2022年1月5日~7日まで開催された「CES 2022」。パナソニックはこれに先立ち1月4日にオンラインのプレスカンファレンスを実施。その中でグループCEOの楠見は新たな環境コンセプト「Panasonic GREEN IMPACT」を発表した。そして1月6日、サステナビリティ経営についての説明会においても、「将来世代に社会の負を残さないために私たちは社会課題に正面から向き合っていく」「最優先で取り組むべきは地球環境問題」だとした上で、「当社が向き合う様々な領域からCO2排出削減の働きかけを行い、社会全体のエネルギー変革を前倒しするようなインパクトを与えていく」と改めてパナソニックグループが果たすべきお役立ちの姿について思いを語った。
サステナビリティ経営の実現に向けて:「Panasonic GREEN IMPACT」に込めた思い
パナソニックグループは2017年に策定した「環境ビジョン2050」実現ヘのマイルストーンとして、2030年までに、全事業会社のCO2排出量の実質ゼロ化にコミット。同時に2050年に向けて、お客様にお使いいただく商品の省エネ化と、B2B/B2Gのお客様への省エネソリューションやクリーンエネルギー技術の提供を通じて、社会全体のCO2排出量削減に貢献する、という目標を掲げている。今回の発表は、その取り組みの方向性をより具体的に示した形だ。
現在パナソニックグループは、工場の稼働を中心とした事業活動を通じて、220万トン(/年間。以下同様)のCO2を排出している。一方で、パナソニックグループの商品は、世界で毎日約10億人以上のお客様にご愛用いただいており、その消費電力から試算されるCO2排出量は8,600万トンに上る。これらを含めたバリューチェーン全体によるCO2排出量は約1.1億トンとされ、この数字は世界の消費電力の約1%に相当する。地球にとって大きなインパクトを持つこの排出量を削減することはパナソニックグループの「責務」である。
今後の自社事業における「徹底したエネルギー削減」に加え、「社会のエネルギー変革」の実現に向け、様々な領域でCO2排出削減の働きかけを行うことで、より大きく、ポジティブなインパクトを与えていきたいという思い。そして、持続可能な未来に向けて行動(ACT)していくというコミットメントが、この「Panasonic GREEN IMPACT」という言葉には込められているのだ。
GREEN IMPACTの取り組み事例について、CES 2022にも出展したテーマも含め、いくつか紹介する。
環境問題解決に貢献するソリューションを幅広い領域で創出
「社会のエネルギー変革」への貢献
今、世界各国で系統電力の再生可能エネルギー(再エネ)への転換が加速されようとしている。そんな動きをふまえ、エネルギーを使う生活者側からも、化石燃料を使用する機器を電気機器に置き換える、「電化」を進めていく動きも生まれている。こうした社会の動きを捉え、パナソニックグループは様々な取り組みを進めていく。
EV用リチウムイオン電池
カーボンニュートラル社会の実現に向けては、環境車の普及拡大が欠かせない。パナソニックではEV用リチウムイオン電池において、長年培ってきた電池技術・製造知見を生かし、開発と量産において、競争力(容量・コスト・供給力)の徹底強化に取り組んでいる。例えば、今後、円筒形で主流になる高容量「4680」セルで、高品質・高安全というパナソニックの電池の強みをさらに磨きつつ、徹底した生産性向上によって業界をリードするコスト力の実現を目指している。
こうした競争力強化を進めることが、環境車の進化・普及拡大には極めて重要だ。併せて後述のリユースやリサイクルまで見据えた取り組みを進めることで、環境負荷軽減に徹底的に取り組んでいく。
RE100ソリューション
「RE100ソリューション」とは、純水素型燃料電池と太陽電池、蓄電池を組み合わせた自家発電により、事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギー(Renewable Energy)で賄う取り組みだ。2022年4月には、滋賀県草津市の燃料電池工場での実証を開始予定。水素の本格活用で、再エネ拡大に向けて新たな道を開拓していく。
ヒートポンプ式温水暖房機「Aquarea」
当社が欧州市場で展開中のヒートポンプ式温水暖房機「Aquarea」は、大気中の熱をヒートポンプで効率よく集める熱交換により、化石燃料を用いた従来の燃焼系の暖房機器に比べCO2排出量を抑え、少ない電力で温水をつくることができる。電化によって再エネ由来の電気の活用機会が増えることに加えて、不安定な再エネの電力を温水として貯めることでエネルギーのタイムシフトができ、電力グリッドにかかる負担を抑えて再エネの普及促進に貢献する。
「循環型社会」への貢献
また、地球環境問題の解決に向けては、資源、すなわち循環型社会に向けた取り組みも不可欠だ。パナソニックグループは、資源消費に依存せず持続可能な成長を目指すサーキュラーエコノミーの考え方を取り入れ、商品ライフサイクルを通じたCO2排出量削減にも取り組んでいく。
家電リサイクル樹脂
家電製品に多く使われている樹脂を少しでも無駄にしないために、家電リサイクルにおける再生樹脂の用途拡大に取り組む。例えば樹脂の場合、パナソニックの独自技術により、3種類の素材を高速かつ高純度で選別・回収。取り出された樹脂は、あらたな商品の一部となって生まれ変わる。こうした資源を効率よく回収・再生するための技術開発に加え、製造段階での投入資源の最小化など、資源循環に関わる全プロセスでの品質向上にも取り組んでいる。
電池材料の循環モデル
既に述べた通り、パナソニックはEV用リチウムイオン電池事業の競争力強化に取り組んでいるが、循環型社会の実現への貢献という観点でも、各国・地域の規制に応じた電池の回収・リサイクルの実施はもちろんのこと、生産過程で発生するロスの回収とライフエンドでの回収の両面から資源再利用の取り組みを強化している。
加えて、さらなる長寿命化に向けた開発に取り組むとともに、電池の個体特性と使用状況に応じた独自の充放電制御技術を開発するなど、1つの電池を長くお使いいただけるようにすることで、循環型社会の実現に貢献するといった取り組みも進めていく。
これらの取り組みはあくまで一例だ。今後もパナソニックグループは、地球環境問題解決に向け、事業活動や商品を通じたCO2排出削減、業務効率化のソリューションの提供や、再生可能エネルギーに関する様々な技術をお届けしていくことで、社会のあらゆる領域でカーボンニュートラル社会の実現に貢献していくことを目指す。
私たち自身のためだけでなく、未来の世代のために
パナソニックグループは2022年4月、新体制のもと各事業会社が独立会社として新たなスタートを切る。それぞれの事業のお役立ちの姿は異なるが、「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現という目指す姿は共通だ。
「物と心が共に豊かな理想の社会」――パナソニックグループ創業者の松下幸之助はかつて、「250年計画」を通じて、この実現を目指す、と宣言した。物と心が共に豊かであってこそ、人は幸せになれるのであり、当社は、その「一人ひとりが幸せな理想の社会」を250年かけて実現する会社であるということだ。続けて、「次代をよくするために、我々が犠牲になる」のではなく、「我々が十分人生の幸福を味わい、人生を全うし、なおかつ次代をよくする」との思いを添えた。
つまり、パナソニックグループの使命の根源には、人々が心身ともに幸せな状態であることを意味する「ウェルビーイング」を、「サステナブル」な経営によって世代を超えて実現していくという考え方があるということだ。昨年、約60年ぶりに改訂された「経営基本方針」も、その実践によってサステナビリティ経営を実現していく、そのための行動規範にほかならない。
「Panasonic GREEN IMPACT」は、その中でも極めて重要な取り組みだ。「地球環境の破壊が進めば、250年の先に理想の社会が実現できないのは明らか。今この瞬間に身を置く以上、地球環境問題の解決は、最優先で取り組んでいく」と楠見は語る。
現在の私たちのために、そして未来の世代のために、パナソニックグループは一丸となって挑戦を続けていく。