パナソニックグループコミュニケーションマガジン
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2025.01.24
CES 2025 オープニングキーノート
「地球環境問題の解決」「AIを活用したビジネスへの変革」への揺るぎない意志を表明

パナソニックグループは、米国・ラスベガスで1月7日から10日まで開催された、世界最大級の先端技術見本市「CES 2025」に出展しました。初日のオープニングキーノート(開幕基調講演)では、グループCEOの楠見雄規が、グループの目指す方向性を発信しました。本記事ではその内容と、楠見が込めた思いを紹介します。

CES 2025 オープニングキーノートの様子(画像クリックで動画が再生します)

Panasonic GREEN IMPACT 実現への思いは不変

パナソニックグループのCES 2025への出展テーマは、「Well into the future」。これは、当社グループの使命である「物と心が共に豊かな理想の社会」を実現するために、各分野で挑戦を続けるパートナーと、より良い未来に向けた新たな変革のうねりを起こす――という思いを込めた言葉です。

パナソニックグループが目指す「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現は、気候変動や資源の枯渇といった地球環境問題を食い止めることが、大前提となります。「地球環境問題の解決」を喫緊の最優先事項と位置付ける理由は、まさにそこにあります。このため楠見はキーノートで、「私たちの子や孫、未来の世代が、健全な地球環境の下で暮らせるよう、全力を尽くします」と、真っ先に強調したのです。

具体事例の一つとして挙げたのは、純水素型燃料電池と太陽電池、蓄電池を高度なエネルギーマネジメントシステムで連携・制御して、電力需要の変化や気象状況に追随しながら効率的に再生可能エネルギーを供給する「Panasonic HX」です。日本の草津拠点や英国にある製造拠点に加えて、今春にはドイツ・ミュンヘンのオフィスビルにも導入を予定しています。

また、ルームエアコンと熱交換気ユニット、DCモーター換気扇を用いた搬送ファンを組み合わせた、米国の住宅向け全館空調システム「OASYS」を紹介。従来の空調方式よりも50%以上*1の省エネを実現する、同システムの特長を説明しました。

*1: 従来空調方式は、住宅性能IECC2015相当、空調…ヒートポンプ式冷房(SEER2 14.2)+ガス式暖房機器(80%AFUE)の消費エネルギー。OASYSは、住宅性能OASYS要求仕様相当、空調…冷暖房共に当社ルームエアコン+搬送ファン(ガスによるエネルギー使用量を電気エネルギーに変換して試算)の消費エネルギー。

そして近年、CO2削減への貢献が注目されているのが、EV(電気自動車)です。その普及を後押しする車載用円筒形リチウムイオン電池については、これまでに累計で約150億セル、EV台数換算で300万台分以上を供給してきた実績に加え、さらに世界最高のエネルギー密度を実現した*22170セルや、間もなく量産を開始する高容量の4680セル、主要カーメーカーとの協業などを紹介しました。さらに、米国のRedwood Materials社と進めているリサイクル正極材・銅箔の調達についても言及しました。同社 CEOであるJB・ストローベル氏も登場して、「パナソニックは、テクノロジーとサステナビリティへのコミットメントへの両面で、他にないリーダーです」と、エールを送りました。


*2: 2025年1月8日現在、パナソニック エナジー株式会社調べ

Panasonic HXやOASYS、車載用円筒形リチウムイオン電池事業のキーパーソンも、後日紹介予定です。

「OASYS」を紹介する映像

Redwood Materials社 CEO  JB・ストローベル氏(右)

引き続き楠見は、「パナソニックグループの長期環境ビジョン Panasonic GREEN IMPACTのもと、2050年に3億トン以上*3のCO2削減インパクトを目指す上で、お客様・社会への削減貢献量は大きな位置付けを占めています」と強調しました。削減貢献量とは、お客様が使⽤している製品やサービスを、環境に配慮した自社の製品・サービスに置き換えることで、バリューチェーン全体でCO2排出をどのくらい回避できるかを示す数値です。パナソニックグループは幅広い技術開発・イノベーションを通じて、2030年度には9,300万トン*4の削減貢献を目標としています。

ただし、地球環境問題を解決するためには、パナソニックグループだけでなく社会全体が、脱炭素化に貢献する技術開発とイノベーションを加速することが不可欠です。加えて、こうした取り組みを実践する企業を正しく評価する指標として、削減貢献量が活用される必要があります。

パナソニックグループは、これまでも政府や産業界、金融業界などと連携しながら、削減貢献量の認知拡大・算出方法の標準化に向けた議論や取り組みを重ねてきました。こうした取り組みを共に行ってきた団体の一つが、230以上の企業が参加するWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)です。

WBCSD プレジデント・CEO ピーター・バッカ―氏

キーノートには、同団体のプレジデント・CEOであるピーター・バッカ―氏も登壇。同氏は、サステナビリティを経済成長と環境レジリエンス*5の基盤とするために、両者で力を合わせる意志を表明しました。さらに、「今後も『物と心が共に豊かな理想の社会』の実現を両者共通の使命としながら、社会課題に立ち向かいましょう」とのメッセージが送られました。

*3: 削減貢献量の排出係数は自社努力量を適確に測るため2020年基準で固定
*4: Panasonic GREEN IMPACT策定時(2020年度)の排出係数(IEA2021)で算出
*5: 気候変動や自然災害などの環境課題に対し、社会や生態系が適応、回復する能力。

Panasonic Go: AI技術の進化を自社の力に

引き続き楠見は、グローバルな企業成長イニシアティブ(先駆的な取り組み)として、「Panasonic Go」を発表しました。これは、パナソニックグループがこれまで培ってきた知見や技術、ハードウェアを最大限に生かしながら、AIを活用したビジネスへの変革を進めるものです。「Go」には「グループでデジタル変革を大きく前進(Go)させる」「250年計画*6の第5節(2032~2056年)に向かう」という二つの意味を込めています。

*6: 1932年5月5日の第1回創業記念式で、創業者である松下幸之助が発表。「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現という使命を、25年を1節とし、10節繰り返して達成する事業計画。

人が既存の事実に基づいて何かを生み出そうとしたとき、その根拠となるさまざまな事実を探そうとしますが、そのために多くの時間を費やしてしまったり、場合によっては見落としたりすることもあります。しかしながら、生成AIがさらに高度に進化し、ハルシネーション*7が減少すれば、作業の効率や正確さが飛躍的に高まることが期待できます。この点を踏まえ楠見は、すさまじい勢いで進化するAI技術を活用しながら、事業の効率と幅を進化・変革させること、さらにはお客様とのタッチポイントや提供するソリューションでの活用を拡大することが、パナソニックグループにとって必須と考えているのです。


*7: 学習データの誤りや不完全性、文脈を重視した過度の推測などにより、実際には存在しない、あるいは間違った情報を生成する現象。

さらに楠見は、Panasonic Goを推進する上でのポイントは二つあると指摘します。その一つは、AIのオーケストレーション*8とエージェント*9を自社で開発するノウハウを、いち早く確立することです。もう一つは、たとえAIであっても、お客様がパナソニックグループに感じていただいている信頼や企業倫理は、絶対に担保することです。そのために、パナソニックグループとしては一つのLLM(大規模言語モデル)だけを使うのではなく、SLM(小規模言語モデル)なども組み合わせることで他との差別化を図り、お客様に満足いただける情報の提供能力を高めることが必要なのです。


*8: 複数のAIモデルやアルゴリズムを連携させ、統合的に機能させる技術や手法。
*9: 特定の目標を達成するために、必要なタスクを自律的に作成し、計画的に実行するAIシステム。

Blue Yonder  CSO ウェイン・ウージー

キーノートで楠見は、パナソニックグループがこれまでに、サプライチェーンソリューションプロバイダーであるBlue Yonderや、グループのAI活用拡大に向けたプラットフォーム開発など、北米で100億ドル以上を投資してきたことにも言及、これらを基にPanasonic Goを推進することを宣言しました。パナソニックグループのサプライチェーン変革に向けた導入も推進しているBlue Yonderのソリューションは、Panasonic Goで中心的な役割を期待される事業の一つ。現在、同社のソリューションは、1日当たり200億件以上の予測データを取り扱っていますが、中でも需要予測にますます磨きをかけることがポイントと、楠見は考えています。 

その後、Blue YonderのCSO(Chief Strategy Officer:最高戦略責任者)であるウェイン・ウージーも登場。需要予測AIと生成AIを組み合わせることでデータを有効活用し、自律的なサプライチェーンを構築している点を強調した上で、「Panasonic Goで、グローバルのサプライチェーンに、より安全で持続可能なソリューションを提供し続けるため、AI-Drivenのイノベーションを創出していきます」と、力強く表明しました。

引き続き、パナソニックホールディングス 執行役員でPanasonic Well 本部長であるヨーキー松岡(松岡陽子)が、アプリを通して家族をサポートする包括的なデジタルファミリーウェルネスサービス「Umi」を、米国で提供開始予定であることを紹介しました。

デジタルファミリーウェルネスサービス「Umi」の発表

Anthropic社 共同創始者・社長 ダニエラ・アモデイ氏

また、Panasonic Goの推進に当たっては、各事業領域でパートナーと共創活動を行うことが欠かせません。楠見はキーノートで、AI倫理を重視するパナソニックグループと同様に、「AIは安全で、理解可能であり、人間の価値観と整合しているように設計されるべき」との考え方を持つ、米国・AI研究企業のAnthropic社とのグローバルな戦略的提携についても言及しています。

Panasonic WellやUmi、Anthropic社との提携を含む松岡のスピーチ内容は、次週に詳しく紹介予定です。

その上で楠見は、「2035年までに、AIを活用したハードウェアやソフトウェア事業、ソリューション事業をグループの売り上げ全体の約30%の規模にすることを目指します」と宣言しました。こうした非常に高い目標の設定に踏み切ったのは、AI技術の進化を捉え、自分たちの力にしない限り、パナソニックグループは「化石」になってしまう――こうした強い思いの表れと言えます。

楠見は「持続可能な地球環境の実現に向けたパナソニックグループの決意は、決して揺らぐことはありません。加えて、AIを活用したPanasonic Goで変革をけん引することで、社会により良いインパクトをもたらしていきます」と、キーノートを締めくくりました。パナソニックグループは今後も、健康・快適・安全なくらしの実現や社会の持続可能性の向上に貢献するため、進化し続ける革新的なテクノロジーを最適に活用しながら、「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現を目指していきます。

記事の内容は公開時のものです。
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