2024年12月3日
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パナソニックグループは長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」(以下「PGI」)を掲げ、カーボンニュートラルを目指した取り組みを推進。同時に、志を同じくする国内外の様々な活動にも積極的に賛同・参画している。2022年10月、経済産業省が実施した「東京GXウィーク」の「第1回 国際GX会合」において、グループCTOの小川 立夫(おがわ たつお)がパネルディスカッションに登壇して基調講演を行った。グループの環境取り組みを紹介した小川は、続いて「脱炭素に貢献する企業評価のありかた」について述べ、世界の有識者と共に温室効果ガス(GHG: Green House Gas)の「削減貢献度」の意義について意見を交わした。
パナソニックグループは、「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立に向け2022年1月にPGIを発表。2030年までに自社の事業に伴うCO2排出量を実質ゼロに、また2050年に向けては、現時点の全世界の排出総量約330億トン(※1)の「約1%」にあたる3億トン(※2)以上の削減貢献インパクトの創出を目指している。
※1:2019年 エネルギー起源 CO2排出量 336億トン(出典:IEA)
※2:CO2排出係数は2020年基準
2030年に向けて、全事業会社のCO2排出量(スコープ1、2(※3))の実質ゼロ化
2050年に向けて、現時点の全世界のCO2総排出量の「約1%(≒3億トン)」以上の削減インパクトを目指す
主に以下のCO2排出削減インパクトで、脱炭素化を推進:
※3:GHGプロトコル(温室効果ガス(Green House Gas)排出量の算定・報告の基準)による区分
地球温暖化の流れを食い止めることは、人類共通の喫緊の課題だ。来るべきカーボンニュートラル時代の未来像を描き、新たな市場・しくみづくりを社会全体で推進していくために、パナソニックグループは自社取り組みに留まらず、日本、そして世界規模の活動にも積極的に賛同・参画している。
2022年3月には、経済産業省が公表した「GXリーグ基本構想」への賛同を表明。
GX(グリーントランスフォーメーション)とは、経済・社会・産業構造を、産業革命以来の化石燃料依存型から、クリーンエネルギー中心のそれへと転換しつつ、温暖化ガスの排出削減を経済の成長・発展につなげる取り組みのこと。「GXリーグ」は、積極的にGXに取り組む「企業群」が、官・学・金でGXに向けた挑戦を行うプレイヤーと一体となって、経済社会システム全体の変革のための議論、そして新たな市場の創造のための実践を行う場である。国際技術競争に勝てる企業群を生み出し、排出量取引の取り組みを透明性高く運用し、その活動によって資本市場・労働市場・消費市場からGX企業が評価されるためのしくみづくりを進めている。
パナソニック ホールディングス株式会社(以下、パナソニック ホールディングス)は、この流れのもと、2022年10月、野村ホールディングス株式会社を幹事とする6社のリーダー企業及び73社のメンバー企業とともに「GX経営促進ワーキング・グループ」を設立。「GXリーグ」の取り組みのひとつである「市場創造のためのルール形成」において、リーダー企業の一員として、日本企業が持つ気候変動への貢献の機会面(市場に提供する製品・サービスによる排出削減等)が適切に評価される仕組みを構築していくこととなった。
また同月、パナソニック ホールディングスは、持続可能な開発のための世界経済人会議(以下「WBCSD」:World Business Council for Sustainable Development、本部:スイス・ジュネーブ)に加盟し、東京で開催された年次総会にも参加した。今回の総会は、WBCSDの日本の会員企業をはじめ経団連、経済産業省との緊密な連携により実現したもの。WBCSDは、200を超える持続可能な開発を目指す先進的な企業が参加するCEO(最高経営責任者)主導のグローバルコミュニティで、ネットゼロに必要なシステムの変革を加速させるために一丸となって活動している。ビジネス・コンピテンシーをリードし、抜本的なコラボレーションを促進、アカウンタビリティを推進することによって、これを実現する。
パナソニック ホールディングスは、WBCSDが目指す理念に共感。持続可能な社会への移行に貢献するべく協働をスタートするとともに、パナソニックグループのPGI活動も加速させていく。
経済産業省は2022年9月27日(火)~10月7日(金)、エネルギー・環境関連の国際会議を集中的に行う「東京GXウィーク」を実施。各国・地域の閣僚や各分野をリードする世界の有識者、指導者が招かれ、東京都内での各種フォーラムや国際会議においてGXの実現に向けた様々な議論が交わされた。
最終日となる10月7日(金)には「第1回 国際GX会合」が開催され、G7から5カ国、2つの国際機関、12の大学・研究機関・民間企業が登壇。オンラインを含め、のべ1,300人以上が傍聴した。
世界規模でカーボンニュートラルを進めていくための具体的な考え方や方法は、実はまだ未成熟な段階と言われている。この大きな社会変革を進めるにあたっては、
などの課題が山積している。
企業による「削減貢献度」についても具体的な評価基準は定まっておらず、その国際標準化も課題のひとつとされている。本会合のオープニングスピーチでは、中谷 真一(なかたに しんいち)経済産業副大臣より「排出削減に貢献した企業を評価する新たな基準を、国際標準とすべき」「来年のG7においても日本から呼びかけたい」とのメッセージが発出された。
この日は「グリーンな市場の創出」「グリーンな製品・サービスを推進するための評価・基準」「グリーンな社会を構築するための国際協調」の3つのパネルディスカッションが実施され、小川は2つめ「グリーンな製品・サービスを推進するための評価・基準」のテーマにおいて基調講演を行った。
脱炭素に貢献する企業評価のありかたについては、2022年7月に行ったパナソニックグループの第二回 サステナビリティ説明会においても「カーボンニュートラルへの貢献を評価するモノサシとしての『削減貢献度』」というテーマで有識者の方々との議論が展開された。今回はさらに課題を明確化し、「削減貢献度」の意義や、同じ志を持つ企業同士でその認知拡大をグローバルに進めることの重要性について述べた。
講演の冒頭、小川はパナソニックグループの成り立ちに触れ、創業者 松下幸之助が1929年(昭和4年)に綱領・信条を制定して以来、パナソニックグループは事業を通じて世界中の人々のくらしの向上と社会の発展に貢献する姿勢を貫いてきたと語った。
また環境経営取り組みとして、PGIの目標設定が、自社だけでなく社会全体の排出量削減を対象としたものであることを改めて強調した。
続いて、「脱炭素に貢献する企業評価のありかた」における現状の課題を振り返った。
企業による温室効果ガス(Green House Gas)の排出量については、「GHGプロトコル」という国際的に認められた算定・報告基準がすでに設けられている。しかし「企業の事業を通じた社会への貢献量」を適切に評価する「モノサシ」についてはいまだ開発途上の段階だ。
今後は「削減貢献度」の評価軸を標準化しこの評価を「機会(ビジネスチャンス)」と捉え、公平なルールを構築することで、社会の理解を得て認知度を高めていくことの重要性を語った。
また、事業を通じたGHG削減貢献(社会への貢献)の認知度向上を目指し、「削減貢献度」の定義・算出方法の国際標準化に取り組んでいることについて触れた。
「削減貢献度」が適切に評価されるためには、脱炭素社会の実現に向かって志を同じくする企業連合で環境を整備していくことが不可欠。そのために動くことで、実現に向けた企業努力(技術開発・イノベーション)を促進し、カーボンニュートラル社会実現の加速に寄与していく仕組みづくりを推進する。加えて業界横断での合意形成、グローバルへの発信とルール策定、「削減貢献度」に資する製品・システム・サービスの普及促進が欠かせないと語った。
小川の発表を受けて、世界の産業界、金融界、行政関係者によるパネルディスカッションが行われた。グリーンな製品・サービスの普及などの企業活動を通じた、社会全体の削減貢献について活発な議論が交わされた。
「スコープ1~3のCO2排出量は、『リスク度合いの判断材料』として捉えている。機会(ビジネスチャンス)の判断材料としては『削減貢献度』が重要となる。企業は製品開発などの優先度を検討するにあたって、『削減貢献度』を考慮して投資判断することが大切。
WBCSDは『削減貢献度』をポジティブに捉えており、現在、ガイドラインを策定しているところ。IECが標準化を進めているが、将来的には規格団体の垣根を越えて使えるように調整していきたい」。
「当社はESGのリーダーとなることを目指している。そのためにも疑いや不正の入り込む余地をなくすことが大切。数多くのソリューションを他社に提供しているが、『削減貢献度』を算出・開示する際にグリーンウオッシュ(※4)と言われないように気を付けている。明確で標準化された計算方法が広まれば、『削減貢献度』をモノサシに様々なソリューションを評価でき、差別化や新しいイノベーションにつなげることができる」。
※4:実際には環境に十分配慮していない商品などを、配慮しているかのように見せかけること
「社会の要望に応じて“持続可能な金融”でありたいと思っている。『削減貢献度』を評価する市場はまだ黎明期で、金融セクターなどのステークホルダーから信頼を得るためには、『削減貢献度』の算定方法の明確化が必須。そのため透明性・比較可能性・標準化が望まれる」。
「『削減貢献度』はGHGプロトコルから独立した考え方と認識している。また、ダブルカウンティングはありうる。例えば軽量な鉄を自動車に採用し燃費が向上した場合、鉄と自動車がそれぞれの貢献を主張できる姿が望ましい。一つしかない受賞メダルを分割して授与するのではなく、貢献した1社1社ごとに個別のメダルを授与するイメージ。
『削減貢献度』を通じて、もっと企業の取り組みが評価されるようになれば、その次のイノベーションを後押しできる」。
こうした発言を受けて、小川は次のように述べた。
「今回の皆さんのご認識と言葉に勇気づけられました。『削減貢献度』はお客様側の削減に対して貢献するものであり、自社のスコープ1・2・3とは切り分けて考えています。良い企業の良い振る舞いが適切に評価され、その結果として投資が集まり、イノベーション創出につながるよう、引き続き公平な算定方法の明確化・標準化に取り組んでいきます」。
モデレーターの有馬氏は次のように語り、セッションを締めくくった。
「『削減貢献度』の概念はこれから成熟していく。今後は『機会(ビジネスチャンス)』として認識されなければならない。排出量と『削減貢献度』を切り分けて考えることは大事なポイントです。民間企業側がパートナーシップをつくり、国がそれを奨励すること、そして努力している企業に金融セクターからの投資が集まり、社会全体のCO2削減が進むこと。それが目指す姿です。ただし透明性などの議論は引き続き必要で、来年のG7でも議論すべきテーマであると思います」。
今後もパナソニックグループはGXを国内民間企業の立場からリードする活動を推進していく。そして、「削減貢献度」をはじめ、企業がもつ気候変動抑止への貢献の機会が適切に評価される仕組みの構築に取り組み、グローバルにも浸透・標準化を進めながら、持続可能なくらしと地球環境の実現に向けて邁進していく。
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