が可能としました。登録してくださったアルムナイには、週2回、グループの新着情報をメルマガ形式でお送りしていします。また、オンライン上でアルムナイ同士や社員と交流でき、年に2回予定しているリアルでの交流会にも参加いただけます。
元々パナソニックグループにいた仲間同士の交流によって、アルムナイだけではなく社員側の人脈づくりにも役立つコミュニティとなっています。
本田:
強調したいのは、決してアルムナイの復職を促すことが目的ではなく、あくまでも「パナソニックグループとアルムナイが、緩くつながる」ことを目指した場であるということです。
現状のお立場のまま、新たな出会い・人脈づくりのために参加いただくのもいいですし、単にパナソニックグループの今が知りたい、という興味で登録してくださるだけでもありがたい。グループとしては、オンライン、リアル、それぞれの交流により、多様なバックグラウンドを持つアルムナイの方々との協業・共創の機会が創出されることを期待しています。
もちろん、パナソニックグループで再び挑戦したいという意欲を持つ方には復職の支援も行います。
2024年6月現在、登録者は300人を超えました。交流会に来てくださったアルムナイからは「やっぱりパナソニックグループって、いい会社だよね」といったお声も多数頂戴しています。今後はさらに多くのアルムナイに登録していただき、よりイノベーティブな機会創出につながる交流の在り方を検討していきたいですね。
本田が既存の社内コミュニティであるOne Panasonicとタッグを組みながら、アルムナイコミュニティ新設の準備を進めていく中、2023年8月、退職者とのリアルな交流会が開催された。ここに参加していたのが、戸島 奈央(としま なお)だ。この交流会から数カ月後の2024年1月、戸島はパナソニック ホールディングス株式会社(以下、PHD)に復職することとなる。
戸島:
私は新卒で入社してから4年間、AV機器関連の事業場で人事を担当していました。その後、デジタルカメラの事業企画、テレビの販売・マーケティングサイドでのサプライチェーン管理などを務めた後、2018年ごろに人生・キャリアの目標について考え直す機会があり、改めて「組織と人に向き合いたい」という自らの思いに気付きました。そこで、組織の仕組みがあらかじめ整っている職場環境ではなく、生まれたての企業で一から組織づくり、人づくりに取り組んでみたいと思い、一念発起して退職し、2019年にスタートアップの世界に飛び込みました。
退職によって会社とのつながりは途切れてしまったのですが、本田さんと同様に、私もかつての先輩や同期など、仲間との個人的なやり取りは続いていました。そしてターニングポイントとなる2023年8月がやってきます。偶然、かつての職場の仲間に声を掛けてもらう形で、本田さんが推進するアルムナイの交流会に参加することになったのです。でも最初は、グループに戻る気持ちは正直、ありませんでした(笑)。
交流会は自由でオープンな雰囲気で、役員クラスの方たちとも会話させていただき、パナソニックグループって本当に温かい場所だな、と改めて思いました。
そこから復職への流れについては、私も「ご縁とタイミング」としか言いようがありません。当時、そろそろ大きなキャリアチェンジをしようという決意だけはしていたのですが、具体的な行き先は決めていませんでした。ですがこの会に参加した日を境に、かつての仲間たち複数人から、「パナソニックグループにカムバックしませんか?」とお声を掛けてもらうことが増えてきて……。私が交流会に参加したことを知らない人からもです。これはもう、何かのご縁かもしれない、と気持ちが動いたんですね。
私の人生の目標は「組織と人をテーマに、事業を通じて未来を変えていきたい」というもの。その目指したいゴールと、パナソニックグループから提示してもらえたポジション、グループが掲げるミッションが、カチッと重なったような感覚がありました。
戸島:
現在は、PHDの戦略人事部で将来の経営者の人材育成を担当しています。
かつてパナソニックを退職した時、私は自分の夢のために飛び立ちました。復職時も、表出の仕方こそ変わりましたが、自分の夢のために戻ってきました。期待に応えなければ……というプレッシャーもありますが、自分が望むキャリアを実現させてくれる、チャレンジできる環境を与えてくれる会社には感謝しています。
でもやっぱり、いざ戻ってみると、本田さんと同じように「もっとみんなで、こうなりたい、こうしなくては」と思う部分もたくさんあります。
私なりの経験を踏まえ、今、パナソニックグループの人たちに伝えたいのは、「もっと外から学ぼう」ということです。次にどうするかを悩んだ時、社内だけでなく、外に知恵を取りに行く、外からも学ぶという姿勢。これがまだまだ足りていないなと感じます。
もちろん社内にも多くの成功体験や知見が蓄積されてはいますが、世の中の今のベストプラクティスを学んでいく姿勢もぜひ持ちたいと思います。
アルムナイコミュニティの在り方は、とても良いと感じています。決してアルムナイの採用が主目的ではなく、旧知の人と再会できる場であったり、社員とアルムナイの出会いの場であったり、いろいろな目的で人々が集まって知見の混じり合い、学び合いが進むことが望ましいですね。
本田:
アルムナイの皆さんは、退職してもパナソニックという企業・ブランドが好きで、ずっと気になってしまう人たちではないかなと思っています。私自身の退職後もそうでしたし、ずっとパナソニックの家電製品を変わらず買っていました。かつて自分が所属した場所ですから、愛着があるわけです。
退職したら社外の人となり、関係なくなる……のではなく、社内も社外も大きく捉えるなら、それは一つの社会です。この社会に対して貢献できる人材、チャレンジしたい人材と、緩くつながりながら、社会全体への貢献度を高めていく、というのが当グループのアルムナイコミュニティの在り方です。
パナソニックグループは、グループ共通で目指す姿として経営基本方針の実践を、そしてグループ共通の人事戦略として「社員のウェルビーイング」を掲げています。
さらに2023年4月、経営基本方針の実践を目指すための行動指針としてPanasonic Leadership Principles(PLP)を打ち出すことで、一人ひとりがリーダーシップを発揮し、物と心が共に豊かな理想の社会の実現に向けて全員の知恵を結集することを目指しています。
「物をつくる前に人をつくる」という創業者・松下幸之助の言葉からも分かるように、当グループには人を大切にする文化・伝統があり、グループ人事戦略の中核を成す「衆知を集める」「企業は社会の公器」といった人的資本経営の前提となる考え方は、今回のアルムナイコミュニティでも強く意識しています。
社内外で「衆知を集める」ことを目指し、そこから得たもので、世の中にいかにアウトプットをしてグループの企業価値を高められるか。今後、アルムナイコミュニティが活性化することで、「多様な人財がそれぞれの力を最大限発揮できる最も働きがいのある会社」にしていきたいですね。
戸島:
「企業は社会の公器」という言葉は、単なる社内用語ではなく、むしろ社会全体にとって価値のある言葉として多くの方に認識されています。社外でそうした評価に触れて、改めてそのことに気付きました。会社に貢献できる人材を育てる、という視点だけではなく、「未来をこうしたい」という強い思いをもって社会に貢献できる人材を育てていく――私自身が手掛ける人材育成の業務の中でも大事なことだと思っています。
本田:
社外に出ていくことは、その人にとって大きく成長するチャンスであるとも言えるので、その生き方は応援したい。一方で、そんなアルムナイたちが再びここでチャレンジしたい、と思える会社にもしていきたい。そのための機会づくりをしていく中で、もう一度仲間になってくださる方がいてくだされば、うれしいです。そんな皆さんと共に新しい価値を創っていくことを楽しみにしています。
戸島:
挑戦の選択肢として再入社を考えている方は、出戻りだから、とか、肩身が狭いのでは、とか、そういったウェットな悩みとは無縁の場なので、心配しないでほしいですね。社外に出た経験は、ご自身が持つアドバンテージ。その独自の視点からの気付きや学びを伝えてもらいたい。パナソニックグループに集っている人たちの潜在パワーには、計り知れないものがあります。その力を解放すれば、企業価値はおのずと高まっていくはずです。迷っておられる方は、思い切って飛び込んでみてほしいなと思います。
今後もパナソニックグループでは、アルムナイを含め多様な「ひと」が、社会に貢献する人材としてイキイキと活躍し、やりがいを持って能力を発揮・成長できる機会を提供するべく、具体的なアクションと人事施策を推進していく。
記事の内容は発表時のものです。
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