日本で生まれ、現在は米国シリコンバレーを拠点とする松岡は、これまで20年にわたり「人々がなりたい自分になるための、人間視点のテクノロジーを開発すること」をミッションにキャリアを積み重ねてきた。そしてパナソニックの経営理念・企業姿勢に共感し、2019年10月にパナソニック株式会社(現 パナソニックHD)に入社。テクノロジーを起点とした、くらしに役立つサービスの開発を進めていく。しかしそんな折、新型コロナウイルスによるパンデミックが発生。在宅ワークが大前提になる中で、松岡は家族との時間をやりくりすることの大変さを実感することとなる。
「それまでも、4児の母親、妻、高齢の親を持つ娘、そしてCEOとして日々忙しく生活する中で、子どもとの時間も大切にしながら、山ほどある仕事を何とかこなしていました。それがコロナ禍になって、在宅でオンライン会議をしようとしても、しょっちゅう子どもたちに話しかけられる状態に――私にとっては家族が何より大切ですが、同時に仕事のタスクも大量にこなさねばなりません。不可能な課題をいくつも背負い込んでいるような心境になりました。実際、何百万人もの働く親たちが同じような経験をしていることがわかりました」。
コロナ禍によりバーンアウト(燃え尽き症候群)に陥る親の多さは社会問題となり、Yohana独自のグローバルを対象としたリサーチ結果からも、米国に限らず同様に苦しむ人々が多いことが見えてきた。
「国や地域が変わっても、現代の家族、特に働く親たちの抱える悩みに大きな差はない、ということがわかってきました。子育て、食事の支度、買い物や家のメンテナンス、お誕生日会の手配、週末の旅行のプラン……家族との時間を最優先したいのに、あまりにも忙しすぎるんですね。こなしきれないタスクに囲まれて悲鳴を上げている状態なのだけれど、家庭のことで誰かに頼るのはためらわれる――」。
そんな家族を支えるため、2021年9月にYohanaを設立。ワシントン州シアトルで「Yohanaメンバーシップ」のサービス開始に漕ぎつけた。サービス立ち上げ以来、シアトルでは1,000以上の家族が、のべ2万件の用件をYohanaに依頼。多くのメンバーとその家族に対し、週8~10時間以上のゆとり時間を生み出す、という実績を得た。2022年6月からはカリフォルニア州ロサンゼルスにも対象地域を拡大。リサーチの結果、特に忙しい家族が多いことが確認された日本においても、満を持してのサービス開始となる。