
2025年6月11日
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2022年3月30日に、主要各紙に新体制が発足することをお伝えする広告を出稿し、4月1日には、新生パナソニックグループの経営戦略について記者発表をさせていただきました。広告や記事をご覧いただいた方もいらっしゃるかもしれません。
その中で発信した「幸せの、チカラに。」
これは私たちパナソニックグループの新たなブランドスローガンです。
これまでのブランドスローガンは、「A Better Life, A Better World」でした。これはパナソニックの綱領に謳われた「社会生活の改善と向上を図り、世界文化の進展に寄与せんことを期す」を直接表現したスローガンで、これをいま変えるべきかどうかについては大いに悩みました。
私は、2020年の10月末にグループ全体のCEOを担うことに腹をくくってから、改めて、当社が1990年以降の30年にわたって様々な施策に挑戦しても販売成長を果たせず、営業利益も低迷し、社員の皆さんも必ずしも「私はパナソニックの社員!」と誇りを持っていただけていない現状を直視せねばならないと思いました。
一方、その当社の現状に比べて、当社が燦然と輝いていた時代……「日本の製造業の代表として松下とトヨタさんが並び称された時代との違いは何なのか?」ということについて自問自答を繰り返し、改めて創業者・松下幸之助が生涯をかけて何を求めていたのかを着目すべきだと考え、自分なりに研究しました。
その研究を通じて改めて知ったことがありました。
松下幸之助は、1932年の第1回創業記念式典において以下のように表明しています。
精神的な安定と、物資の無盡藏(むじんぞう)な供給とか相まつて、初めて人生の幸福が安定する。こゝに實業人(産業人)の眞使命がある。
その14年後の1946年のPHP研究所の創設においては、以下のように述べられています。
『繁栄によって平和と幸福を』ということを私どもの研究と運動のモットーとして掲げ、このモットーの英訳“Peace and Happiness through Prosperity”の頭文字をとってPHP研究といい、PHP運動と唱えるのである。ここに繁栄というのは、単に金持ちになるとか、暮らしが豊かになるとか、というだけのことではなく、いわば物心一如の繁栄ということであって、くだけた言い方をすれば、『心も豊か、身も豊か』というようなあり方をいうのである。
PHP研究所『松下幸之助発言集 36』
さらにそこから33年後、1979年の松下政経塾の設立趣意書には以下のように記されています。
日本の現状は、まだまだ決して理想的な姿に近づきつつあるとは考えられない。(中略)従って、今日の国の姿をよりよきものに高め、すすんでは国家百年の安泰をはかっていくためには、国家国民の物心一如の真の繁栄をめざす基本理念を探求していくことが何よりも大切であると考える。
これらのことから、私は創業者が生涯をかけて追い求められたものは「物心一如の繁栄」、つまり「物と心が共に豊かな理想の社会の実現」であり、これが250年計画に目指すところそのもので、この遺志を継がずして私の職責を全うすることはできないと考えるに至りました。
そして、PHP研究所設立の同じ年、1946年に創業者が制定した綱領の「社会生活の改善と向上を図り、世界文化の進展に寄与せんことを期す」というのは、「物心一如の繁栄」を当時の言葉で社員やご関係先様に分かりやすく表現されたものであると理解したのです。
ではこの綱領を、今風の言葉で表現した「A Better Life, A Better World」を、いま言い換える必要があるのか?それは必要ないのではないか?
しかし、「A Better Life, A Better World」をこのまま皆さんに発信し続けることで、創業者が生涯をかけて追い求めた「物心一如の繁栄」に近づいていけるのだろうか?
「A Better Life, A Better World」は、お客様に寄り添うことなく“自分目線”のBetterをプロダクトアウト的に提供することに繋がってはいないだろうか?
社内や取引先から「手触り感がない」、「結局何をしたいんだ」等の厳しいご意見をいただいていたこともありました。
スローガンは掲げず、言葉やお話することを通じて発信し続けることで良いのではないか?等々、大いに悩みました。
しかし、私の悩みも理解し、創業者の意を改めて汲み取り、社内外にパナソニックは何者なのかを表する言葉は必要だ、との信念をもって考え抜いた社員たちが生み出してくれたのが、新しいスローガン「幸せの、チカラに。」でした。
この9文字には、
精神的な安定と、物資の無盡藏(むじんぞう)な供給とか相俟(あいま)つて、始めて人生の幸福が安定する。こゝに實業人(産業人)の眞使命がある。
という、松下幸之助が示した「命知」(パナソニックの真の使命)が見事に表現されています。
そして、社員の皆さん一人ひとりが、お客様一人ひとりの幸せに寄り添って欲しいという私の思いをも、見事に汲み取っている。
短い言葉ではありますが、このスローガンにはそのような思いが凝縮されており、これこそが、パナソニックに受け継がれるべき精神の根幹そのものなのです。
この言葉を社員一人ひとりが胸に刻み、お客様第一の心で、それぞれの事業で、新たな未来を切り拓いてまいります。
※本記事は「楠見 雄規@パナソニック|note」からの転載です。
記事の内容は発表時のものです。
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