2023年8月10日

技術・研究開発 / トピックス

フィットネスの利用により脳と心の健康が良好に ~フィットネス種別により異なる心理側面に好影響を与える可能性も~

パナソニック ホールディングス株式会社 プロダクト解析センター(以下、プロダクト解析センター)は、一般社団法人ブレインインパクト(以下、ブレインインパクト)、及びセントラルスポーツ株式会社(以下、セントラルスポーツ)と、脳の健康に良いとされる運動習慣について実証および調査分析を行いました。フィットネスクラブ利用者の脳と心の状態を調べ、脳の健康状態が平均して4歳分若く、また脳の健康に関わる6つの心理状態が良好でした。さらに、定常的に実施するフィットネスの種類による心理状態への影響の違いに関する調査も実施し、ジムレッスンが根気を、プールレッスンが働きがいを、それぞれ高める可能性が示唆されました。

図1 フィットネス実証における結果の概要

【実証概要および調査結果】
◇参加者人数・属性
本実証では、セントラルスポーツが運営する「セントラルウェルネスクラブ24 葛西」の会員94名に参加いただきました。参加者の平均年齢は67.3歳であり、81%が女性でした。

◇フィットネスクラブ利用者の脳と心の状態
脳の健康状態を示すBHQ(※1)を顔映像から推定する「推定BHQ」計測器(プロダクト解析センターが開発)を用いて、「年齢に対してどのくらい脳の状態が健康か」を示す「ΔBHQ(※2)」の値を計測しました。フィットネスクラブ利用者のΔBHQの平均は+2.3ptであり、平均で約4歳分脳が若いことが示唆されました。
また、幸福感、働きがい、意欲、根気、好奇心、共感の脳との関係が明らかになっている心理指標について、アンケートにより7件法で主観評価してもらった結果を、ブレインインパクトが過去に取得した5,000件のデータと比較したところ、全ての項目で、フィットネスクラブ利用者のスコアが高いことが示されました。
これらのことから、フィットネスの利用が脳と心の健康向上・維持に貢献する可能性が示唆されました。

図2 実証参加者(n=94)のΔBHQ値(左図)と心の状態(右図)

◇フィットネスの種類と心理状態の関連
フィットネスが、利用者の心に与える影響を調べるため、定常的に実施しているフィットネスの種類と脳の健康に関連する6つの心理指標との関係を調べました。
その結果、フィットネスクラブ利用者のうち、ジムレッスンを受けている人は、受けていない人よりも根気が高く、共感のスコアが高い傾向にあり、プールレッスンを受けている人は、働きがいが高く、フリートレーニングとして、ジムを利用している人は、根気が高い傾向がありました。これらの結果から、フィットネスの種類によって、心の異なる側面に良い影響を及ぼす可能性が示唆されました。

図3 定常的に実施しているフィットネスの種類と心理スコアの関連

【今後の展開】
今後は、運動の実施と継続を促進するために、「推定BHQ」計測器と脳の健康維持・増進に効果的な18の行動指針「BHQ Actions(※3)」の18の指標をつないでサービス実証を支援する計画です。今回、その最初のトライアルとして、セントラルスポーツが提供しているフィットネスプログラムをBHQ Actionsと紐づけ、脳の健康維持・増進につながるフィットネスプログラムを抽出いたしました。例えば、ジム・スタジオレッスンでは継続的な運動を促すことから「エクササイズを習慣にしよう」、音楽にのって行うダンスプログラムがあることから「アートや音楽に挑戦しよう」の2つの行動指針が選択されます。これらの活動から得られたデータに基づいて、研究をさらに発展させていきます。

図4 セントラルスポーツのフィットネスプログラムとBHQ Actions

プロダクト解析センターは、今後もBHQ推定技術の開発とBHQ改善施策のご提案を通して、人々の脳の健康状態を向上し、ウェルビーイングなくらしの実現に貢献します。

【用語の説明】
※1.BHQ(Brain Healthcare Quotient):MRI計測により、脳の健康状態をわかりやすい数値で示す、国際標準に承認されている指標。脳の健康状態を数値で示すことで、病気になる前の健康なうちから、人々が脳の健康を管理できるように、内閣府ImPACT山川プログラムにて開発されました。
※2.ΔBHQ:ΔBHQは0だと平均並み、プラスだと脳が平均よりも健康、マイナスだと脳が不健康であることを示します。
※3.BHQ Actions(https://www.bi-lab.org/bhq-actions):脳科学の専門家であるBHQプロジェクトメンバーが中心となり、脳の健康維持や向上に有効であることが学術的に示されている生活習慣や心理特性に関する文献から、楽しく無理なく脳を健康にするための18の行動指針を抽出したものです

【ご参考】
◇「推定BHQ」計測器の概要
プロダクト解析センターが開発した「推定BHQ」計測器は、モニターに映し出された喜怒哀楽の表情を参加者にまねてもらい、その表情の変化からBHQを推定します。BHQはMRI計測による脳画像データから算出される指標ですが、本機器では、短時間で簡易にBHQの可視化体験を提供します。

図5「推定BHQ」計測器 表示画面

顔映像から脳の健康状態を見える化する「推定BHQ」計測器を開発~フィットネスクラブ利用者のモチベーションアップに貢献~
https://news.panasonic.com/jp/press/jn230801-2

◇BHQ Actionsの概要(https://www.bi-lab.org/bhq-actions
BHQ Actionsは、科学論文に基づき、脳の健康維持・向上に適した生活習慣などを、健康管理・運動・社会生活・食事・睡眠休息・学習・環境の7つのカテゴリから18個の行動指針として抽出したものです。

図6 BHQ Actions

【関連情報】
◇パナソニック ホールディングス株式会社 プロダクト解析センターについて
https://holdings.panasonic/jp/corporate/pac.html
今回開発した顔の表情による「推定BHQ」計測器について、スマホアプリなどでの簡易な計測の実現を行っていくと共に、企業や自治体などを対象に社員や住民の脳の健康管理に用いていただけるよう、商用化を行うことも検討しています。

◇一般社団法人ブレインインパクトについて(https://www.bi-lab.org/
脳の健康管理指標BHQに関連する各種取り組みについての国際標準化活動を推進すると共に、脳情報のデータベースを公的共用リソースとして提供しています。今回の研究成果を活用し、脳科学研究の振興及び研究成果の社会への還元をより一層進めていく予定です。

◇セントラルスポーツ株式会社について(https://www.central.co.jp/
民間フィットネス業界では初めて、独自に研究所を設立しており、今回の研究成果を含め、脳科学の知見も活用し、各クラブでの科学的根拠に基づいたプログラム開発・スポーツ指導に活かしていく予定です。

記事の内容は発表時のものです。
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