2024年11月22日
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グループCEOの楠見は2024年1月5日、従業員に向けて年頭メッセージを発信した。パナソニックグループは、「物心一如の繁栄」すなわち「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現に向け、各事業が「競争力強化」に注力する2年間を経て、今まさに成長ステージへとギアチェンジし変革を加速している。今回のメッセージでは、創業者・松下幸之助が経営基本方針の希薄化への警鐘を鳴らした講話から、成長に向けた経営基本方針の実践の重要性を紐解き、時代遅れのルールや既成概念にとらわれず、従業員一人ひとり、そして事業の成長が伴う一年にすることへの思いを伝えた。
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
1月1日に発生した令和6年能登半島地震により犠牲となられた方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。被災地域の皆様の安全と一日も早い復興をお祈り申し上げます。
さて、この年始に、新たな挑戦を心に描いておられる方も多かろうと思います。その前提となるのが、健康と安全、そしてコンプライアンスです。特に各職場では、ゼロ災に向けて安全第一での仕事をお願いします。
改めて、創業者・松下幸之助が目指した「物心一如の繁栄」への思いに立ち返るべく、今年もパナソニックミュージアム松下幸之助歴史館に来ました。「物心一如の繁栄」は私たちグループの使命です。1932年の第1回創業記念式で、創業者は真の使命を悟り、「精神的な安定と、物資の無尽蔵な供給が相まって、初めて人生の幸福が安定する。自分が松下電器の真の使命として感得したのはこの点である」と発信されました。その後、1946年のPHP研究所の創設時や1979年の松下政経塾の設立時の趣意書にも、「物心一如」という言葉が出てきます。すなわち、この「物心一如の繁栄」は、創業者が生涯をかけて追い求めたものだと思うのです。
その政経塾が開塾した頃の1982年、経営方針発表会で創業者が非常に強い危機感をもって、経営責任者あるいは従業員に訴えた講話があります。
今日、松下電器(パナソニックグループの前身)が大過なくやっていっているということは、皆さんの努力によるところでありますが、一面、松下電器には松下電器伝統の基本方針というものがございます。その基本方針を守って、その線に沿うて仕事をしたならば、大きな失敗はありません。
しかし、最近になって基本方針を最高幹部が理解していないようなかたちにおいて失敗を重ねてきている。
(中略)
我々は、心血を注いで何千何百という人が日本の繁栄を目指して伝統の精神を守ってきた。時代は変わっても、真理に変わりはありません。松下電器伝統の精神の上に、新しいものを加えていくことは、これはやらないかん。
けれども、根本の指導精神を批判するということは断じてやってはならない。
(中略)
今後、松下電器はもっと飛躍せないかん。飛躍を止めているのは誰かと。それは案外、飛躍を止めているのは我々ではないかと。責任は従業員ではなく、経営者にあるとそう感じている。
(1982年 経営方針発表会より)
「経営基本方針をないがしろにして、成長を止めているのは我々」。この場合の「我々」とはむしろ経営者を指しますが、いずれにしても、この経営基本方針がないがしろになっていることに強い警鐘を鳴らしたわけです。そして1989年に創業者が他界されてから、経営基本方針の実践がさらに失われていったのではないかと、私は思います。
それぞれの時代の経営者がそれを意図したわけではありません。経営状況が悪くなり、各事業が本当は競争力の抜本的な改革をやるべきところを、販売・利益の計画達成を最優先にし、目的化してしまった。あるいは、失敗を繰り返さないようにルール・規程でそれぞれの挑戦を縛っていった。その結果、この30年、自主責任経営が行われなくなっていたのではないでしょうか。
このような思いもあり、私は60年ぶりに経営基本方針を改訂して、皆さんに実践を徹底していただこうとしたわけです。
パナソニックグループでは、一人ひとりが社員稼業を行うリーダーです。その基本になるのが、Panasonic Leadership Principles(PLP)の6つめにもある、一人ひとりの「自主責任感」。すなわち、全能力を傾けて、より良き方法・手段を生み出し、それを果敢に実行し、より大きな成果をあげることを使命とする責任感です。
これは、ルールやプロセスに従ってその通りにやることとは全く違います。それは仕事ではなく作業です。仕事とは、ルールやプロセスを改革してでも、より効率的に、より大きな価値を生むような活動です。これは自主責任感の実践そのものであり、パナソニックらしい仕事だと私は思います。
時代遅れになったルールや既成概念を壊して、皆さん一人ひとりのポテンシャル・能力を「UNLOCK」したい。そして、一人ひとりが全能力を傾けて、どんどん挑戦できる会社にしたいと思うのです。
そこで、私自身の「今年の一字」は『啓』としました。英語の「UNLOCK」に近い意味の漢字を探すのに苦労したのですが、『啓』は、「ひらく、開放する」、そして「人の目をひらいて物事を理解させる」との意味を持ちます。「理解させる」には「自分自身に理解させる」ということもあると思うのですね。また、「闇が明るくなって夜が明ける」との意味もあるので、この『啓』という字を選びました。
お客様価値を生まないことはやめる。そして、単純な作業はできるだけIT化する。一人ひとりは価値ある仕事に集中する。その中で全てのポテンシャルを最大限に発揮していただく。今年を「皆さんの成長」と「事業の成長」が伴う年にしましょう。皆さん一人ひとりの自主責任感の発揮に大いに期待しています。
記事の内容は発表時のものです。
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