2024年12月6日
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パナソニックグループは、ブランドスローガン「幸せの、チカラに。」を訴求する企業CMで用いた約2万本の生花を染料にアップサイクルし、株式会社三陽商会(以下、三陽商会)が国内展開するヨーロッパ発サステナブルファッションブランド「ECOALF」(エコアルフ)のTシャツの染料として活用しました。パナソニックグループとECOALFは2021年から共創に取り組み、パナソニックグループのセルロースファイバー成形材料「kinari」(キナリ)を活用したタンブラーやボタン等を共同開発しています。2022年9月、渋谷のECOALF旗艦店で上記Tシャツが限定発売されたのを機に、双方のキーパーソンに業種の垣根を超えたコラボレーションへの想いを聞きました。
「環境問題を本気で考え、私たちにできることからACTする」というビジョンのもと、ペットボトル、漁網、タイヤなどを独自の技術でリサイクルして生地を開発するなど、世界のサステナブルファッションをリードしているECOALF。展開される衣服や雑貨は、リサイクル素材や環境負荷の低い天然素材のみでつくられており、このたびのTシャツも綿100%のうちリサイクルコットン50%、オーガニックコットン50%が使用されています。
このTシャツは「ECOALF ボタニカル ワンハンドレッド Tシャツ」として、2022年9月17日から、ECOALFの旗艦店となる渋谷スクランブルスクエア店のオープン記念として限定販売されました。(ECOALF公式サイトでも販売予定/合計60着/税込9,900円/サイズ展開 S・M・L・XL)
Tシャツ中央のプリントデザインはパナソニックグループが担い、ECOALFのスローガン“BECAUSE THERE IS NO PLANET B®”(第2の地球はないのだから)を、アップサイクルや循環をイメージした渦巻状に配しています。
店内にはパナソニックグループのブランドスローガン「幸せの、チカラに。」のビジュアルタペストリーやパンフレットが掲示され、コラボレーションTシャツ誕生の経緯などが紹介されました。
「ロスフラワーから染料を抽出してTシャツを染める、というお話をいただいた時、ぜひやらせていただこうと即決しました」と語るのは、三陽商会でエコアルフを担当する下川 雅敏(しもかわ まさとし)氏です。
「これまでも染めのプロダクトは取り扱ったことはありますが、完成品のTシャツを、ドライフラワーから抽出した染料で後染めする……というのは初めての経験でした。取り出せる染料の量には限りがあり、製品数の確保などで難しい部分もありましたが、パナソニックグループさんの『廃棄予定だったものをリサイクルし活かしきる』という熱意に共感し、取り組ませてもらいました。
Tシャツの生地が耐久性に優れた少し厚めなものだったこともあり、染め作業では色が入りづらいという苦労もありました。でも今回お願いした染めの職人の方々は大変豊富なノウハウをお持ちで、私も現場でお話をさせてもらいながら、満足のいく仕上がりとなりました」。
下川氏とパナソニックグループ共創のきっかけは、意外なところにありました。
「2020年に『森のタンブラー』の存在を知ったのが始まりです。当時、サステナブルをテーマにしたイベントなどでECOALFも同じ会場に出展することが重なり、パナソニックさんが開発に携わったものだというお話を聞いて、すごく興味を持ちました」。
タンブラーの主原料は、パナソニックグループが2015年から研究開発を続けている植物性由来の高濃度セルロースファイバー成形材料。2021年からは「kinari」というブランドで展開しています。これは従来のプラスチックとほぼ同じ性質を持ちながら、半分以上が植物繊維で構成される非常にサステナブルな成形材料です。
「ECOALFでは、発祥のヨーロッパはもちろん日本展開においても『ファッションという枠にとらわれない』ことを大切にしています。コラボするお相手についても業種の枠組みを超えて、地球環境の問題を一緒に解決できるパートナーと取り組めたらと思っています」と下川氏。「より多くのお客様との接点を生み出すために、店頭で手に取っていただきやすいこのタンブラーをぜひECOALFのプロダクトに加えたいと思いました」。
下川氏はkinariの開発部門であるパナソニック ホールディングス(株) マニュファクチャリングイノベーション本部にコンタクトを取りました。
石油由来の樹脂量を減らすべく開発されたkinariは、間伐材やコーヒーかすなど植物廃材の、元の原料の個性を活かした色合いを表現することができます。その一方で、着色自由性が高い白色の樹脂ペレットなので従来の樹脂同様に自由に着色することも可能です。
「これはファッションアイテムとしても面白い素材だなと。木の風合いを楽しめるタイプのほかにも、アパレルメーカーとしてより個性的なカラーリングにもチャレンジしてみました」。
下川氏は、サンゴや魚などの「気候変動によって失われているキレイな色を守りたい」というメッセージを込め、2022年春夏モデルのタンブラーを開発・発売。そして今回の旗艦店オープンに合わせて新たに秋冬モデルも発表しました。
下川氏:「今回、ECOALFの店舗に隣接するカフェともコラボさせてもらい、新作のタンブラーで『花』にまつわるオリジナルスムージーを提供する期間限定キャンペーンを実施しました」
「『ECOALFを通してもっとkinariを知ってほしい』という思いもあり、タンブラーの開発と同時期に、同じ素材でボタンやスピンドルストッパー(留め具)なども作れないかを模索しました」。下川氏は大阪府 門真市にあるkinariの製造現場を訪ね、「直に開発者の皆さんとお会いして、モノづくりの現場も見させてもらい、熱意を共有し合いながら開発を進めました」。
服飾においてはボタンなどの副資材はどうしても脇役扱いになりがちです。しかし下川氏は「それらもファッションにおける重要なパーツ」と言います。「例えば『サステナブルな服』と言えば、目に見えるオモテ地の見た目や素材に注目が集まる。でも副資材もモノづくりの企画におけるこだわりポイントになり得ます。ここにkinariを用いることで、よりECOALFとして意味のある服が作れるのではないかと思いました」。
そうして完成したkinariのボタン、スピンドルストッパーは、2022年4月に「ACT」シリーズに採用。生地にも漁網や繊維端材などから作った再生ナイロンなどのアップサイクルマテリアルを使った日本限定商品として好評を得ました。
「お客様からは『ボタン一つにもストーリーがあるのが、ECOALFらしい』『タンブラー、ボタン、スピンドルストッパーが同じ素材というのはインパクトがある』などの評価を頂戴しました」。
「ACT」シリーズのパーカーに採用されたkinariのボタン(左)とスピンドルストッパー(右)
もう一つ、9月のタイミングで披露されたkinari採用の共創アイテム。それは、廃棄ハンガーを再利用したアップサイクルハンガーです。
「服そのものによる環境負荷については話題になりますが、店舗で使われる備品のロスについては日本ではまだあまり注目されていないのが現状です。
シーズンごとの入れ替え作業などで気になっていたのがハンガーのロス。ご存じのとおりアパレルの店舗にはハンガーが大量に存在し、経年劣化したものは廃棄されるのが常となっています。ECOALFはその習慣をサステナブルなサイクルに置き換えていきたい。そこで今回、三陽商会の様々なブランドで使われ、経年劣化などで廃棄される木製ハンガーを再利用して、kinariのハンガーとして生まれ変わらせてもらいました」。
廃棄予定のハンガー(左)と、その木材を再利用して作られたkinariのアップサイクルハンガー(右)
このハンガーについて、下川氏は資源循環の可能性を感じさせるアイテムを創出できたと語ります。
「従来、店舗で使用するハンガーは木製か、もしくは100%プラスチック製です。一方、今回のアップサイクルハンガーは、木の質感とプラスチックの扱いやすさ、両方の良いところを併せ持っている。軽さも実現していますので、従来の木製ハンガーより物流時のエネルギーロスを抑えることもできます。
今回kinariで制作したのは25本ですが、今後さらに形状なども含めて改良し、数もどんどん増やしていければと思います」。
廃棄物を資源として再利用できるkinariの技術。研究開発を推進しているのは、パナソニック ホールディングス(株) マニュファクチャリングイノベーション本部の峯 英生(みね ひでお)。ECOALFとのプロジェクトも当初から手がけてきました。
「ECOALFさんからお預かりしたハンガーは、木製ではありましたが木材そのものよりも頑丈に加工されており、さらに塗装が施してある状態でした。まずはいかに塗装を除去するか検討した結果、金型作りで用いる『ブラスト加工』(※)の処理でうまく剥がせることがわかりました」。
※ブラスト加工:研磨剤を打ち付けて表面層(塗装膜)を除去する技術
「kinariの成分比率については、2019年には植物由来成分であるセルロースファイバーを55%濃度で樹脂に混ぜ込む複合加工技術を開発し、現在はそこから最大85%の濃度にまで高めることが可能となっています。将来的には『つなぎ樹脂』も含めて100%植物由来、生分解由来とするべく、開発を進めています」。
2022年の春にタンブラーとボタン、スピンドルストッパーを商品化、そしてハンガーについても数カ月で完成品として世に送り出す――このスピード感については「ひとえに下川さんの即決力に尽きる」と峯は語ります。
「検証も大切だけど、『まず世に出してみること』で社会に、そして消費者の皆様に早め早めに訴えていく、というスタンスをお持ちで、学ばせていただくことが多かったですね」。
下川氏は言います。「今回の共創を生かしながら、ECOALFがアパレル業界の先駆者となり、環境に負荷のかかるものを少しずつサステナブルなものに置き換えていきたいと思います。引き続き柔軟な姿勢で、サステナブルな社会の実現に関わっていきます」。
峯も今後の抱負として次のように語りました。
「ECOALFさんとはこれからも継続してモノづくりを続けていきます。現在、他のお会社からも多くの引き合いを頂戴していますので、今後、さらにkinariの製造量を増やしていけるように、多方面で共創の取り組みを続けていきます」。
ECOALFの「環境問題を本気で考え、私たちにできることからACTする」という想いと重なるかたちで、パナソニックグループも現在、長期環境ビジョンPanasonic GREEN IMPACTを掲げ、取り組みを推進しています。これは、「パナソニックグループにできる、一つひとつのアクションは小さいかもしれない、しかしその『ACT』を積み重ねることが、きっと地球温暖化対策につながる大きな『IMPACT』になっていく――」そんな思いを込めて、独自の目標として掲げ、取り組んでいるものです。
環境問題を一時的な課題としてではなく、本気で取り組む2社だからこそ、できることを。これからも継続的に、既存の業界の枠に捉われず、サステナビリティへ貢献するコラボレーション・新たな施策を生み出していきます。
(協力)
株式会社 福井プレス https://fukuipress.com/
花染花馥研究所 https://www.instagram.com/8729_labo/
記事の内容は発表時のものです。
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