2024年10月1日
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【更新】2023年10月20日 一部画像の掲載を終了しました
パナソニックグループは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を核とするグループ横断の取り組みを「Panasonic Transformation(PX)」と称し、事業戦略の基礎となる業務・プロセス・カルチャーそのものの変革を2021年5月から進めている。経営基盤強化のための重要戦略と位置付ける本プロジェクトの現在地について、2023年7月、パナソニック ホールディングス株式会社 執行役員 グループCIO(チーフ・インフォメーション・オフィサー)の玉置 肇(たまおき はじめ)が語った。
玉置:PXは、パナソニックグループを再び成長軌道に乗せていくための企業変革プロジェクトです。
PXはDXも包含しています。DXと呼ばずPXと呼ぶのは、ITだけに留まらず、文字通り「パナソニックグループ全体を変えていく」という意味を込めているからです。
下図フレームワークの一番上の「ポートフォリオ・事業戦略」は、グループCEOの楠見が発信する全社の戦略です。PXでは、そこから下の領域を変革していきます。
玉置:足元の意思決定、業務のプロセスを変えていく。留意すべきは、情報システムを変えることだけに注力してはいけないということです。システムが関わる業務プロセス、社内の慣習、契約形態の在り方――それら全てに手を入れていく。これをグループ全体で実施しています。
また、量販店・代理店・官公庁など社外のステークホルダーとの関係を大切にする。このことを改めて意識して日々の業務に取り組んでいます。
玉置:これは、同フレームワークの土台に当たる部分です。
グループの企業風土をより良くしていく――具体的には、発言がしやすい、言うべきことが言い合える会社であることを目指します。ダイバーシティの促進や、マインドセット・働き方を変えていくことにも注力します。
玉置:2022年夏にもPXの進捗についてお伝えしました。その時点では、情報システム部門の使命を刷新したことなどを紹介しました。そこから1年が経過した今、PXには大きく二つの変化が起こっています。
一つ目は、PXがすでに情報システム部門の手を離れた活動になっているということです。
二つ目は、最高意思決定会議である「グループ経営会議」のメンバーによって、2023年3月にPXにまつわる「7つの原則」が策定されたということです。
PXの推進に当たっては、全てが順風満帆というわけではなく、経営幹部の中からも賛成、反対、さまざまな意見が出されていました。そこで2023年3月に全役員が集って、2日間にわたる会議を実施し、PXについて徹底的に討議しました。経営陣の「覚悟」を共有するため、会議の様子は経営責任者層に向けてオンラインで生配信しました。
玉置:この場で役員一人ひとりがPXを自分ごととして捉え、PXによってパナソニックグループをいかに変えていくのかを議論し、最終的に取り決めたのが「7つの原則」です。
役員らが自ら紡ぎ出した言葉をそのまま残し、パナソニックグループの経営陣としての「約束」として発表しました。
玉置:1番と3番はデータにまつわる話です。
パナソニックグループはお客様の貴重なデータを多く持っている一方で、現在は事業会社をまたがっての利活用はできていません。このデータの価値を改めて競合他社との差別化要素として捉え、お客様を誰よりも理解する手掛かりとしていきます。
1)グループの重要な経営資源であるデータを、ステークホルダーの「幸せの、チカラに。」つなぐ 3)「お客様を誰よりも理解する会社」になるために、顧客接点の多様性を活かし、データを徹底利活用する |
玉置:2番では、役員自身がPXを自分ごととして受け止め、逃げないことを明記しています。ここにあるように、2023年10月から、各事業会社で「プロセスオーナー」を任命し、各業務の最適化を進め、成果を可視化していきます。
2)経営者がデータの利活用と業務プロセスに責任を持つ |
玉置:4番、5番、6番はプロセスについてです。「プロセスは常に進化させる」「現場に任せきりにするのではなく、役員も自ら動きます」と宣言しました。
4)業務プロセスを絶えず進化させ競争力の源泉とする 5)システム化の前に、現場の業務プロセスの現状を把握し、標準化の範囲を明確にする 6)標準化の定義を明確にし、経営者がコミットする |
玉置:7番は、例えば「ChatGPTを扱える人材を創る」ことを意図しています。データとテクノロジーを利活用できる人材を増やし、支援していきます。
7)現場も含めたグループ内で、データ・テクノロジーを利活用できる人材を増やし支援する |
玉置:実は私自身、会議に先駆けて、こうした約束事のベースとして使えそうな文章を用意していました。ですがそれらは、ほぼ使われないまま終わりました。私の元案には「IT」「デジタル」という言葉が幾つもあったのですが、「7つの原則」にそれらは一つも使われていません。かえってそれで良かったと思っています。役員全員がPXを自分たちの言葉でまとめることができたのは、グループとして大きな成果と言えます。
この原則を受け、新年度となる2023年4月から各事業会社でPXの具体的な変革を推進中だ。
パナソニック インダストリー株式会社では、7つの原則を社長自らの言葉で社員に提示(画像左)。
パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社では、イラストを活用するなど、自社の社員がより共感しやすい見せ方での咀嚼(そしゃく)・浸透を図っている(画像右)。
パナソニック コネクト株式会社(以下、コネクト社)では、原則の7番に当たる「ChatGPT」を扱える人材を増やすべく、当時「Connect-GPT」と名付けたAIアシスタントサービスをグループに先駆けて導入した。
玉置:コネクト社の先行導入で得たノウハウを生かした全社版「PX-AI」を、この4月から国内約9万人の社員を対象に提供開始しました。導入開始後、3カ月で3万人以上が利用し、270万アクセス、約70万回のプロンプトが書き込まれました。リスクを恐れず、失敗を共有し、学びながらどんどん使っていってもらうというスタンスでトライアルを重ね、すでに複数業務で生産性向上の成果が生まれています。8月からは「PX-AI」のAIエンジンにOpenAI(米国)の最新モデル「GPT-4」を導入し、AI機能を強化。グローバル規模での導入も推進中です。
生成AIについては、社内での活用に留まらず、ゆくゆくは私たちの製品に採用していくことも視野に入れています。
玉置:PXが情報システム部門(以下、情シス)だけの課題ではなくなったとお伝えしましたが、とはいえ、情シスとしても変化していかなければなりません。現在、情シスには4,000人の社員がおり、協力会社も含めるとグローバル規模で1万人ものスタッフが関わっています。この情シスのプロセス、カルチャーも変えていきます。
例えば「ITの変革」では、以下4つのカテゴリーに重点を置き、およそ190のプロジェクトを立ち上げて変革を推進中だ。
玉置:PXによってプロセスそのものの変革を実施していくことで、お客様にお届けする技術・製品・サービスでもこれまでと違うご提案が可能となります。
お客様の「くらし」と「しごと」を幸せにすることが真のDXであり、PXが目指すゴールもここにあります。
ロボット(※)による公道での自動販売
東京・丸の内でロボットによるペットボトル飲料などの販売実証実験を実施。2023年8月から本稼働。通常は自動運転で、必要に応じて遠隔操作を行う。
※完全遠隔監視・操作型自動搬送ロボット
自動計量・リモート炊飯
炊飯器とスマートフォンが連動し、出先から炊飯設定が可能に。このほか、エアコン、冷蔵庫、テレビ、ブルーレイ/DVDレコーダーなど、スマホと連動したIoT家電の技術・サービスを開発・提供中。
現在、パナソニックグループが保有するデータプラットフォーム「デジタルプラットフォーム」には約800万台の家電がつながっている。
ネットワークカメラ
AIによる動体検知・自動追尾を実現。
Air to Water(ヒートポンプ式温水暖房機)
空調機のIoT故障予知・保守警告を行う。
空間見える化ソリューション
オフィスや集客施設において、管理が難しい「混雑度」と「空気環境」を見える化し、最適な施設運営を実現。本ソリューションも従来の業務プロセスや情報システムを刷新したことにより提供可能となった。
材料開発をAIで自動化~スマートラボ
大阪府門真市にあるパナソニック インダストリー株式会社の「スマートラボ」に、材料開発のための完全自動実験室を設置。東京からも遠隔操作でラボを活用している。
社内で得た知見をITサービスとして外販
パナソニックグループは、以下のようなIT事業に特化した会社を多く持っている。PXの取り組みで培ったノウハウ、知見を生かし、外販にも役立てていく。
玉置:今年6月には、日経コンピュータ主催の「IT Japan Award 2023」にて、PXをはじめとするグループの変革への取り組みが評価され、最優秀賞となるグランプリを受賞しました。しかし、PXの取り組みは何もかもがスムーズに進んでいくことばかりではありません。さまざまな課題が出てくる中、諦めずにトライし続ける、変わり続ける――今回は、その覚悟を表明したということです。今後も社員のスキル向上に向けたフォローなど、グループ全体での底上げを続けていきます。
PXが目指す最終ゴールは、「お客様へのお役立ち」です。
グループのパーパスである、お客様にとっての「幸せの、チカラに。」なることを実現するための施策を実施していく。そのために変えねばならないところはグループ全体で変えていきます。10年とは言わず、この先の数年単位で目に見える結果をお届けできるように挑戦を続けていきます。
記事の内容は発表時のものです。
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