ベルリン初のスマートシティ・プロジェクト「Future Living® Berlin」で、地元ドイツ、ベルリンの企業に並び、日本企業として唯一名を連ねているのがパナソニックだ。環境先進国ドイツの首都 ベルリンで、なぜパナソニックが受け入れられたか。パナソニックが挑戦する、サスティナビリティと生活の利便性を両立したスマートシティとは何か。現地からレポートする。
ヨーロッパでも随一の先進工業国であったドイツは、他国に先駆けて緑化推進や脱原発などに取り組んできた。1994年には、国の基本法で、次世代のために自然を守る責任があることが明記され、近年では、石油や電力に対する環境税の導入、電力事業者への再生可能エネルギー買い取り義務付け等、まさに環境先進国として国を挙げて環境問題に向き合っている。こうした高い環境意識に加え、首都ベルリンでは、エネルギーや人口動態などの大きな社会課題に対し、2017年、行政の支援の下、スマートシティ・プロジェクト「Future Living® Berlin」が発足した。
パナソニックは、長年に亘り培ってきた加熱・冷却の技術、太陽光パネルやバッテリーによるエナジーソリューション、そして何より未来を創るイノベーションへの熱意が評価され、このプロジェクトにおけるパートナーの地位を獲得した。
パナソニックの貢献1:エネルギーソリューション
今回の貢献の大きなポイントは、パナソニックがこの「Future Living® Berlin」のために開発した、新たなエネルギーソリューションだ。現地のR&Dセンターでは、欧州での環境意識の高まりを反映し、電気給湯が可能で省エネ性能を高めたエネルギーマネジメントソリューションの開発や、ヒートポンプと太陽光パネルを組み合わせたエネルギー制御の開発を進めていた。今回パナソニックは、独自のヒートポンプ式温水暖房機に、太陽光発電や蓄電池を組み込んだ高効率なエネルギーマネジメントシステムで、ほぼCO₂フリーを達成することに成功。さらに、エネルギーの使用状況は、クラウドで管理され、住民によるエネルギー使用量のチェックや温度管理のみならず、メンテナンスの効率化や、リモート化も可能にした。
パナソニックの貢献2:IoTによる快適性
エネルギーソリューションに加え、もう一つのパナソニックの貢献は、テレビ・スマートスピーカーなどを組み込んだIoTインフラによる快適性の実現だ。住戸にスマートスピーカーを導入し、照明やテレビ、窓の開閉などの操作を音声で可能にした。また、スマートシティ全体を管理するネットワークにより、テレビ画面で住民向けの情報を表示するなどのサービスも提供する。
「Future Living® Berlin」で、パナソニックが目指したのは何か。パナソニック ヨーロッパ会長兼CEOの鈴木淳一の答えは、「未来のくらしそのもの」と、明快だ。「当社は、ソーシャル、デジタル、コネクティビティにフォーカスし、環境に優しくサスティナブルな生き方を実現していく」。
「Future Living® Berlin」では、すでに全戸で入居が完了し、未来に向けた新たなくらしがスタートしている。当社のお客様起点の発想による「くらしやすさ」への提案力と、環境負荷低減を実現する技術力は、「Future Living® Berlin」に住む人々の幸せに繋がっていくことだろう。
Future Living® Berlin概要
- 所有者:GSWシグマリンゲン社
- コンセプト:スマートでサスティナブルな生活を実現
- 場所:ベルリン郊外 南東部(Berlin-Adlershof, Groß-Berliner Damm)
- 面積:7,604m²
- 戸数:90戸(マンション)
- 着工・入居時期:2017年7月着工、2020年1月より入居開始
- 公式ホームページ(ドイツ語/英語):https://future-living-berlin.com/