「慣れ親しんだ商品をさらに改善できないか」「未来の製品のあるべきカタチとは」――パナソニックのモノづくりにかける情熱に終わりはない。"A Better Life, A Better World"をブランドスローガンに掲げるパナソニックでは、商品やサービスの完成形に至るまで、様々な検討・試作を繰り返し、ユーザーにとっての"A Better"なアウトプットを目指して日々研鑽を重ねている。
こうした、パナソニックのユーザー最適を目指すモノづくりを支えているのが、人にとっての「使いやすさ」をデータ解析で可視化する、独自の「デジタルヒューマン」技術だ。
設計の中心は「人」、ユーザー視点をカタチに
パナソニックのデジタルヒューマン技術(人体シミュレーション技術)は、「使いやすさ=ユーザビリティ」を、人体シミュレーションにより可視化・定量化するテクノロジー。人体形状データを動作生成アルゴリズムで制御し、様々な使用テスト環境をバーチャルに再現する。
身体の負担感や、視認性、作業空間での動きやすさなど、様々なユーザビリティ評価――例えば、試作品のない設計段階で商品形状を検討する、実際に人が参加しての被験者評価では難しい、多数パターンでの使用性を検討する――といったことも、このデジタルヒューマン技術では可能だ。パナソニックグループにおいて、商品を使用するシーンでの安全性や、手での握りやすさ、腰の負担を軽減する位置設計など、「使いやすさ」をカタチにし、健やかなくらしに寄与するキーテクノロジーと言えるだろう。
独自開発の技術で人の負担感を解析
『デジタルヒューマン』と言うと、リアルな人や試作品によるテストの方が信頼性があるのでは、と思われるかもしれない。しかし、デジタルヒューマンの技術開発を担う、プロダクト解析センターの瀧本は、「バーチャルだからこそ得られるメリットが多くある」と確信している。
約4万人分という膨大な人の形状データをもとに、年齢や性別、身長、体形といった要素のほか、例えば介護施設に入居する高齢者に至るまで、幅広い評価パターンを網羅。人や試作品による検討よりも、効率的に、多くのデータ取得が可能だ。さらに、「しんどい」「楽」といった人の感覚を見える化した、独自の身体負担感データベースとも連動する。
人が、自身の感覚を細かに表現し伝えるのは、実は簡単なことではない。瀧本は、様々な製品評価に携わる中で「言語化しづらい負担感や、はっきり顕在化しない微細な違和感も見える化し、完成形に活かせるのがデジタルヒューマン技術の強み」と実感している。
「スマイル浴槽」は、デジタルヒューマン技術によるユーザビリティ解析で、浴槽の高さ、側面の厚み、底のカーブなど、またぎやすく出入りが楽な形状であるかを検証し、商品化に結び付けた
チャレンジングなマインドで鍛えられた市場競争力
デジタルヒューマン技術を手掛けているのは、解析評価のテクノロジーにより商品に新たな付加価値をもたらす、プロダクト解析センター。感性AIソリューション課長 丸山は、「もともと、商品に求められていたのは第一に『機能』。『機能』が充実する中で、ユーザー視点での『使いやすさ』を求める声が高まった。さらに今は、『使いやすさ』を超え『使う喜び』が求められているのでは」と感じている。実際に、いまデジタルヒューマン技術の活躍の領域は、人の感性に訴えるサービスの開発に貢献するなど、一層の広がりを見せつつある。
プロダクト解析センターは、パナソニックグループの間接部門だが、社外の案件も積極的に手掛けてきた。厳しい市場でお客様の声に耳を傾け、実績を積み、磨き上げられた技術は、結果的にパナソニックグループ全体のモノづくり力向上に直結している。ユーザー視点でのモノづくりを追求する彼らの情熱が、「解析する」「評価する」存在としての価値を越え、心と体の健やかさを提供するパナソニックの歩みを、力強く支えていく。