2024.07.25
PHD技術部門が2040年を見据える研究開発の方向性
共に磨き続ける「技術未来ビジョン」
一人ひとりの選択が自然に思いやりへとつながる社会へ
2040年を見据え、社会やお客様へのお役立ちを続けるために、磨き続ける未来像―それが「技術未来ビジョン」。
未来の社会で実現したいのは、「一人ひとりの選択が自然に思いやりへとつながる社会」です。
ビジョン策定に携わったパナソニック ホールディングス株式会社の⽚⼭朋⼦に、その概要とビジョンに込められた思いを聞きました。
片山 朋子
パナソニック ホールディングス株式会社 技術部門
技術企画室 戦略企画部
かたやま‧ともこ 2008年⼊社。デジタルAV機器のソフトウェア開発を担当後、⽇本‧北⽶での新規事業の開発や物流システムの開発に携わる。その後経営企画部門でグループ全体の未来戦略策定に従事。2021年10月から技術部門に異動し、現職。技術未来ビジョンの策定に際し、事務局を務めるとともに、未来構想の策定を推進。
素直な疑問をぶつけ、ひも解いていきたいと思います!
技術未来ビジョンとは?
このビジョンはどのように生まれたのでしょうか。
当社を取り巻く環境が大きく変わりつつある現在、どうすれば社会やお客様にインパクトを与えられるかという観点で、昨年から検討を重ねてきました。このビジョンを通じて実現する技術や事業が社会に浸透していくことを前提とすると、既存技術や事業領域からも十分にジャンプ可能で、技術的裏打ちがある程度できる時間軸として、2040年を目標年度におきました。技術は未来を変化させるドライバーになり得ますが、未来を創るのは技術だけではありません。さまざまな部門の力を借りながら、ホールディングスの技術部門として、未来に実現したい社会の姿とそこに至るまでの道筋を構想しました。
社会のさまざまなシーンとそれを背景で支える技術をビジュアル化し、その中でどのようなお役だちができるかを長期視点で描いています。
未来構想ビジュアル:
菱形の上がリアルの世界で、それを支える下がサイバーの世界を表している。 ひとつの大きな現実世界とサイバー空間を融合し、サイバー世界での分析・解析結果を現実世界にソリューションやサービスとして還元する仕組み(サイバー/フィジカルシステム)で、左上側から資源やエネルギーが社会に投入され、様々なステークホルダーの活動を経て、コミュニティ・家庭・個人へと伝わり、最後にくらしや環境関係のデータが返っていく。
空飛ぶクルマとか、宇宙事業とかを想像していました。
それ、よく言われます(笑)。当初はそんな議論もありましたが、日常の生活に根付くことがパナソニックグループの技術の特徴という結論に、皆が行き着きました。検討を重ねた末、実現したいのは「一人ひとりの選択が自然に思いやりへとつながる社会」であり、「エネルギー・資源」「生きがい」「思いやり」の三つの「めぐる」がポイントになる、と考えるに至ったのです。
自分がトクをする選択で、他者もトクをするとは?
それって、どういうことですか。
天然資源をはじめ、私たち人間に与えられた時間やスキルなど、いわゆる「資源」には限りがあります。でも、それらを必要としている人を把握し、お互いに融通し合えれば、どちらもトクをするような仕組みが作れるかもしれません。自分のトクのために行った選択が、家族、社会だけでなく、自然も含めた他者にとってもトクになる、そんな仕掛けができないかということです。これを技術未来ビジョンのキーワード「共助」としています。
限られた地球資源や社会的リソースが無駄なくめぐることで、 我慢や犠牲を強いられず、 自分もトクをし、 他者にもメリットが生まれる選択肢を見つけられる
コンセプトムービーより
うーん、まだ難しい…。具体的なイメージはありますか?
では、日常的な事例で説明しましょう。未来構想の策定時に出てきた事例なのですが、お昼ごはんを食べる時、メニューに栄養素やカロリー、価格などの情報が記載されていますよね。ここに環境負荷やフードウェイスト*といった、ちょっとした情報を付加すると、それを見て、環境負荷の低減につながる食事を選択する人も出てくると思います。情報を可視化すると人の選択は変わる、という仮説が成立し、環境に配慮したメニューを選んだ人たちに、ささやかな納得感がもたらされる。このような情報の可視化とそれによって納得感のある人の行動変容を積み重ねる仕組みを構築することが、共助のベースとなる考え方です。
*何らかの理由により、消費されることなく捨てられる食べ物。中でも小売りや飲食サービス、消費者から生まれるロスのこと。
分かりやすい例をありがとうございます。イメージしやすくなりました。
こうしたことが広まれば、将来にわたり、日々の安全や安心、エネルギーなどの資源が損なわれる心配をしなくて済む社会が実現できるかもしれません。地味かもしれませんが、すごく大事な役割を担っているという思いで、検討を重ねてきました。
共助社会の実現へ
なるほど、実現したい未来の社会は分かりました。技術はどう変わるのですか?
事業会社制に移行した時に発信した技術開発の方向性と、大きくは変わりません。今回は、どんな社会をつくりたいかを言語化するとともに、何のための技術かを今一度提示しました。これらを通じ、①2040年に向け、より解像度の高いストーリーを描く②社会実装に向け、単一の要素技術だけでなく、インテグレーション(統合)や技術同士を組み合わせた開発を意識するーそのための羅針盤とした点が、技術未来ビジョンの価値の一つだと思っています。
技術と向き合う一人ひとりが目指すべき社会を互いに語り合い、一つの目標に向かうことで、グループ内の技術が点から線、面へとつながり、スピード感を持って取り組めると考えています。
例えば、エネルギーの分野でいうと、ペロブスカイト太陽電池などのエネルギーデバイスを使えば、どこでも創エネができるようになります。これと、電力の需給バランスを管理・調整する「分散型電源管理システム(DERMS)」を組み合わせれば、再生エネルギーの分散型マネジメントが可能になります。自分の家で作った再生エネルギーを近隣に渡すことができれば、家の中のエネマネだけでなく、地域全体のエネマネにも貢献できます。個々に省エネを頑張らなくても、利便性や快適性を損なわず、生活者視点でエネルギー分配の最適化ができる。こんな共助社会を実現できるのは、パナソニックグループが顧客接点を広く持ち、そのくらしを理解しているからと考えています。
パナソニックグループだからこそ、創造できる未来なんですね。
実現に向けた具体的な進め方を教えてください。
ビジョン実現のためには、当社だけでなく、パートナーとの協業も必要です。自社の技術を磨き上げる一方で、パートナーと一緒に新たな技術を開発したり、組み合わせたりするケースも出てくると思いますので、それらも含めて戦略に落とし込む必要があります。そのためにも今後、技術未来ビジョンを社内外に積極的に発信し、対話を重ねながら共創を進めていこうと考えています。今回の発信は、その道のりの第一歩となります。こうした努力の先に、私たちが思い描く未来があると信じています。
COLUMN
ビジョンの策定に携わる中で、さまざまな苦労がありました。言葉が難しいとか、WOW感が足りない…とか(苦笑)。まだまだ浸透には時間がかかると思いますが、ビジュアル作成することで、具体的な事例とのひも付けができ、少しずつイメージしやすくなってきたかなとは思います。ビジョンは発信したらそれで終わりでも、神棚に飾るものでもありません。また、これが正解というものでもないです。常日頃、皆がそれを携えながら自分なりに解釈し、自身の活動に落とし込むことで、目指す社会の実現に向けて磨き続けるものにしたいと思っています。
技術未来ビジョンの世界観を表現したコンセプトムービー
記事の内容は公開時のものです。
商品の販売終了や、組織の変更等により、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
More from this series
シリーズ記事
Recommended articles
おすすめ記事