大阪府吹田市――パナソニックグループが推進する「サスティナブル・スマートタウン(SST)プロジェクト」の第3弾、関西では初となる「Suita SST」が、2022年4月、まちびらきを迎えた。「Suitable Town for Fine Tomorrows」をコンセプトに、異業種15社と吹田市との共創が実現。相互連携、分野横断によって、「社会のあるべき姿」を提案した形だ。2025年の大阪・関西万博も見据えたキーパーソンたちの熱い思いに迫る。
※所属部門は取材時のものです
先行SSTで得た学びを活かし、関西でさらなる高みへ
パナソニックグループでは自社工場の跡地を活用して、2014年にFujisawa SST(神奈川県藤沢市)、2018年にはTsunashima SST(神奈川県横浜市)と、それぞれの地域の特色や課題を踏まえたまちづくりに挑戦。藤沢では「住宅中心郊外型スマートタウン」として環境に配慮した多世代がくらしやすいまちづくりを、綱島では「次世代都市型スマートタウン」として産学交流によるイノベーションを実現してきた。
そして今回、大阪府吹田市に国内第3弾となるSuita サスティナブル・スマートタウン(以下、Suita SST)を竣工。「多世代居住健康スマートタウン」として2022年4月末にまちびらきを迎えた。
本プロジェクトを推進してきた藪内は、Suita SSTの位置づけを次のように語る。
「社会のあるべき姿を提案するまちとして、『カーボンニュートラルが当たり前の社会』と『誰もが幸せに生きられるウェルビーイング社会』の実現を目指していきます。エネルギー、ウェルネス、セキュリティ、モビリティ、コミュニティの5つのサービスを軸に、住民の皆様、自治体、大学、パートナー企業などと一体となって、分野横断型のまちづくりを進めます。藤沢、綱島と手がけてきて、『SSTとはこうあるべき』という姿が見えていたこと、そしてこれまでもご一緒いただいたパートナー企業さんが今回も参画してくださったことで、よりスムーズに、さらなる進化を目指すことができたと思います」。
藪内と同じ部門に所属する桂島は、「SSTは、パートナーの皆さんとの共創あればこそ」と語りつつも、彼らからパナソニックグループへ向けられる期待も強く感じたと言う。
「プロジェクトの開始当初、省庁の方とお話する機会があったのですが、『パナソニックグループの手がける街』ということで、省エネ・創エネ・蓄エネなどの側面で大きく期待いただいていることを感じました。また、パートナー企業様からも『パナソニックグループと一緒にやれるのであればぜひ』というお言葉も頂戴しました」。
関西初のSSTというプレッシャーもあったと藪内は語る。「関西はパナソニックグループのお膝元でもあり、地域の注目度も高かったです。2025年の大阪・関西万博に向け、関西がさらに盛り上がるきっかけになれるよう、全力で取り組みました。まちびらきはゴールではなく、スタート。このまちが次世代スマートタウンとしてさらに進化していけるよう注力します。同時に、本プロジェクトで得た知見とネットワークを活かし、新しいビジネスやイノベーションの創造にもチャレンジしていきたいですね」。
日本初の「再エネ100タウン」を実現
Suita SSTでは、「カーボンニュートラルが当たり前の社会」を体現する取り組みとして、街で消費する電力を実質再生可能エネルギーのみですべて賄う「再エネ100タウン(※)」の実現に取り組んだ。
エリア一括受電と再生可能エネルギー、非化石証書等の活用により、街全体の消費電力を実質再生可能エネルギー100%で賄う――これはSuita SSTでぜひ実現したかったこと。もちろんパナソニックグループだけで叶えられたことではなく、関西電力さんをはじめとしたパートナー企業の持つ知見を活かせたことが大きいという。
※街全体の消費電力を継続的に実質再生可能エネルギー100%とすることを目指す。少なくともまちびらきから5年間は実現していく。商業施設、住宅施設を含む街全体を対象とする取り組みは日本初。(2022年4月8日時点、関西電力調べ)
「くらし起点」の発想と「共創」が叶えたまちづくり
Suita SSTにおけるまちづくりは、パナソニックグループが長年培ってきたモノづくりの姿勢――お客様のくらしに寄り添い、どのようにお役立ちできるかを考える「くらし起点」の発想が活かされている。「人」を中心に据えながら、10年後、20年後、100年後のくらしがどうなっていくかをまず想定した上で、それを実現するための空間価値や時間価値を高める手法だ。
そこに、パナソニックグループの想いに賛同してくださったパートナーとの「共創」が加わることになる。電気、ガス、不動産、健康、鉄道、通信、金融、警備、ゼネコンなど多岐の業界にわたる15社に吹田市を加えて「Suita サスティナブル・スマートタウン協議会」を立ち上げ、各々の最新技術やノウハウを活かす共創組織として、未来を先取りするまちづくりに取り組む。
Suita SSTの5つの分野における主な取り組みを紹介する。
ウェルネス分野
「誰もが幸せに生きられるウェルビーイング社会」の実現に向けて、子どもからお年寄りまでそれぞれの世代を支援する教育・子育て支援・医療福祉等のウェルネスサービスのほか、IoTを活用した高齢者の認知機能低下の検知とケアプログラムの提供を目指している。また、エビデンスに基づく「健康まちづくりコード」を策定している。
モビリティ分野
環境配慮型のモビリティシェアリングとして、EVを中心としたカーシェアのほか、吹田市との連携によりシェアサイクルモデル実証を行う。また、「第2のふるさと施策」として、吹田市国内交流都市との連携による公共交通利用の促進(鉄道移動支援等)を行う。
コミュニティ分野
多世代、そして周辺地域との交流が自然と生まれるようなまちづくりを目指し、街の中心部に公園を設置。街のコミュニティ醸成をタウンマネジメント組織「一般社団法人 Suita SSTタウンマネジメント」が担う。
SSTプロジェクトを推進する意義
SSTの役割は、取り巻く社会課題や環境の変化から目をそらすことなく、その解決策を模索し、くらしの中に実装していくこと。例えば、カーボンニュートラルを世の中に先駆けて実現するのもそのひとつだ。「まちびらきからが本当のスタート」となるSSTプロジェクト。「共に創る/共創」を継続し、持続的に「街が進化する」ことで、地域の価値を高めていく取り組みが欠かせない。Suita SSTにおいても、まちづくりに関わるメンバーが共に進化させていくという志のもと、一丸となっている。
「パナソニックグループ内の事業会社からも、今後Suita SSTでチャレンジしたい実証実験などの案が持ち込まれています。社会のあるべき姿は変化するものですから、常にその変化の半歩先を進み、この街でくらす人のお役に立てるサービスを提供していきたい」と桂島は語る。
Suita SSTでは、吹田市等が近隣で進める北大阪健康医療都市(健都)(※)とも相互連携し、地域の価値向上につながる取り組みを推進するとともに、超高齢社会を迎える日本の社会課題解決やSDGsの達成に貢献していくほか、大阪・関西万博に留まらない、関西の様々なプロジェクトへ寄与することを目指す。
※北大阪健康医療都市(健都):吹田市と摂津市の両市にまたがる健康・医療のまちづくり。
環境とウェルビーイング社会への貢献を目指して
「これからもその時代時代によって絶えず変化するお客様一人ひとりのニーズを捉え、最適なサービスを提供しつづけることで、未来のまちづくりを先取りして推進したい」と語る藪内。今後様々な実証実験も行われ、関西で新しいイノベーションが誕生する地として成長していく。そのパワーと実績が関西圏を盛り上げ、スマートシティ、そしてより大きな都市、社会というくくりにおいても、より豊かで便利、快適なくらしの実現へとつながっていく。
パナソニックグループは2022年、環境コンセプト「Panasonic GREEN IMPACT」を発信。自社のCO2排出を減らすと共に、くらしやビジネスにおけるCO2削減にも寄与することで、社会と共にカーボンニュートラルの実現を目指していく。また、世界中の人々の「くらし」と「しごと」の場面において、快適で安心、心身ともに健康で幸せな状態(ウェルビーイング)への貢献も目指している。SSTプロジェクトは、これらを具現化し進化し続けるソリューション。これからも、お客様一人ひとりの「幸せのチカラ」になることを目指し、邁進していく。
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