もう1つ、海外のメンバーの入れ替わりによって、ブランドの知識が少し薄れつつあるという危機感を覚えたんですね。そこで、昨年末に「ブランド・イマーシブ・ツアー」といって、海外法人のブランド担当に日本に来てもらい、資生堂の汐留本社やグローバルイノベーションセンター、基幹工場である大阪の茨木工場、掛川の企業資料館などを回ってもらいました。しっかりとブランドについて読んで知ってもらう、また実際に見て体験して、自分のものにしてもらう、ということを意識的にやっています。非常に好評でして、これは今後も続けていきたいな、と考えています。
福澤:クレ・ド・ポー ボーテのブランドの世界観を維持・継承するためのシステムの確立に加えて、従業員一人ひとりのブランドリテラシーを高めることも非常に重要だと。
森井さんも日頃から従業員一人ひとりがブランドを意識することが大事だと言っていますが、今のお話を聞いていかがでしょうか。
森井:当社として参考にしないといけないこともありますし、非常に共感する部分もあります。例えば、「販売員の立ち居振る舞いそのものも、ブランドを構成する要素である」というお話は、なるほど、と思って伺っていました。結局、ブランドが語っていることを意識できているか否かは、お客様にどんな価値を提供しているのかを、自分で考えてできているかということだと思うんですよね。
先ほど申し上げたように、地球環境問題の解決に責務として取り組む。その結果として、お客様にウェルビーイング、「幸せ」を提供する。これが私たちのブランドの二本柱なんですが、それを頭で理解するだけでなく、自分の仕事の中で本当に涵養(かんよう)(※)できているのか、取り込んでいるのか。これは、書類を読めばできるというものではなくて、自分が本当にそう思って実行していかないと実現できないですよね。
「全ての要素がブランドを構成する」というお話に、非常にインスパイアされました。ぜひ参考にさせていただきます。
※涵養:自然に染み込むように、養成すること。無理のないようだんだんに養い作ること。