Panasonicの底力~成長への布石~

パナソニックの車載電池事業 磨き上げた「強み」で新たなフェーズへ

2021年8月 6日

特集

パナソニックの車載電池事業 磨き上げた「強み」で新たなフェーズへ

世界的に普及が進み、存在感を増す電気自動車(EV)。社会での浸透が加速する中、パナソニックの円筒形車載電池事業は2020年度、通年での黒字を達成した。これまでの道のりで独自の「強み」を磨き、業界をリードしてきたパナソニックの車載電池。いよいよ迎えた利益成長のフェーズで、さらなる進化を遂げようとしている。


チャレンジの積み重ねで新たなお役立ちを形に

もともとはノートPC用途として抜群の長持ち・軽量を誇っていたパナソニックの円筒形リチウムイオン電池。2000年代後半、それを車載用途に、という想定外のニーズを受けてパナソニックの円筒形リチウムイオン車載電池の開発はスタートした。用途が異なれば求められる性能も大きく変わってくる。長年様々な電池の生産を手掛けてきたパナソニックにとっても大きな挑戦だったが、環境意識の高まりを背景にEVが市場で普及する未来での活躍を見据え、2017年にはかつてない規模で北米に円筒形車載電池の生産拠点を完成させた。北米工場立ち上げの陣頭指揮にあたったエナジー技術・製造担当の渡邊は、収益化に結びつくまで表には見えづらい努力の積み重ねがあったことをよく知る一人だ。

写真:社長としてパナソニック エナジー ノースアメリカ立ち上げを指揮した、現・エナジー技術・製造担当の渡邊

社長としてパナソニック エナジー ノースアメリカ立ち上げを指揮した、現・エナジー技術・製造担当の渡邊

「日本のリチウムイオン電池生産拠点での知見を活かし北米の工場を設立しましたが、結果的に過去事例の3倍のスピードで5倍もの規模の拠点を立ち上げたことになります。しかも商品の特性上、極めて高い水準で求められる安全性や品質レベルをクリアすることは大前提として、文化や言語が異なる地でゼロから現地雇用を進め、生産ラインの構築はもちろん難しい作業のマニュアルをいかに徹底するか、スピード感を持ちつつも緻密に進める必要がありました。継続性をもって精度の高い電池を生産するには、どれも妥協できないポイント。諦めずコミュニケーションを重ね、日本で構築してきた緻密なモノづくりの体制の現地化、さらなる改善につぐ改善に取り組んできました。現地のリーダー、そして仲間との厚い信頼関係のもと、共に歩んできた成果が今に繋がっていると感じています」。

飽くなき挑戦 高エネルギー密度と環境性能でリード

写真:左が現行最新の2170。右がノートPCにも採用されている1865

左が現行最新の2170。右がノートPCにも採用されている1865

現在手掛けている円筒形車載電池は2タイプ。1865、2170だ。前半2桁の数字は直径(18mm/21mm)、後半2桁は高さ(65mm/70mm)を表している。最新モデルは、現時点で世界最高レベルのエネルギー密度を誇る。
高エネルギー密度化における技術開発では、より多く電気を蓄えられるよう正極と負極の活物質(電気をためる役割を担う材料)の化学的組成などを改善できるかがポイントとなる。もう一つ、限られたサイズの中に出来るだけ活物質の量をいかに増やすかという点も重要だ。この2点において、パナソニックは独自の技術開発で課題をブレイクスルーし、随一の性能進化を実現してきた。

パナソニックの特長としてもう一つ、リチウムイオン電池の材料として現状は不可欠とされる希少金属のコバルトの使用量を、大幅に削減することに成功しているという側面がある。渡邊は言う。「1980年代にリチウムイオン電池の研究が始まりましたが、当時から希少金属への対策は課題認識として念頭にありました。車載用途を想定するとコバルトの使用量を減らすというのが当初からの目標でした」。コバルトは結晶構造を安定させる特性があり、電池の熱安定性に繋がる重要な材料だ。パナソニックが採用しているNCA(※1)と呼ばれるタイプの正極活物質は、同じくコバルトを使用するNCM(※2)と呼ばれるタイプに比べ、コバルトの使用量が少ないという特長がある。パナソニックはさらに代替元素や表面処理などで工夫を重ねコバルトが占める割合を段階的に減少し続け、現在では使用率5%未満に。これはパナソニックの円筒形車載電池の大きな強みとなっている。また、北米ではリサイクル事業を行うスタートアップ企業と提携、コバルトなど材料を再利用するスキームの構築にも意欲的に取り組んでいる。環境に優しいリチウム採掘・製造方法の実現に向け、これまでの知見をもとに、採掘を担う企業へ品質評価などで協働する活動もスタートした。
※1 NCA:リチウムイオン電池用正極材の種類の一つ。ニッケル酸リチウム(ニッケル・コバルト・アルミニウム)を含む。
※2 NCM:リチウムイオン電池用正極材の種類の一つ。三元系(ニッケル・コバルト・マンガン)を含む。

これらエネルギー密度の向上とコバルト使用量削減という、パナソニックだからこそ実現できる2つのポイントを両立させ、さらに進化した新たな電池は、2020年度に全てのラインに導入済みだ。

培ってきた「強み」で、さらなる進化へ

写真:左から1865、2170、そして次世代大型の円筒形車載電池のモック

左から1865、2170、そして次世代大型の円筒形車載電池のモック

今後、市場で期待されている進化のポイントの一つはさらなる大容量化だろう。市場導入が待望されているのは、筒径を一気に2倍以上に拡大した「4680」。パナソニックでは開発を順調に進めており、今後まず日本で検証ラインを設置し安全性などの性能を検証していく。容量が大きくなれば、同じ性能の車体一台あたりに使用する電池の本数を減らすことができる。また、車体に搭載する際に必要な部品点数を減らせるように設計されているため溶接個所数を少なくでき、車体全体でのコストパフォーマンス良化に貢献する。一方、製造面では新たな設計が必要となることに加え、サイズが大きくなるほどより高いレベルでの安全性担保が求められる。高い安全性を維持しながら、これほどの大型化の実現が可能となる背景には、原材料調達を含め、各工程で徹底した品質管理、より大きなサイズの電極を加工する製造技術など、他社が容易に真似できないノウハウの蓄積がある。今回の進化で、世界中で高まる需要を背景に、パナソニックの車載電池に対する注目がさらに高まるのは間違いなさそうだ。
パナソニックの車載電池の進化は、あくまでお客様起点での「最適な価値」を追求した先にある。大容量化もその一つ。業界で先行して磨いてきた保有技術を競争力の源泉として、エネルギー密度や環境性能といった強みを活かし、例えば長距離走行や街乗りなど使用シーンやニーズに応じた提案をしていけることこそが、パナソニックの真の強さだ。

写真:4次世代大型の円筒形車載電池のモックと現行最新モデル(2170)の円筒径の違い。

次世代大型の円筒形車載電池のモックと現行最新モデル(2170)の円筒径の違い。大幅な容量アップを遂げようとしているのがわかる

電池事業で社会課題解決に貢献

2021年5月、グループの方向性として「地球環境問題の解決に貢献」を打ち出したパナソニックにとって、車載電池事業の果たす役割は単にビジネス面だけに留まらない。サスティナブルモビリティへの貢献という大きな意義を持つ重要な事業の一つだ。
渡邊は語る。「車両の電動化はモビリティ動力源の多様化を推進する有効な手段。より良い車載電池を提供することで、その実現に全力で取り組んでいきたい。テクノロジーの進化で地球環境問題の解決にソリューションを提供することにチャレンジしていきます」。

2021年5月にCEOの楠見が発信したエナジー事業での取り組みの方向性(抜粋)

2021年5月にCEOの楠見が発信したエナジー事業での取り組みの方向性(抜粋)

来る2022年4月には、持株会社制への移行に伴い、エナジー事業の新会社「パナソニック エナジー株式会社」を設立予定、今後の経営の柱となる事業と位置づけている。グループ全体でカーボンニュートラル(脱炭素)を目指し、さらにその先の「創るエネルギーが使うエネルギーを超える」ことに挑戦するパナソニック。カーボンニュートラルの流れの中で車載電池事業は着実に存在感を高めており、日米に加え、欧州での事業拡大にも着手している。さらなる技術革新で地球環境への負担を抑えるキーデバイスとして進化を加速し、今後ますます裾野が広がるEVの普及フェーズへ貢献を拡げていくはずだ。

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パナソニックの電池技術及び製造技術の進化(英語)

発表年月
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