「弱いロボット」というコンセプトが世間に受け入れられるだろうと信じるに足る根拠が既にそろっている。2021年2月に実施したニコボのクラウドファンディングでは目標支援者数をわずか6時間半で達成し、公開されたニコボの動画は国内外で大きな反響を呼んだ。2022年6月にリターン品としてニコボを受け取ったユーザーからは、ニコボで癒やされた、よく笑うようになり会話が増えた、というフィードバックが得られた。
増田「ニコボにはゲーミフィケーションのアプローチを採用し、より多くの時間をユーザーと共にすることで学習し日々の振る舞いに変化を与える仕様にしました。ニコボが新しい言葉や目の表情、おならを披露することで、ユーザーが新たな発見や驚きを得られるようにしたのです。ニコボの知能は人間の2歳児程度までしか成長しませんが、その後も変化し続けていきます。そのため、ユーザーがニコボに飽きにくく、長期的な関係を築くことができるのです」。
ニコボ以前にも家庭用ロボットは世に出ていたが、従来のコンパニオンロボットやバーチャルアシスタントと異なるのは、ニコボが個体としての独立性を持つ点だ。ニコボとコミュニケーションするためには、「ニコボ、何々して」などと命令する必要はない。ニコボは人間の思い通りには振る舞わない。ペットが飼い主の呼び掛けを無視することがあるように、人に話しかけられて反応することもあれば、しないこともある。
増田「設計時に、あらゆる便利な機能をニコボから排除することを決断したのです。それによって、ユーザーは『ニコボが何かをしてくれる』という期待を一切持たなくなります。初期ユーザーの中には、ニコボのことを同居人、ペット、あるいは家族と表現する方もいらっしゃいます」。
ニコボは、ロボットでありながら、気まぐれで、感情があるかのように振る舞う。増田はユーザーがニコボを同居人のように考えてくれることを期待している。ニコボに本体価格に加えて月額費用を設定しているのもそれが理由だ。ニコボを購入するとき、新しくペットを飼うときと同じような決心をすることをユーザーに促すためだ。長期間の人とニコボの関係構築をビジネスコンセプトに掲げ、有料のサポートサービスである「NICOBO CLINIC」を用意し、ニコボの調子が悪いときに治療するサービスやニット交換サービスを提供している。