人々の生活に密着している乾電池。パナソニック エナジーの推計によれば、2022年度における日本国内の乾電池の使用量は17億7,000万個。1人当たり14.2個にも及ぶ。
家庭から出た使用済み乾電池のほとんどは自治体によって回収され、最終処理へと進む。乾電池をきちんとリサイクルすれば、鉄、亜鉛、マンガンなどを抽出し、再び材料として循環することが可能だ。持続可能性の面からも、使用済み乾電池は有用な資源と位置付けられている。
乾電池リサイクルを加速させるべく、国内の乾電池製造・販売トップメーカーであるパナソニック エナジーは、イオンリテール、東京製鐵と組んで2023年6月から回収・再生の実証実験を開始した。最終ゴールは「乾電池to乾電池」、すなわち資源が完全に循環するサーキュラーモデルである。メーカーが主導した点が画期的だが、何が同社をそこまで突き動かしたのか。その原点について、パナソニック エナジーで環境担当を務める道津 哲男(どうつ てつお)氏は次のように話す。
「パナソニックグループでは長期環境ビジョン『Panasonic GREEN IMPACT』(PGI)を掲げ、2050年に世界のCO2総排出量の約1%にあたる3億トンの削減インパクトを目指しています。当社は事業活動そのものでPGIを牽引し、これまでにCO2ゼロ工場を世界各地で実現してきました。こうした脱炭素の動きと並行し、資源循環に対しても注力していこうと方針を定めたのです」(道津氏)