1階層目は「ITの変革」だ。
「システムだけを刷新しても3年で陳腐化する。もっと土台から変えていかないと変革にはならない。そのために、IT改革を推進しながら、より根本的な『オペレーティング・モデルの変革』と『カルチャーの変革』も進めていきます」。
「ITの変革」ポイントは4つ。一つ目として挙げるのが「レガシーからの脱却(モダナイゼーション)」だ。パナソニックグループには大きなものだけでも1,200、すべてを入れると2,000に近いITシステムが稼働している。これは部分最適を長年繰り返してきた結果ともいえる。「プロセスから見直して簡素化し、早急にシステムを近代化していっているところです」。
二つ目は「クラウド活用(ベストハイブリッド)」。オンプレミスも効果的に使いながら、パブリッククラウドの最大限活用を目指す。
三つ目は「データドリブン基盤の構築」。グループ横断でのデータ活用基盤を整備し、リアルタイムデータによる未来予測型経営を目指す。
そして四つ目が「SCM(サプライチェーンマネジメント)の最適化」。ビジネスモデルごとにプロセスを見直し、SCM最適化に必要最低限のマスターデータ統合を行う。
「2022年度~2024年度の3年間で1,240億円の投資をしていく。事業会社ごとの競争力強化を実現しながら、グループ共通でスケールメリットのある150テーマをピックアップして推進していきます」。
2階層目は「オペレーティング・モデルの変革」。IT部門は、協力会社の方まで含めると9,000人規模が関わっており、商流も複雑になっている。このITのサプライチェーン自体を改革しようというものだ。
いくつかのプランのうち、玉置はパナソニックISの価値の最大化とアジャイル(システム開発用語としては、大きな単位でシステムを区切ることなく、小単位で実装とテストを繰り返して開発を進めること)変革について述べた。
「IT中核会社のパナソニックISでは、外部の企業に対してもお役立ちできる割合を増やしていこうとしています。また、働き方そのものをアジャイル型に変え、経営やビジネスの高速化を牽引することを狙っています。一例として、パナソニック ホールディングス(株)の本社がある門真地区では総務、法務、人事などの間接部門に向けて『PXデジタルラボ』を作りました。社員間のコミュニケーションを促進し共創を促すと同時に、アジャイル型での業務推進を実践してもらっています。自律化したチームが、顧客起点で柔軟・俊敏に成果を出し続ける、そんな働き方がグループ全体に定着している状態を目指します」。
3階層目は「カルチャーの変革」。玉置は「ITで一番大事なのは人です」と語る。
「DEI(Diversity, Equity, Inclusion)の推進に取り組み、オープンでフラットな職場環境を作り上げることで、風通しのよい組織文化をITに関わるすべてのメンバーに浸透させることが目標です」。
そのためには、組織のリーダー自らが進んで変革に取り組むことが不可欠だと述べる。
「私は変革者として呼ばれてきたわけですが、私自身や、私が外から連れてきた仲間が上から変革を押し付けようとしても意味がない。もともといる『中の人』の気持ちに火をつけないと変革は成功しない、と思っています。
まず第一歩として、幹部層の皆さんに私と同じベクトルに向いてもらうことが必要でした。いろいろな働きかけを試みてきましたが、いま、その良い影響が出てき始めていると感じています」。