2024年12月6日
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世界中で地球環境問題や気候変動に対する社会的関心が高まる中、企業が競争力を維持するためには、サステナビリティに貢献する事業活動・製品開発の推進が不可欠だ。パナソニックグループは長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」(以下、PGI)を掲げ、「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立に向け、独自の目標を設定している。今回、環境取り組みの先進地域といわれる欧州でパナソニックグループが取り組む最前線の変革について、パナソニック ヨーロッパでサステナビリティや環境コミュニケーションを担当するキーパーソンに話を聞いた。
――パナソニックグループが取り組んでいるPGIは、欧州社会におけるニーズの変化にどう対応しているのでしょうか。
シュランゲンフェルト:欧州のステークホルダーは、企業が責任を持って行動すること、つまり、気候変動に対して有意義な行動を実際に起こすことを求めています。PGIの訴求は、パナソニックグループがバリューチェーン全体の脱炭素化に向け、明確かつ強力な取り組みを実施しているということを示す、重要なステップです。
欧州では、特にモビリティと建築の分野で化石燃料からの転換が進んでおり、この二つの分野は、それぞれ同地域でのCO2総排出量の25%と36%を占めるという。
シュランゲンフェルト:モビリティと建築の分野で、サステナビリティの視点を踏まえた事業推進を重視することにより、CO2排出量の大部分を削減できる可能性があります。パナソニックグループはこの分野ですでに、クリーンエネルギーへの転換や電化の実現を可能にする製品やソリューションを提供しています。
パナソニックグループは欧州のモビリティ分野で、EVや電動自転車用円筒形リチウムイオン電池の主要サプライヤーとして認知されている。建築分野では、化石燃料による従来の燃焼系の暖房機器に代わって今後需要の拡大が見込まれるヒートポンプ式温水暖房機事業を推進している。暖房は家庭のエネルギー消費の大部分(約80%)を占めており、家庭からのCO2排出を削減する上で重要な分野だ。
シュランゲンフェルト:パナソニックグループは、モビリティと建築分野におけるサステナビリティの実践を通じて脱炭素社会に貢献しています。これは、PGIにおいて、従来の技術を持続可能な代替技術に置き換えることでCO2排出を削減する「CONTRIBUTION IMPACT」と位置付けるインパクトに当たります。
――欧州地域特有のPGIに関連するビジネスや取り組みはありますか。
シュランゲンフェルト:CO2排出量削減に貢献する製品や環境に配慮した工場の整備、従業員自身のアクションによるサステナビリティへの取り組みなど、欧州地域ではさまざまな施策が進行中です。
ビジネスとしては、ヒートポンプ式温水暖房機事業を重点的に進めています。組織としては、グリーンファクトリー・タスクフォースなどを通じ、長年にわたり独自のGX(グリーントランスフォーメーション)を推進してきました。
同タスクフォースは、製造施設からのCO2排出を削減し、持続可能なものにすることを目的として設立された。エネルギー管理システムを導入することで工場の環境負荷を低減しながら、エネルギー消費そのものの削減を推進しCO2排出量をゼロに近付けていく。
欧州地域ではまた、従業員によるアクションの推進を奨励し、気候変動やプラスチックなどへの問題意識を高める取り組みや、サステナビリティへの実践的な経験を促す取り組みを推進中だ。例えば「グリーンエコノミー・プロジェクト」では、製品パッケージでの環境配慮などの課題について、啓発や実践を組み合わせた活動も実施している。
――環境問題解決に貢献するための活動を推進する上で、パナソニックグループの強みと感じていることを教えてください。
シュランゲンフェルト:PGIを社内外へ示したことにより、グループ内で事業活動を行う上でサステナビリティに配慮することの重要性は非常に高まりました。目指すゴールを達成するには、サステナビリティという観点をグループのあらゆる側面に組み込み、それを全員が理解して支える必要があります。この先には困難な道のりが待っていますが、そこから生まれるチャンスを逃すわけにはいきません。
パナソニックグループは、大きな組織であるがゆえに、規模に応じた相乗効果も生まれます。強みだと特に感じているのは、革新的な新技術を発想して開発する力です。例えば、日本の技術部門では現在、ペロブスカイトという多用途の新たな太陽電池技術を開発しています。ペロブスカイト太陽電池は自由度が高く、従来の屋上に加え、住宅やオフィスの外壁、バルコニーといった建物表面に設置して発電できます。今後もさらに持続可能な社会への移行を可能にする新たな技術が生まれることを期待しています。
ライヒリング:サーキュラーエコノミー(循環経済)とは、物質資源をライフサイクルに沿って最も効率的に利用することを目指す経済システムです。サーキュラーエコノミーでは、製品の耐久性と長寿命、修理可能性の向上、ハードウェアとソフトウェアのアップグレード、シェアリング、リユース、リファービッシュ、リマニュファクチュアリングに重点が置かれます。廃棄物を最小限に抑え、再利用して資源を何度も活用できるようにすることを目指すサーキュラーエコノミーは、いわゆるリニアエコノミー(直線型経済)とは異なります。リニアエコノミーの場合、基本的に製品は一度販売されるだけで、製品の寿命を延ばしたり、資源を別の方法で再利用するために生産者の元に戻したりすることはありません。
EU(欧州連合)は、欧州を最初のカーボンニュートラルな大陸にすることを目指す欧州グリーンディールの基盤「循環経済行動計画(Circular Economy Action Plan)」を通じ、環境問題に対する法律の制定に関して世界をリードしている。
ライヒリング:サーキュラーエコノミーに取り組むことで、資源効率の向上とCO2排出量の削減、特にPGIの重要な側面であるスコープ3(事業者の活動に関連する他社、バリューチェーン全体の排出)での排出量削減を促進します。行動計画の中心は、環境面で持続可能な循環型製品への新たなアプローチを提案することです。EUの持続可能な製品のためのエコデザイン規則(Ecodesign for Sustainable Products Regulation、以下、ESPR)には、製品と資源の循環性に関する広範な法的要件が導入されます。だからこそ、このテーマには集中的に取り組む必要があるのです。
ESPRにより、企業はデジタル製品パスポートを利用してサプライチェーンの全ての事業者や使用資源、資源の扱い方、再利用できる資源の情報提供など、自社製品の透明性を保つことが要求される。
ライヒリング:これはとても魅力的なことです。サーキュラーエコノミーは、企業のビジネスの在り方を根本的に変えることを目指すものです。製品や資源をできるだけ長く使うことが目標なので、企業はビジネスの手法を変えなければなりません。サーキュラーエコノミーとは、変革への挑戦なのです。
ライヒリング:これまでは、一度販売したらその後は製品に関わることのない、リニア型の販売に焦点を当ててきました。サーキュラーエコノミー的アプローチの下では、製品を回収してアップデートや修理を行ったり、資源やデバイスを2回、3回と再利用して寿命を延ばしたりします。つまり、耐久性や長寿を重視したり、製品の修理を可能にしたり、修理のタイミングをできるだけ先送りしたりするのです。
――欧州地域では、サーキュラーエコノミーに関してパナソニックグループにどのような課題とチャンスがありますか。
ライヒリング:主に2つの課題があると考えています。1つ目は、新たな法的要件を満たしていくスケジュールです。製品設計の根本的な変更には3〜7年掛かるため、スピーディーに始める必要があります。グループのビジネスに関わる中で、優れた取り組みをいくつか見いだしています。
2つ目は、循環型の企業になることです。これはわれわれ企業だけの問題ではありません。企業側の変革についてお客様にも理解してもらい、積極的に支援していただく必要があります。新たなビジネスモデルを受け入れてもらえるよう、働き掛けたいと思います。われわれが共に目指すべき変革の目的と価値を伝えることで、業界全体がお客様やサプライヤーなどのステークホルダーと共にバリューチェーンに沿って歩み始めています。
循環型の企業に転換することで、サステナビリティと脱炭素化へのグループの貢献度を高められるだけでなく、お客様との関係も強化でき、グループのブランド価値をいっそう向上させられる。
ライヒリング:ビジネスを循環型にすることで、お客様との距離を縮め、接触頻度を高められます。例えば、あるカメラマンにデジタルカメラを3年間リースして3年後に返却してもらう場合、われわれはその人に再び連絡を取り、カメラがどのように使われてきたかを知ることで、ニーズの変化に沿った別のモデルを探せます。最新モデルでお客様が最新技術を利用できるサイクルの創出が可能になるのです。また、カメラマンがクリエイティビティを最大限に発揮できるように、新たな機能やサービスの提供もできます。われわれはお客様とそのニーズの把握が可能になり、お客様にはパナソニックグループとそのサービスを理解していただけるのです。
――サステナビリティを促進するために、日々の生活で心掛けていることはありますか。
ライヒリング:サステナビリティに真剣に取り組めば、自分自身がより貢献につながる行動をとれるようになります。私にとっては、家族、特に娘たちとサステナビリティについて話し合うことがこれに当たります。わが家にはソーラーパネルがあり、来月にはヒートポンプ式温水暖房機を導入する予定です。家庭で持続可能なライフスタイルを実践することで、良い手本を示そうとしていますが、それだけでなく、旅行の計画を立てるときにもサステナビリティを考慮します。行き先はどこか、飛行機に乗らずに済むか、乗る場合はCO2排出量をいかに相殺できるのか、といった具合です。
シュランゲンフェルト:あらゆる行動を通じ、ポジティブな影響を生むことができます。重要なのは、持続可能な行動を生活に意識して取り入れることです。私は毎日の通勤や市街地への移動、食料品の買い出しに電動自転車を使っています。雨の日も電動自転車に乗っています。車は大好きですが、個人的な挑戦として、代わりに電動自転車を使うようにしているのです。子どもたちも持続可能な行動にチャレンジしています。娘の希望で、家族の食のスタイルがよりベジタリアンになり、肉を食べる量が減りました。こうした小さな一歩が違いを生むのです。
パナソニックグループは、地球温暖化対策とCO2排出量の削減を事業活動や社会全体の最重要課題と捉えている。個人として、事業として、そしてパナソニックグループとして、サステナビリティを推進する行動の全てが「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の実現という究極の目標に向けた一歩であると捉え、これからも世界の各地域でPGIに基づく取り組みを推進していく。
記事の内容は発表時のものです。
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