パナソニックは2月2日に2020年度第3四半期(3Q)の決算を発表した。注目すべきは、「事業成長」の説明に多くの時間が割かれたことだ。実は、パナソニックは、2019年からの中期戦略で「低収益体質からの脱却」を掲げており、固定費の削減や赤字事業の撲滅など、経営体質強化に集中してきた。その最中で、にわかにクローズアップされた「事業成長」。その意味するところは何か――。
年間見通しを上方修正 数字に表れたパナソニックの好調ぶり
3Qでは、調整後営業利益は2Qに続き前年から増益を達成し、利益率でも7.9%という高い水準を実現。コロナ禍の影響を最小限に抑え、資本市場の想定を大きく上回った。売上高についても、為替や非連結化影響を除く実質ベースで増収(前年同期比)に転じた。この状況を踏まえ、年間業績見通しを、売上高で当初公表値から+1,000億円、利益についても調整後営業利益で+800億円、純利益で+500億円と上方修正した。市場コンセンサスを大きく上回ったことを好感し、翌日の株価も上昇した。
この好調な業績を牽引したのが、他でもない「事業成長」だ。
中長期の社会変化を捉えた事業活動が、利益を牽引
パナソニックが「事業成長」の事例として挙げたのは、「空調・空質、公衆衛生関連事業」、「EV向け車載電池事業」、「情報通信関連事業」。大きな社会課題と向き合い、お客様に寄り添う、まさに「社会の公器」としてのパナソニックらしい事業だ。
「空調・空質、公衆衛生関連事業」では、「ナノイーX」「ジアイーノ」といった独自テクノロジーを搭載した関連商品群の拡充・増産により、需要拡大を捉えてきた。また、真空断熱材を用いたワクチン・医薬品輸送用保冷ボックスの開発など、コロナ禍の中で社会の要望にマッチした取り組みも推進している。
「EV向け車載電池事業」では、世界的にカーボンニュートラルの実現に向けた機運が高まりEV需要が拡大する中、パナソニックの技術が生きる円筒形車載電池で、北米工場での生産能力拡大、電池の技術開発、ノルウェー企業との戦略的提携など対応を強化している。なお、円筒形車載電池事業は年間で黒字に転じる見通しだ。
さらに、「情報通信関連事業」では、リモートワークや5G等、情報通信関連への投資が拡大する中、システムやデバイスの需要増に応えた。実装機は、過去最大の年間生産台数となる見通しだ。
経営体質強化の取り組みは着実に進捗
しっかりとした「事業成長」が見えてきた一方で、成長を確かなものにするための基盤固めも順調だ。
直近の中期戦略において注力している固定費削減と構造的赤字事業への対策を柱とした、「経営体質強化」の取り組みは1年前倒しでの達成見通しとなった。中期戦略の残り1年も手綱を緩めることなく、さらなる利益貢献につなげていく。車載事業やテレビ事業など、課題となっていた事業の収益改善も着実に進捗している。
パナソニックは、グループ全体の収益力向上を図るため、2022年4月に持株会社制へ移行する。「専鋭化」により、事業毎の競争力を一層強化するのが目的だ。社会変化を捉えた事業活動でお役立ちを拡大し、利益増に繋げる強い経営体質。今回の決算内容を見る限り、パナソニックが今、その体制を確立しつつあることは間違いなさそうだ。