【更新】2021年5月24日動画を追加
いまやビジネスの現場でも重要視されている「サスティナビリティ」。パナソニックは、人々のくらしに寄り添うメーカーの責任として、早くからこの視点をもち、アクションに繋げてきた。2001年4月、家電リサイクル法制定に伴い、パナソニックは家電リサイクル拠点「パナソニック エコテクノロジーセンター(PETEC)」を兵庫県加東市に置き、操業を開始。リサイクル事業を、持続可能な社会の実現に欠かせないものと位置づけ、技術力と創意工夫で使用済み家電から新たな価値を生み出し、サーキュラーエコノミーの実現に貢献するPETECの取り組みに迫る。
「商品から商品へ」の循環を目指して
「リサイクル」という用語が浸透して久しいが、商品として役目を終えたものから再び資源をよみがえらせ、価値ある素材として次の商品に繋げる「循環」は、そう容易なことではない。特に使用済み家電は、様々な大きさ、形状、材質、状態のものがリサイクル工場へ搬入され、解体選別が難しい。PETECでは、人の手による解体と機械による選別を高度に組み合わせ、工程そのものも進化させることで、効率的で高精度な資源化を可能にしている。
例えば、エアコン。室内機のリサイクルには、従来、多くのネジを手作業で外しながら解体する重労働を伴っていたが、工程を見直し、部品が集中する端部を切断できる装置を導入することで、効率的に解体ができるよう改善。作業者の負担が軽減し、エアコンの解体、選別のスピードが飛躍的に向上した。
解体作業のほか、複雑に混在する資源をいかに高精度に選別できるかという点は、重要な課題だ。取り出す資源の純度が低いと、新たな製品に役立てることはできない。例えば冷蔵庫では、金属やプラスチックが混じり合った破片群から、風力・磁力などを利用した選別装置を駆使して、鉄・ウレタンフォーム・銅とアルミの混合片(ミックスメタル)など、非常に細かい選別を行っている。
さらにPETECでは、ポリプロピレンなど3種のプラスチックを、純度99%以上という高精度で選別し、リサイクル可能な資源として回収する技術を2010年に開発し、これまで廃棄、あるいは燃料とする以外に使途がなかったシュレッダーダスト(有価資源を取り出した後に残ったプラスチックなどの破砕片)から、資源化への新たな活路を開いた。また、この開発から4年後には、選別精度はそのままに、従来比約3倍のスピードでプラスチックを瞬時に同時選別する技術の開発に成功し、作業効率も飛躍的に向上した。
こうした努力の積み重ねにより、PETECでは現在、手掛ける使用済み家電全体で約90%と、高いリサイクル率を誇っている。
製品リサイクルの枠組みを超えて
PETECでは、先述の様々な種類が混じるプラスチックを選別する技術や、鉄スクラップの安定した資源化を実現するスキームなど、製品リサイクルに留まらない、リサイクル市場全体をリードする取り組みで、再生資源の価値向上に努めてきた。
また、パナソニックの設計担当者へのフィードバックも密に行い、意見交換だけでなく、設計者自らが商品実物の解体を体験する機会を当初から積極的に設けてきた。2005年からは、部品点数の削減やプラスチックと金属の分別が不要な設計など、新製品の設計ガイドラインにリサイクル配慮設計が盛りこまれている。パナソニックの家電には、実は随所にPETECの知見が活かされているのだ。
オープンな工場として、広く社会へリサイクルの取り組みを伝える
PETECは、子どもから大人まで、海外からは実に133もの国と地域から広く見学者を受け入れ、リサイクルへの理解を広める活動に尽力してきた一面も持つ。「見学者からは、『ここまで丁寧に回収しているのか!』という驚きのお声を頂きます」とPETEC社長の河野は、顔をほころばせる。来年2021年4月には操業開始から20年を迎えるが、見学者の累計は20万人を目前にしており、その数は国内家電リサイクル工場で随一。PETECが、これまでの歩みから、リサイクル業界で確固たる地位を築いてきたことがうかがえる。
絶え間ない努力で再生資源の利用拡大やリサイクル技術の進化に寄与し、さらには、その知見を広く社会へ還元し続けるPETEC。製品リサイクルに留まらず、サーキュラーエコノミーの実現に多角的に貢献するPETECの活動は、パナソニックが描く「持続可能な社会」の実現に向け、確実に大きな一翼を担っている。
(2021年5月24日更新)動画:数字で見るパナソニック エコテクノロジーセンターの20年