パナソニックグループコミュニケーションマガジン
幸せの、チカラに。

2024.07.12
パナソニックグループ発「技術」の歴史
もしもこの技術が世になければ…
世界にインパクトを与えた技術

シリーズ:

日々のくらしの中で、今でこそ当たり前のように定着している、さまざまな技術。それぞれの時代における社会課題やお客様のお困り事と向き合い、試行錯誤の末、人々のくらしに欠かせない存在となったパナソニックグループの技術の事例を紹介します。

01

創業の品
「改良アタチン」

失敗を糧に試行錯誤
低価格・高品質の商品が誕生

パナソニックグループは100年以上にわたり配線器具を製造。時代に応じてラインアップの拡大・進化を続けています。1918年に誕生した創業の品「改良アタッチメントプラグ(以下、アタチン)​」は、安全で快適、便利な商品の先駆けと言えます。

改良アタッチメントプラグ(左)の2年後、二灯用クラスター(二股ソケット)も開発。

大正時代の半ば、家庭内で電源の役割を果たしていた電灯用ソケットに接続するアタチンが普及しつつある一方、ソケットへのねじ込み部分の加工精度が低いなどの課題もありました。そこで創業者・松下幸之助は試行錯誤の末、一流メーカーの古電球のねじ込み部分を再利用するアイデアを採用。高品質だけでなく、他より3割安い価格を実現できたのです。まさに一挙両得で、斬新なデザインも相まって好評を博しました。幸之助は「私たちの遵奉すべき精神(七精神)」の一つ「産業報国の精神」の制定趣旨に、「改良アタチン以降、終始一貫して不当な利益は得ない方針を守り、社会に貢献してきた」を挙げています。

開発から得た学び

差別化要素を押さえつつ、市場性を追求

実は幸之助は、創業前の1917年に電気工事用のソケットを改良して発売したものの、全く売れず行き詰まります。失敗を踏まえ、「市場性のあるもの」を作る重要性を認識。一般ユーザー向けのアタチンを、価格やデザインといった明確な差別化要素を押さえつつ改良したのです。こうした工夫が、成功の要因と言えます。

02

時代を支える
「二次電池」

小型・軽量・高容量化技術で
環境対応車ほか産業成長の原動力

電気エネルギーを蓄え、必要なときにすぐに電力として活用できる二次電池。かつて電池業界で熾烈な競争を繰り返した松下と三洋。両グループの技術を融合し、くらしと社会への貢献を加速しています。

二次電池は、日本の家電のコードレス化と共に進化し、小型・軽量・高容量化技術で発展し続けています。両社が1950年代後半に開発に着手した「ニッケルカドミウム電池」は密閉化の実現だけでなく信頼性を向上するための研究開発などが続けられ、後にビデオカメラの小型化に貢献。その後、エネルギー密度の高い「ニッケル水素電池」が開発されると、1990年代にノートパソコン、携帯電話に採用。充電の心配なく長時間使用できる安心感を提供しました。1990年代後半には軽量・高エネルギー密度の「リチウムイオン電池」が登場し、二次電池市場を席巻。2000年代に入ると、環境・エネルギー問題への関心が高まり、民生用から車載用にシフト。EV向けはとくに長距離航続に対応する高容量電池が求められる北米市場でのプレゼンス維持にこだわり、技術革新を続けています。こうした進化は、高容量、高エネルギー密度化に向けた新しい材料の発見と飽くなき改良を推進する高い技術力が背景となっています。

二次電池事業進出となった、自動車用鉛蓄電池 第1号機(1937年)。当時は戦時下で、高品質の鉛粉の調達が難しく、内製を行いながら改良を重ねた。​

円筒形車載電池 左から1865、2170、4680

開発から得た学び

顧客・社会の課題を解決し続けてきた技術革新の重み

100年以上にわたる電池事業の歴史で磨き上げた「技術力」、顧客・社会の課題を根本から解決する「市場創出力」、安全性にコミットできなければ作る資格はないという「絶対安全品質」を前提に、日々積み重ねている「信頼と実績」が強み。顧客要望に応じながら、技術革新によって高容量・高出力を追究し、着実に商品力を強化しています。

03

「軽薄短小」の代表選手
超薄型ラジオ「ペッパー」

わずか12.7ミリの薄さ
いつでも、どこでも、良い音
の思いを凝縮

当社のラジオ事業は1970年代、東南アジア諸国の商品の追い上げなどにより、業績が低迷していました。この状況を一変させたのが、1977年に、当時としては画期的な薄さ12.7ミリで発売した「ペッパー R-012」 でした。

松下幸之助は「ペッパー」に大きな期待を寄せる一方で、コストや発売時期、そして薄くても基本性能は絶対に落とさぬよう、開発陣に強く要請していました。そこで全社を挙げて、プリント基板への部品実装技術の革新と実装の自動化を推進。9.5ミリ厚小型スピーカー、合成樹脂を使用したスピーカー振動板、角チップ抵抗器、折り曲げ可能なフレキシブル配線板といった、超小型・薄型部品の開発も進められました。こうして、シャツの胸ポケットに収まるほど小さくて薄く、信頼性も高い「ペッパー」が誕生したのです。シリーズで100万台以上を販売するヒットを記録しただけでなく、その後のさまざまな商品の技術の礎になっています。航空機の座席へのラジオの搭載から始まったアビオニクス事業の出発点でもあり、現在はフルスクリーンの機内エンターテインメントシステムやWi-Fi接続サービスに進化。機内エンターテインメント・コネクティビティシステムのリーディングサプライヤーになっています。

「ペッパー R-012」 低価格にもこだわり、当初の目標は16,000円程度だったところ、7,800円で発売

アビオニクスの最新機内エンターテインメントシステム「Astrova」

開発から得た学び

高い目標へのまい進が、他に無い価値創出の原動力

薄型化と音質の両立に苦労する技術陣を前に、「薄くても一人前の音を出せ」と求め、「大切なのは、ラジオを楽しみたい人に、場所を問わず満足いただくこと」と激励した幸之助。自身も4回試聴を行ったほどです。こうした「高い目標」に向かい、全社の部品技術者がまい進することで、「軽薄短小」を極めた画期的な商品を送り出せたのです。

04

偶然が導いた世界初の発明
「手ブレ補正技術」

カメラを持ったまま、微動だにできない」
そんな苦労からの解放

今でこそ、当たり前のようにデジタルカメラに搭載されている手ブレ補正技術。世界で初めて発明したのはパナソニックです。発明の始まりは、ハワイ旅行での“ある発見”でした。

1980年頃、ある技術者が同僚とハワイへ。ドライブ中に同僚が大型ビデオカメラを肩に乗せて景色を撮影しようとすると、撮影画像が非常にブレるので、同僚の身体の動きを観察すると、腰を中心とした回転運動になっているのに気付き、これならカーナビに活用しようとしていたジャイロセンサーを使えば解決できると思いつきました。帰国後、カメラへの搭載が難しかったジャイロセンサーの小型化と、ブレ補正メカニズム・補正アルゴリズムの開発に成功。1988年に世界で初めて手ブレ補正機能を搭載したビデオカメラを商品化しました。アメリカの展示会に出展すると、来場者から驚きと感動の声が。科学的にも高く評価され、学会で新規性・独自性の高い原著論文として認定。特許も出願し、名実共に「世界で初めて手ブレ補正をカメラに搭載したメーカー」となりました。

世界初の手振れ補正内蔵カメラ PV-460(1988年6月発売)

フルサイズミラーレス一眼カメラ LUMIX DC-S9

開発から得た学び

世界初の誇りを胸に、最高品質の撮影体験を提供

実は動画と静止画では、同じ手ブレ補正でも重視する点が違います。しかし、技術者たちは「世界で初めて手ブレ補正を生み出したメーカーの名に恥じぬように」という誇りを胸に、静止画でも快適に撮影できる手ブレ補正を開発し、ビデオカメラはもちろんのこと、LUMIXのようなデジカメでも最高品質の撮影体験を提供することを目指しています。

05

スマホに必須の熱拡散材
「グラファイトシート」

常識を覆した発明から商品化まで
時流と研究開発がジャストミート

スマートフォンに欠かせない熱対策。限界まで小型化を進めるモバイル機器に搭載した高性能CPUは、高熱を発生させるため、機能低下への対策が必要です。そのための放熱部材として大きく貢献するのがグラファイトシートです。

PGS®グラファイトシート
写真右はグラファイトシート結晶構造イメージ

導電性高分子*の発見を契機に、1981年、国立研究機関の高分子研究プロジェクトチームが松下技研(当時)に発足。1983年、電気や熱をよく伝える金属のような結晶性グラファイト**が誕生します。この基礎研究をベースに事業化プロジェクトが始動。面方向は強いが厚さ方向が弱くて加工できない結晶性グラファイトは用途開発が難航しましたが、その後、柔軟性のあるものが偶然にも誕生。従来の常識が覆されます。高い熱伝導性に柔軟性が加わった結晶性グラファイトをシートにしたものが、1998年にノートパソコンの熱対策に採用され、その後もスマートフォンや電子機器の高機能化、小型・薄型・軽量化に伴い、熱対策に欠かせない部材へ、まさに、“対策部材”から“必須部材”となったのです。この発明は2010年に市村産業賞、2012年に大河内記念生産賞、2014年に文部科学大臣表彰を受賞しました。
電気を通すプラスチック。2000年にノーベル化学賞を受賞した白川英樹博士により発見
**規則正しい六角形で平面が構成され、その平面が層を成した結晶状態の炭素

開発から得た学び

世の中に役立つものを作る一心で商品化へ

グラファイトシートは、長い年月をかけ、基礎研究から用途開発、商品化までをやり遂げた執念の産物です。その日々を支えたのは、ぶれない目標、続ける信念と、時流に乗る日があったからに他なりません。新たなソリューションの提案、事業創出の好例と言えます。

06

脱炭素社会の急先鋒
「燃料電池」

水素活用でエコを先取り
世界初の家庭用燃料電池

利用時にCO2を排出しない次世代のエネルギーとして期待される水素。水素と酸素を化学反応させて電気や熱をつくるシステムが燃料電池です。おなじみの「エネファーム」は、家庭用の燃料電池で、パナソニックが世界で初めて発売しました。

燃料電池の基礎研究は1950年代後半、固体高分子形燃料電池*の研究は1991年に開始。ただし、いずれも取り巻く環境の中で中断します。しかし、1997年の京都議定書**の採択を機に、社会のエコ意識が急速に高まる中、「省エネから創エネへ」を掲げ、家庭用燃料電池の研究をスタート。開発には多種多様な技術が必要であり、2001年、全社から各分野の技術者が集結し、「燃料電池事業化プロジェクト」が発足しました。当初の試作機の発電耐久時間はたった72時間でしたが、2年後の2004年に2千時間、さらに3年の歳月を費やし4万時間を実現。その間、2005年には首相官邸や住宅での大規模実証も行われました。そして、2008年に技術開発を完成、2009年に世界初の家庭用燃料電池「エネファーム」の一般発売につながるのです。
固体高分子形燃料電池:電解質に高分子膜を電解質として用いた燃料電池。熱を有効利用できる特長があり採用している。
**京都議定書:京都で開催された第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)で採択された温暖化に対する国際的取り組みのための国際条約。

家庭用燃料電池「エネファーム」1号機(2009年)

純水素型燃料電池を活用した実証施設「H2 KIBOU FIELD」(2022年4月撮影)

開発から得た学び

燃料電池のパイオニアとして挑戦は続く

エネファームは発売以来、発電耐久時間の向上、コンパクト化、高効率化、災害対応に向けた機能の搭載などさらなる技術革新に取り組み、累計生産数は2024年2月に25万台を突破。また、エネファームで培った技術を活用し、都市ガスから水素を取り出すのではなく、水素を直接供給して発電する「純水素型燃料電池」の一般販売を2021年10月開始。水素エネルギー活用の取り組みを加速しています。

07

水から生まれた清潔イオン
「ナノイー」

水のチカラ
空気や物をキレイにする

水に包まれたナノサイズの微粒子イオンであるナノイー。水蒸気よりはるかに小さい水粒子が、菌やウイルス、花粉、カビなどの抑制、脱臭、美容などの効果を発揮します。

ナノイーは1997年に研究が始まった独自の技術で、空気中から結露で集めた水に高電圧をかけて生成します。2003年に初めて空気清浄機に搭載され、家電から鉄道や自動車、病院やホテル、オフィスなどへと活躍の場を拡大。汚れやニオイを溶かす水のチカラを応用し、清潔で快適な空間をグローバルに提供してきました。2021年には、対極板を従来の4本針形状からドーム形状に変更し、円すい状に無数の放電を形成する新型のナノイーXデバイスを開発。これにより、OHラジカル*の生成領域を拡大し、イオンに含まれるOHラジカル量を初代のナノイー比100倍(48兆個/秒)まで増やすなど、今もなおコア技術として進化を続けています。
ナノイーの効果の元となる成分。量が多いほど、より高い効果や短時間での効果が期待できる。

新型ナノイーXデバイス(左/ドーム形状の対極板)と旧型(右/4本針形状の対極板)

エオリア 2024年ハイグレードモデル Xシリーズ

開発から得た学び

技術の力を信じ、長期的な視点で挑戦

①お客様の問題を科学的に分析し、技術の力で何ができるのかを考え、試験や検証を通して最適解を見つけ出す②部署の壁を越え、時には外部の専門家や大学の研究機関とも連携しながら、長期的な視点で継続的な投資と努力を積み重ねる③成功するために、成功するまで続ける―これこそが挑戦を成功に導く方法と言えます。

記事の内容は公開時のものです。
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