2024年10月30日
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写真中央で周囲を囲む中学生を鼓舞する男性、糸見 涼介氏をご存じだろうか。はや20代で陸上競技のバヌアツ代表監督になり、2019年から海外で陸上競技を指導する「IOCヤング・リーダー」だ。「IOCヤング・リーダーズ・プログラム」は、IOC(※)の協力の下、スポーツやスポーツ関連の活動を通じて次世代リーダーを育成支援するプログラムで、世界中から25人のみがリーダーに選ばれる狭き門。選出されたメンバーは、4年間の任期中、プロジェクトに必要な学習や実践の機会提供、資金援助などの支援を受けて活動している。2017年の同プログラム創設以来、パナソニックグループはファウンディングパートナーとして、インターンシップや研修、ビデオ制作、主催イベントへの参画支援など、さまざまな機会を通じて次世代リーダーの可能性を最大限に引き出せるようサポートしている。本記事では糸見さんがIOCやパナソニックと共に若年層世代を巻き込む活動を計画・実行し、社会貢献を行う活動の一端を紹介する。
※国際オリンピック委員会(International Olympic Committee)の略称
世界中からわずか25人のみが選出されるIOCヤング・リーダーに、日本人で初めて選出された糸見さん。
「現在はJICA(※)海外協力隊として派遣されたバヌアツ共和国で、代表監督として陸上競技を指導するだけでなく、IOCヤング・リーダーとしてスポーツを通じた社会貢献事業『Yasur Volcano Run』を構想、実現に向けて動き出しています。収入源が限られ、女性の働く機会が限定されている離島にビジネスチャンスを生み、地域が自立して経済を回せる仕組みをつくろうとしています。豊かな自然を活用したヤスール火山でのトレイルラン大会は、同国のサステナブルツーリズム活性化に貢献できます」
※独立行政法人国際協力機構(Japan International Cooperation Agency)の略称、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行う
海外で指導者として活躍するだけでなく、同国の雇用拡大やツーリズムの支援も構想している糸見さんの、現在の活動につながる経緯について聞いた。
「中学生の頃から、いつも自分の夢や理想に向かって真っすぐに走ってきました。その軸になったのは陸上競技と海外留学です。中学生の頃に留学を経験したことで、海外で働くことに興味を抱きました。JICA青年海外協力隊では途上国に陸上競技の指導者を派遣していることを知り、『挑戦してみたい』という気持ちが湧いてきました。中学と高校で駅伝や陸上競技を経験し、楽しさも挫折も味わった競技者としての経験を生かせると思ったこと、そしてワクワクする気持ちに忠実に従って行動に移した結果、派遣されたのがバヌアツ共和国だったんです」
噴火口を目の当たりにできるヤスール火山など、秘境としても有名な南半球の小さな途上国バヌアツ。糸見さんが渡航した当時は陸上競技人口が少なく、競技レベルもあまり高くなかったこともあり、糸見さんは日本で培った陸上スキルをすぐ指導に生かすことができた。慣れない文化に戸惑いながらもコーチとして奮闘し、「東京五輪2020オリンピック競技大会の時にバヌアツの代表コーチとして凱旋」という夢も描き始めた矢先に見舞われた、コロナ渦。帰国を余儀なくされたが、ボランティアスタッフとして参加した同オリンピックで得られた熱狂は、「スポーツを通じた社会への貢献」という新たな夢へと結び付く。イギリスの大学院への進学を決め、SDGsの概念を生み出した学問の一つとされる開発学を専攻し、スポーツを通じて持続可能な未来の社会の実現につなげるべく学び始めたのだ。
「大学院では、SDGsを中心に地球規模の課題から身近な社会貢献まで学びました。ただ、SDGsをスポーツを通じて実現しようという考えを持つ同志は、周りにはいませんでした。2019年からバヌアツでの代表監督を務めさせていただいていますが、スポーツを通じた社会貢献ビジネスの起業によるSDGsの実現という構想は、心の中でくすぶったまま。そうして出会ったのが、『IOCヤング・リーダーズ・プログラム』なんです。その魅力は、IOCやファウンディングパートナーであるパナソニックグループからのサポートが得られる点。同プログラムへの応募のために受けた研修コースでは、同じ志を持つ仲間が何千人といることを知り、これはまたとないチャンスだと確信しました。
IOCヤング・リーダーは、専門知識と圧倒的な熱量を持つ世界中から選ばれたメンバーのみで構成されています。オリンピアンなど、競技者としての高いスキルを持つメンバーもいれば、スポーツをアカデミックな視点から捉えるメンバーもいますが、全員に共通するのは、スポーツやスポーツに関連した起業活動を通じて社会貢献を行う志です。選出後に重ねたセッションでも、スポーツを通じた社会貢献ビジネスを志す他のメンバーの存在が、モチベーションをさらに向上させてくれましたし、構想だけで終わらず、実現させられそうな感じがしています」
糸見さんは、2023年12月18日にIOCヤング・リーダーズ・プログラムとパナソニックグループによる子どもたちを対象とした映像制作支援プログラム「キッド・ウィットネス・ニュース(KWN)」のコラボイベント「IOC Young Leaders × Panasonic KWN “SDGs Online event series”」に参加。場所は、糸見さんの出身校でもある三重県桑名市立長島中学校だ。糸見さんは未来を担う世代へ、世界を舞台に取り組んでいる自身の活動を紹介し、SDGsに基づいた考え方やグローバルマインドセット、社会課題へ向き合う思いを語った。
「いまの私には、『Yasur Volcano Run』というスポーツ事業を通じて社会貢献を行う夢があります。バヌアツにある小さな離島、タンナ島のヤスール火山という豊かな自然を活用してトレイルラン大会を開催することで、雇用の創出とツーリズムの活性化を目指しているんです。
これらを実現する上で常に意識しているのは、『競技力の前に、人間力を鍛えろ』という言葉。高校生の時にいつも教えられたものですが、指導者として競技者に教えるというよりも、いつも自分で自分に言い聞かせている言葉です。バヌアツは時間を守るという感覚が乏しいので、最初は指導者として『オンタイムで集合しろ』と指示をしても誰も来てくれませんでした。でも、いつも自分がオンタイムで動いていたら、いつしか競技者もオンタイムで徐々に集まるようになったんです。無理強いではなく自らが見本を示すことで、賛同するものが集まるんだと学びました。
また、パナソニックグループの創業者である松下幸之助さんの『松下電器は、ものをつくる前に人をつくるところである』という言葉からも、少なからず影響を受けています。SDGsの実現に向けてスポーツを通じた社会貢献ビジネスを志す上では、『ビジネスをつくる、のではなく、それらを動かす人をつくる』ことが、持続可能なビジネスへ発展していくためには肝要なのです。『もの』を『ビジネス』に置き換えると、分かってもらいやすいと思います。この意識こそが、ひいてはSDGsという概念をも実現していくと思うのです。
最も大事なのは、続けられること。続けられない努力で夢を実現するは難しいですよね。努力を継続するための『ワクワク』を持ち続けることが、現在の私を形成しています。次世代の子どもたちにはワクワクしながら挑戦する過程を楽しんでほしい。私をロールモデルとして、そんなことが今日話を聞いてくれた中学生に伝わるといいなと思っています」
もしかしたら、2024オリンピック競技大会にバヌアツ代表監督として参加できるかもしれない――。糸見さんの目は、常に先を見ている。他の人の意見に左右されることなく、心の中の自分の声に正直に。夢の実現への第一歩を踏み出し、スポーツを通じた社会貢献の実現に向けて今日もワクワクしながら歩み続ける糸見さん。パナソニックグループは、このような志を持って社会課題の解決や社会貢献に挑むIOCヤング・リーダーズと共に、次世代をエンパワーメントすることで、持続可能な社会の「幸せ」を生みだす「チカラ」であり続けていく。
記事の内容は発表時のものです。
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