――今年、知財部門ではパーパスが打ち出されました。どのような経緯で策定されたのでしょうか?
德田:昨年秋に30・40代のメンバーを中心に中期計画の検討をしてもらった際に、「自分たちの存在意義を示す旗印が欲しい」と、自主的に発案されたのが今回のパーパスでした。その背景には、「社会課題がますます複雑になっていく中で、これからの企業に求められるのは、社会課題の解決に取り組み、チャレンジしていく姿勢を持つことだ」という考えがあったようです。その話を聞き、まさにこれからの「拡げつつ、集約する」という動きにフィットする内容だと感じましたね。
――ボトムアップ型で決められたのですね。「無形資産を巡らし、価値に変えて、世界を幸せにする」という一文には、どのような思いが込められているのでしょうか?
德田:3つのポイントがあります。まず、知財部門の活動の対象物を特許権や意匠権、商標権などのいわゆる知的財産権だけではなく「無形資産」として、対象をデータなどにまで範囲を広げていること。次に「巡らせる」というキーワード。無形資産は、私たちが社会で経済活動をしていく上で欠かせない血液のようなものですから、必要なときに、必要な量を、必要な場所に行き渡らせ、足りなければ外から取り入れることをイメージしています。そして最終的に狙うのが、「世界を幸せにする」ということ。会社の一員として事業貢献を目指すだけでなく、社会課題をトリガーに世の中の課題を解決しようとする姿勢も欠かせないと考えています。
――企業活動において、今までは知財の保護を重視する考え方が一般的でしたが、その点も変化していくのでしょうか?
德田:全てが変わるわけではありませんが、近年は私たちだけで事業を展開できるものが少なくなり、社外のいろいろな人たちと新たな事業や産業をつくり出す必要が出てきました。その際に必要なのが、活用を超えた「巡らせる」という観点なのです。そのような観点から、既存業務においても「将来の社会課題解決を見据えた活動」としていく挑戦のマインドが必要だと考えています。