2024年12月6日
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長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」の下、パナソニックグループが世界で実施しているさまざまな環境取り組みを紹介する「PGI in Action」シリーズ。前回の欧州に続き、今回は北米地域で取り組む他社とのパートナーシップ、従業員個人の取り組み、双方向型のソーシャルメディア・キャンペーンについて、パナソニック ノースアメリカで環境コンプライアンスとサステナビリティに携わるキーパーソンに聞いた。
世界各地で異常気象が確認される中、北米の多くの地域でも深刻な影響が広がり、対応コストが増大している。大西洋沿岸で強力なハリケーンが頻発したり、2023年の夏にカナダで大規模な山火事が複数回発生して大気質に影響が及んだりするなど、多くの人が屋内に留まらざるを得ない状況が続いていた。気候変動がこのような自然災害の増加と激化をもたらしていることは、科学者によって長い間指摘されてきた。
こうした地球環境問題の解決に貢献するため、パナソニックグループは、自社バリューチェーンからのCO2排出量を削減すると同時に、自社の事業を生かし、顧客や社会のCO2排出量削減にも貢献するという長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」(以下、PGI)を設定している。
パナソニック ノースアメリカで環境コンプライアンスとサステナビリティの担当ディレクターを務めるアンドレア・マーフィーは、「北米ではさまざまな方法で地球環境問題に取り組み、パナソニックグループの工場から排出される『スコープ1』『スコープ2』排出量の削減に尽力しています」と語る。スコープ1は自社バリューチェーンから直接発生する排出量、スコープ2は社外で生産された電気や蒸気、温熱、冷熱を購入・取得して使用することで発生する間接排出量を指す。パナソニックグループはPGIの下、CO2ゼロ工場の導入といった自社バリューチェーンにおけるエネルギーロスを減らす取り組みを通じ、スコープ1・2の排出量削減に注力している。
パナソニックASアメリカ社(PASA)では、すでに北米の自社工場(多くはメキシコに位置し、北米に事業所を置く)でCO2実質排出量ゼロを達成している。達成に至るまでに、PASAでは省エネへの取り組み、各拠点での再生可能エネルギーの活用、再生可能エネルギーの調達という3つの段階を踏んだ。
まずは各工場で、破損したパイプや照明の交換など、オペレーション効率を向上させてエネルギーロスを減らすための方法を全部門の従業員が協力して模索した。その結果、屋内外の照明を全てエネルギー効率の良いLEDに切り替え、冷暖房機器をアップグレードし、パイプラインの一部で発生している空気漏れを修理することが決まった。さらに、ソーラーパネルなどの再生可能エネルギー源を屋上に設置した。こうした改善措置が完了した後、各工場は3段階目である再生可能エネルギー調達の段階に移った。
パナソニックグループは、資源消費に依存せずに持続可能な経済成長を目指すサーキュラーエコノミーの考え方を取り入れ、資源の有効活用と顧客価値の最大化に取り組んでいる。グループによるサーキュラーエコノミーの取り組みには、サーキュラーエコノミー型事業の創出と循環型モノづくりの進化という2つの側面がある。
サーキュラーエコノミーの取り組みの一つとして開発された商品が、2022年6月から欧州・北米市場向けに販売を開始した「MULTISHAPE シリーズ モジュール式パーソナルケアシステム」(以下、MULTISHAPE)だ。バッテリーやモーターを集約した1台のボディに5種類のヘッドが着脱可能なモジュール式パーソナルケア商品で、髭・髪・体毛・鼻毛のトリマーや歯ブラシなどの必要なケアパーツだけを購入できる。メインユニットと電源アダプターを共通化する独自の設計により、電動歯ブラシのような単機能の製品を一つ作る場合と比較して、最大60%の資源を節約できる。
さらにパナソニックグループは、米国市場において、MRM Recycling(以下、MRM社)と共同で電気シェーバー回収プログラム「Take Back for Tomorrow」を立ち上げた。ユーザーがMULTISHAPEのウェブサイトからプログラムに参加登録すると、古い電気シェーバーを質や状態を問わずリサイクルでき、MULTISHAPEを30%オフで購入可能なクーポンも取得できる。回収されたシェーバーはまずMRM社に送られた後、パナソニックグループのパートナーであるERI社とRedwood Materials Inc.(以下、レッドウッド社)に輸送され、実際にリサイクルされる。プラスチックの部品はERI社で電気回路から分離されてペレットに再生される。バッテリーはレッドウッド社に輸送され、リサイクルされてパナソニックグループの新たなバッテリーの供給源として使用されるスキームだ。(※)「レッドウッド社との提携がなければ、海外から原材料を購入しなければならず、原材料を米国に輸送することで余分なCO2排出量も発生することになるでしょう。今回のパートナーシップが実現したことで、国内にサプライチェーンを持ち、北米における輸送システムの電化を推進できるのです」とマーフィーは語る。
※レッドウッド社のリサイクル正極材は、2025年からカンザス州デソトの新工場で、リサイクル銅箔は2024年からネバダ州スパークスにあるPanasonic Energy of North Americaの工場で、それぞれ製造するリチウムイオン電池に使用される予定。
「私たちはパートナーやサプライヤーを慎重に選んでいます。掲げる目標が私たちと非常に近い企業と提携することで、積極的に協業しながら共通のゴールに向かって取り組んでいけます」とマーフィー。MRM社やERI社、レッドウッド社といった企業と電気シェーバーのリサイクルプログラムで提携することで、パナソニックグループは環境により配慮した企業になれるだけでなく、サーキュラーエコノミーに直接貢献もできる。
パナソニックグループはMRM社やERI社、レッドウッド社のほかに、カナダの黒鉛製造企業であるNouveau Monde Graphite Inc.(以下、NMG社)、電池材料・技術を手掛けるオーストラリアの企業で米国に工場を持つNovonix Limited(以下、ノボニックス社)や米国の自動車メーカーであるLucid Group(以下、ルシッド社)とも協業している。NMG社とのパートナーシップでは、リチウムイオン電池に使用される活物質である黒鉛について、北米における低環境負荷のサプライチェーン確立を目指している。同社の黒鉛は環境負荷が低く、北米で材料を調達することで物流過程でのCO2排出量の削減にもつながる。またノボニックス社は、人造黒鉛生産時のCO2排出量を削減する新技術を採用しており、2025年より米国テネシー州の工場からパナソニック エナジーの米国工場向けに人造黒鉛が供給される予定だ。こうした革新的な環境技術を持つ北米現地企業との長期供給契約は、サプライチェーンにおける環境負荷低減という点で戦略的意義が大きい。ルシッド社とのパートナーシップでは、高級EV「Lucid Air」にバッテリーを供給している。同社のような電気自動車メーカーと協業することで、リチウムイオン電池市場の成長をけん引し、将来に向けてCO2実質排出量ゼロを世界的に推進できる。
パナソニックグループは消費者や従業員に対し、地球環境問題の解決に貢献する取り組みに参加するよう促している。グループは昨年初めに、NPO団体「One Tree Planted」と協業したプログラムを実施。2023年1月のCES 2023で発表されたこのプログラムは、ソーシャルメディア上で「#PlantItForward」のハッシュタグを付けて投稿するごとに、カリフォルニア州で2018年に発生した「カー火災」で深刻な影響を受けたクリアクリーク流域内の土地に、木が1本植えられるというもの。パナソニックグループのCES2023特設サイトを閲覧して4つのバッジ画像を集め、ハッシュタグを付けてソーシャルメディアで共有した場合も1本の植樹につながる仕組みとした。プログラムは2023年1月のCES 2023開催期間中から、同年4月22日のアースデイまで継続し、合計で63,810本の木が植えられた。
従業員もまた、個人としてサステナブルなライフスタイルを推進するために変わり始めている。米国ニュージャージー州ニューアークのパナソニック ノースアメリカ本社では、多くの従業員が紙やプラスチックのカップの使用をやめ、自分専用のマグカップを持参している。さらには、ローカル線の駅の向かいに立地する利便性の高さもあって、多くの従業員が自動車通勤から電車通勤に切り替えている。
マーフィー自身も、買い物用のエコバッグや、レストランで従来のプラスチックストローの代わりに使えるシリコン製のストローを常に持ち歩いている。「生活に簡単に取り入れられる小さな変化でも、積み重ねていけば、大きな影響を生むことができます」
企業が「CO2排出量を削減します」と発信するのはたやすいが、発生した排出量を正確に算出して数値を公表することは、本当に変化を起こそうとしている企業にしかできないことだ。パナソニックグループは、CO2排出量削減に向けて綿密に計画し、取り組みを続けてきた。「グループ全体で、CO2を現在の世界総排出量の1%に相当する3億トン以上削減することを目指しています。これが達成できれば、ステークホルダーからのさらなる信頼と共感を得られるでしょう」とマーフィーは語る。
地球温暖化を食い止めるべく事業と社会の全体でCO2排出量を削減することこそ、今向き合うべき最重要課題と捉え、取り組みを推進するパナソニックグループ。一つひとつのアクションは、その大小を問わず、「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立というグループの最終的な目標の達成を後押しするチカラになるはずだ。
記事の内容は発表時のものです。
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