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2018年2月14日
製品・サービス / プレスリリース
業界初*1非常に明るいシーン(45万飽和電子)まで、高解像度で、動体歪みのない高画質撮影を実現
パナソニック株式会社は、8K画質を実現する、3600万画素の高解像度で、60fpsの高速フレームレート読み出し、かつ、45万電子の高飽和と、感度変調機能を有するグローバルシャッタ[1]撮像が可能なCMOSイメージセンサ技術を開発しました。本技術では、光電変換を行う有機薄膜と電荷蓄積および読み出しを行う回路部を完全独立に設けた積層構造とし、この回路部に、高速ノイズキャンセル技術と高飽和化技術を新たに開発・搭載しています。また、有機薄膜に加える電圧を制御し、感度を変更できる有機センサならではの構成を用い、グローバルシャッタ機能を実現することで、業界で初めて、これらの性能を同時に実現しています*1。
本技術により、例えばスタジアムにおける、日差しの強いフィールドと日陰になる観客席といった明暗差の大きなシーンでも、8K高解像度での撮影を行うことが可能となります。
また、グローバルシャッタ機能を活用し、動体の歪みのない瞬時切り出し、複数のカメラを用い多視点撮像を行う「マルチビューポイントカメラ」での各カメラ間の同期を取った撮像や、マシンビジョン・ITS監視など、高速かつ高解像度が求められる分野への活用が期待されます。
加えて、本センサ独自の、有機薄膜へ加える電圧の制御のみで感度変調[2]可能な機能を活用し、従来、撮影条件毎に異なるNDフィルタ[3]を手動または機構的に装着することが必要であったシーンにおいても、電圧制御のみで、無段階に感度調整が可能なNDフィルタ機能を実現できます。
本開発は、以下の特長を有しています。
本開発は、以下の技術により実現しています。
従来のグローバルシャッタセンサは、フォトダイオードと電荷蓄積容量を同一画素内に設ける必要があったため、高解像度実現と明るいシーンでの撮影特性の両立に課題がありました。
国内135件、外国83件(出願中含む)
本技術の一部は、2018年2月11日~2月15日に米国サンフランシスコで開催される国際学会ISSCC(International Solid-State Circuits Conference)2018にて発表します。
当社の有機CMOSイメージセンサは、光を電気信号に変換する機能を有機薄膜で、信号電荷の蓄積、および、読み出しを行う機能を下層の回路部で、それぞれ完全独立に行う構成となっています。今回、このような有機CMOSイメージセンサの構造的特長を活かし、配置自由度の大きい回路部に、高速なノイズキャンセル技術、高飽和化を実現する技術を搭載することで、通常はトレードオフとなる、8K高解像度での、フレームレート60fps読み出し、高飽和特性実現による広ダイナミックレンジ[4]化、グローバルシャッタ機能を同時に実現しています。
有機CMOSイメージセンサは、有機薄膜と電荷蓄積部を金属配線で接続する構造であるため、蓄積電荷を完全に読み出すことができません。そのため、画素(信号電荷蓄積ノード)リセット時のリセットノイズの影響を受けるという課題があります。さらに、8Kセンサのような多画素センサでは、ノイズキャンセル時に、垂直方向に並ぶ4000を超える画素分の大きな負荷を、一度に駆動する必要があり、ノイズ抑制に時間がかかるという課題がありました。本センサでは、当社独自の半導体デバイス技術と、新たに開発した『画素内-容量結合型ノイズキャンセル回路』により、発生したリセットノイズを、多画素駆動時にも、高速にキャンセルする構成を開発しました。本構成では、電流源以外の要素を全て画素内に設けた負帰還ループを用いることで、画素毎に、リセットノイズの抑制を高速に実現することができます。
有機CMOSイメージセンサでは、配置自由度のある回路部に大容量の容量素子を搭載することで、同一画素構成を用いながら、カメラシステムからのスイッチ切り替えのみで、高感度モードと高飽和モードの両モードを実現できます。高感度モードでは、4.5万電子の光量までのデータを高感度に撮像することが可能です。一方、高飽和モードでは、45万電子の大きな光量までのデータを撮像することを可能としています。本センサでは、高飽和モードにおいて、高感度モード比10倍の大きな光量まで撮像可能ですので、図3(a)のように、高感度モードでは白飛びしてしまい、階調の表現できないランプのフィラメントの細かい巻き構造まで、鮮明に映し出すことができます。また、図5のように、スタジアムの屋根の影にいる人の表情から真夏日中の青空と雲まで、さらに、図6のように、薄暗い室内から日の当たる庭まで、明暗差の大きいシーンにおいても、黒つぶれ、白飛びのない、色調鮮やかな撮像が可能となります。
有機CMOSイメージセンサは、有機薄膜へ加える電圧を制御するだけで、有機薄膜の感度を変更可能です。本機能を活用することで、従来のシリコンイメージセンサでは実現できなかった、以下のような機能を実現できます。
有機薄膜へ加える電圧をON、OFF制御し、有機薄膜の感度を制御することで、8Kセンサのような多画素駆動時でも、全画素同時撮像可能な『グローバルシャッタ機能』を実現します。グローバルシャッタ機能を用いて撮像することで、図3(b)に示すように、回転体の文字を歪みなく、鮮明に撮像することができます。また、図7のように、高速道路走行時や産業検査時のような、高速動体撮像時にも、歪みのない撮像が可能になります。
従来のグローバルシャッタ型のシリコンイメージセンサでは、データを全画素一括で蓄積するために、転送回路と電荷を蓄積しておく電荷蓄積容量などの新たな素子を追加する必要があり、光を捉えるフォトダイオードと追加回路との面積の取り合いが発生、画素サイズを小さくできない、飽和光量を増やすことができないという課題がありました。一方、有機CMOSイメージセンサでは、追加素子が必要ないため、セルの小型化、高解像度センサが実現できるとともに、配置自由度のある回路部への飽和拡大容量の搭載で、暗いシーンから非常に明るいシーンまで、歪みのない正確な撮像が可能となります。例えば、図9に示すように、ビル群を高速パンニング[5]しながら撮影した場合の、明るい空と暗い窓のように、従来は白飛び、黒つぶれしてしまうコントラストの大きいシーンにおいても、有機CMOSイメージセンサでは、ローリングシャッタモードと同様に全領域の階調を保持したまま、歪みのない映像データの取得が可能となります。
有機薄膜(図8のVITO)へ加える電圧を制御し、有機薄膜の感度を所望の値に変更することで、従来、撮影条件により複数のNDフィルタを装備することが必要であったカメラ使用シーンにおいて、カメラシステムへの電圧制御のみで、電気的にNDフィルタ機能を実現することが可能となります。本機能の使用により、従来のシリコンセンサでは実現できなかった、撮影機材の簡易化、および、感度の連続、無段階制御が可能になりますので、シーンに応じた撮影の自由度が広がります。
今後、これらの有機CMOSイメージセンサ技術を、業務放送用カメラ、監視用カメラ、産業検査用カメラ、車載用カメラなど幅広い用途に提案し、高解像度・高速・高精度なイメージング、センシング機能の実現に貢献していきます。
以上
記事の内容は発表時のものです。
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