あかりで、世界から貧困をなくす~無電化地域の未来を照らすプロジェクト

2022年12月9日

環境・サステナビリティ / 特集

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あかりで、世界から貧困をなくす~無電化地域の未来を照らすプロジェクト

多くの発展途上国では、電気が無いために貧困から脱却できずにいる。パナソニックグループは2013年から国際機関と連携し、そうした地域の電化を推進するさまざまな取り組みを実施してきた。2022年10月からは、ケニアでの国連や国際NGOの取り組みに参画し、無電化地域に対し「教育」「健康」「収入向上」の機会創出のための支援をしている。

世界では推定40億人が年収3,000ドル以下で生活している(※1)。だが、貧困とは購買力の不足だけが問題ではない。そこには教育を受ける機会や、電気などの基礎的なインフラを享受できないといったさまざまな問題が含まれている。いまなおアジアやアフリカなどで約6億6,000万人が「無電化地域」にくらし、アフリカの農村地域では電化率が33%に満たない(※2)のが現状だ。これは、電気があることを当然としてくらしている先進国の人々にとっては、なかなか想像が難しいことかもしれない。

二股ソケットを発明し、日本のくらしに電気を普及させた創業者・松下幸之助は、世界から貧困をなくすという信念を持っていた。パナソニックグループはその信念を受け継ぎ、2013年から無電化地域の貧困問題の解決に向けた取り組みを開始。現在は、グループの再生可能エネルギー技術を活用する「無電化地域の未来を照らすプロジェクト~LIGHT UP THE FUTURE~」で、あかりや電気を無電化地域に届け、「教育」「健康」「収入向上」の機会を創出することで、貧困のない社会づくりを支援している。

【LIGHT UP THE FUTURE】無電化地域の未来を照らすプロジェクト

企業市民活動で、貧困と環境の問題に光を投じる~誰もが自分らしく活き活きとくらす「サステナブルな共生社会」の実現に向けて

パナソニックグループは過去50年以上にわたり、さまざまな企業市民活動に取り組んできた。

2018年には、創業100周年を機にこれまでの活動を振り返り、「世界から貧困をなくす」ことがパナソニックグループの主たる使命であるべきという松下幸之助の信念に基づき、「貧困の解消」を企業市民活動の重点テーマに決定。その後、現代のグローバルな社会問題を念頭に置いたグループ経営基本方針の見直しや、持続可能な社会のための新たな環境コンセプト「Panasonic GREEN IMPACT(PGI)」を掲げ、2022年から「環境活動」を2つ目の重点テーマに定めた。加えて、これら2つの課題を解決するベースとして重要なのが「人を育てること」であるという強い思いの下、「人材の育成(学び支援)」を3つ目の重点テーマとした。

1つ目と2つ目の課題を独自に組み合わせた企業市民活動が、LIGHT UP THE FUTUREプロジェクトだ。地域/国際NGOと連携し、パナソニックグループのCO2を排出しない再生可能エネルギー技術を生かして、貧困で生じる問題の緩和に取り組んでいる。ソーラーランタン、エネループ ソーラーストレージ、太陽光発電・蓄電システムなどの技術が、現地での支援プログラムと組み合わせて活用されている。

本プロジェクトは製品を一度寄贈して終わりではない。あかりや電気を届けることを起点に、さまざまな形で無電化地域が抱える固有の貧困問題に取り組み、「教育」「健康」「収入向上」の機会創出を通じて、長期的な構造の変化を促すことを目指している。

図版:再生可能エネルギーの“あかり”がもたらすくらしの変化

LIGHT UP THE FUTUREプロジェクトがもたらした「持続可能な成果」

無電化地域にあかりや電気を届けるために、パナソニックグループは2013年以降さまざまな取り組みを実施。2013年から2018年には、「ソーラーランタン10万台プロジェクト」を通じて、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの30の国に10万台以上のソーラーランタンを寄贈した。

その後、さらに高い目標を掲げて立ち上げたのがLIGHT UP THE FUTUREプロジェクトだ。グループの再生可能エネルギー技術を活用したこのプロジェクトは多くの成果を上げた。

LIGHT UP THE FUTUREプロジェクトによる無電化地域への貢献

  • 灯油ランプをはじめとする、健康被害や火災リスクのある危険な光源への依存削減
  • お産や応急処置を含む、医療施設の夜間診療促進
  • 夜間学習の機会の提供
  • 労働可能な時間の拡大
  • 集会の開催を通じた、コミュニティの結束強化

これら初期の成功を足掛かりに、2018年には、インドネシア、ミャンマー、ケニアの村を対象に「無電化地域ソリューションプロジェクト」という取り組みにも着手した。「コミュニティの持続可能な発展」という社会インパクトを実現するために、地域ごとに独自の活動計画を立て、3年にわたって取り組むことでさまざまな成果が得られた。また日本では、無電化地域の貧困問題について課題意識を持った従業員や一般の人が誰でもすぐに手軽に参加できる「みんなで“AKARI”アクション」を開始。読み終えた本やリサイクル品の寄付により、無電化地域へソーラーランタンを届けることができるようにした。さらに2022年10月からは、ケニアで国連人口基金(UNFPA)と協働し、新たなLIGHT UP THE FUTUREプロジェクトの取り組みを開始している。

無電化地域の貧困解消を目指して――ケニアでの2つの取り組み

現在、パナソニックグループが本プロジェクトの一環としてケニアで実施している、2つの取り組みを紹介する。

ナロク県 エンクトト地区(協働団体:ワールド・ビジョン・ジャパン)

2018年に、ケニアのナロク県南部 エンクトト地区の無電化地域でスタート。同地区にはマサイ族がくらしており、生計は昔からの放牧と小規模農業が頼りだ。土地政策の影響で、近年、放牧できるエリアが限られてきており、代わりの新たな産業を興して支えるために電気が求められている。また、学校へ通う子どもたちが増え、夜間に勉強するためにもあかりが必要だ。

ナロク県での取り組みの目的は、再生可能エネルギーによるあかりと電気を導入すること。加えて、国際NGOワールド・ビジョン・ジャパンと協働し、教育と医療にアクセスできるようにすること。パナソニックグループは、太陽光発電・蓄電システム2台、ソーラーポンプシステム1台、エネループ ソーラーストレージ7ユニット、ソーラーランタン150台を寄贈した。

新型コロナのパンデミックの影響で、一部計画の規模を縮小せざるを得なかったが、3年にわたる取り組みは2021年9月におおむね予定通りに完遂した。パナソニックグループとワールド・ビジョン・ジャパンが2022年10月に同地域を再訪し、持続可能な変化が根付いたかどうかを確認したところ、コミュニティのくらしは、電化によって改善していた。

さらに、小学校に寄贈した太陽光発電による小型蓄電システムの余剰電気を、近くの市場に販売することを計画。電柱を立てて電線を小学校から市場まで延長した。この売電収入で、小学校は蓄電システムのメンテナンス費用を賄えるように。また、寄贈したソーラーランタン150台によって、小学校では早朝や夜にも授業ができるようになり、より多くの子どもや大人が学べるようになった。
市場では、電気が通ったことで新しいビジネスが生まれ始めている。診療所では夜間診療が可能になり、また、冷蔵庫を設置してより多くのワクチンが保管できるようになったことで、住民のワクチン接種率も向上した。

写真:小学校の蓄電システムから延びる電線と電柱

小学校の蓄電システムから延びる電線と電柱

サンブル郡とウエストポコット郡(協働団体:国連人口基金(UNFPA))

2022年10月に開始されたこの地域での取り組みは、女性の自立支援を目的とし、2年後の完遂を目指している。ケニアの無電化地域には、法律では禁止されているものの、児童婚や女性器切除(female genital mutilation、以下FGM)といった古い風習が根強く残っている。性と生殖に関する健康と権利を守るためにこれらの問題に向き合っている国連人口基金(UNFPA: United Nations Fund for Population Activities/以下、UNFPA)は、パナソニックグループと協働して、女性の自立と貧困からの脱却を支援し、こうした古い風習をなくすことを目指している。本取り組みでは、パナソニックグループは、サンブル郡とウエストポコット郡の女性や子どもがいる世帯にソーラーランタン2,000台を配布した。

UNFPAは、女性たちの収入源として、現地の装飾品であるビーズアクセサリーの制作・販売の支援をしている。しかし、電気がないために夜間はほとんど作業ができず、生活費を得るためにFGMを強いられる女性も少なくない。そこで、配布したソーラーランタン500台によって、夜間のビーズアクセサリー制作による収入向上の機会を創出、女性たちの自立を支援している。
残り1,500台のソーラーランタンは学校に寄贈された。あかりによって夜間も勉強できるようになり、子どもたちへ教育を受ける機会を提供することに貢献している。

写真:ケニア・サンブル郡で実施したソーラーランタンの寄贈式

ケニア・サンブル郡で実施したソーラーランタンの寄贈式

パナソニックグループは、LIGHT UP THE FUTUREプロジェクトや無電化地域ソリューションプロジェクトの取り組みを推進することで、誰もがより自由に活き活きとくらす「サステナブルな共生社会」の実現を目指している。

ケニアでのプロジェクトの責任者であるパナソニック ホールディングス株式会社 CSR・企業市民活動担当室の多田 直之(ただ なおゆき)は語る。「プロジェクトのさらなる前進のために、今後も国連やNGO、地元のコミュニティ、その他のステークホルダーと協働して推進していきます。ソーラーランタンがともす1つ1つのあかりは小さくとも、集まれば大きな光となり、世界で貧困に苦しむ人々の未来を照らすあかりとなると信じています」。

出典(英語):
※1 World Bank, Poverty and Inequality Platform, accessed in November 2022
※2 IEA, “Outlook for electricity”, World Energy Outlook 2020

みんなで“AKARI”アクション~あなたのリサイクルで、世界の子どもたちの未来を照らそう

図版:みんなで“AKARI”アクション

みんなで“AKARI”アクションは、使い終えた本、CD・DVDなどをリサイクルし、その寄付をソーラーランタンに換えて、電気のないくらしをしている方々にお届けする活動です。
環境にも社会にも貢献できるリサイクル募金で、あなたも、無電化地域に希望のあかりを届けてみませんか。電話やWebサイトを通じて自宅などに引き取りにきてもらう方法と、直接リサイクルボックスに持ち込む方法があります。リサイクルボックスは大阪府門真市の公共施設や関西の商業施設を中心に設置を拡大していますので、お近くのリサイクルボックスからぜひご参加ください。

写真:リサイクル募金

アクション①リサイクル募金
本やCD・DVD、貴金属・ブランド品などを、嵯峨野株式会社が運営するサービス「きしゃぼん」を通じて買い取ります。
寄付いただいたものは“あかり”(当社製ソーラーランタン)として無電化地域にお届けしています。

写真:パナソニックグループ社員による寄付

アクション②パナソニックグループ社員による寄付
社員から募った福利厚生ポイントでソーラーランタンを寄贈。
社内公募で選出された社員による現地視察を行っています。

記事の内容は発表時のものです。
商品の販売終了や、組織の変更等により、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。

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