
2025年4月3日
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パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社(以下、パナソニック)は、日本大学工学部電気電子工学科 准教授 村山 嘉延氏と共同で、就寝中に腹部周辺の衣服内温度を計測することで、女性特有の月経リズムに伴う二相性が把握できることを実証しました(※1)。
昨今、女性特有の健康課題に対する関心が高まっています。女性特有のバイオリズムとして排卵と月経からなる月経リズムがあり、心身の好不調にも影響があると言われています。月経リズムを把握する方法として、婦人体温計を用いた基礎体温計測が一般的ですが、多くの女性は自身の健康管理を目的とした基礎体温計測を習慣化できていません。
そこでこのたび、パナソニックは、月経リズム把握の習慣化をサポートすることを目的に、就寝中の衣服内温度に着目してウェアラブルデバイスの原理モデルを開発しました。加えて、生殖医療領域における生体データ解析の専門家で、かつ腹部の衣服内温度に関する研究も行っておられる村山准教授との共同研究により、月経リズムと衣服内温度の関連について下記の検証結果を得ました。
今後、パナソニックは、本検証結果を生かした製品開発に加え、女性の生活習慣ならびにQOL向上を目的に、月経を中心に、女性にとって重要な心身のバロメーターのさらなる研究、その結果を生かした製品ならびにサービス開発を進めていきます。
今回の研究により、就寝中の衣服内温度で女性の月経リズムを把握できることが確認されました。衣服内温度は就寝中に自動で測れるため、無理なく習慣化できる可能性があります。また自分の月経リズムを知ることで、日常のケアも変化する可能性があります。体調の変化と上手くつきあうことで、毎日をより健やかに過ごせる女性が増えることを期待しています。
1999年、大阪大学基礎工学部生物工学科卒業。同大学大学院博士前期課程を経て、2001年より日本大学工学部電気電子工学科助手。2010年より准教授、現在に至る。博士(工学)。この間に、2008年~2010年にはスウェーデン・ルーレオ工科大学博士研究員、2019年~2020年にはアメリカ・ジョージア工科大学で客員研究員として海外経験を積み、2012年~2019年の間は大阪大学大学院医学系研究科で招聘准教授を務めた。
■被験者:自然な月経周期の女性:44名(平均年齢39.0±6歳)
■温度計測デバイス、計測方法
■温度データ収集期間:約3カ月間、毎日計測
■LH検査方法(排卵日予測検査):市販の排卵日予測検査薬を使用
■LHデータ収集期間:月経開始日から約10日後に使いはじめ、排卵の反応が出るまで毎日検査
図1 衣服内温度に見られる二相性:機械的アルゴリズムで高温期移行日を判定した事例
■研究データ(1):衣服内温度のデータ分析
欠測や異常値を除いた41名分の月経周期(計100周期分)の衣服内温度を分析した結果、多くのデータに低温期と高温期の二相性パターンが観察された。機械的アルゴリズム(3オーバー6ルール)を適用した結果、85周期で高温期移行日を検出できた。
図2 LH検査陽性日を基準にした高温期移行日の算出例
■研究データ(2):LH検査を基準とした基礎体温との高温期移行日比較
LH検査(排卵日予測検査)の陽性日を基準として、衣服内温度と基礎体温との間で高温期移行日の比較を行った結果、移行日に差がないことが観察された。
高温期移行日までの日数は、基礎体温で4.4±3.6日、衣服内温度では4.5±3.8日であった(t検定、p=0.858、Wilcoxon検定、p=0.818)。
また両者には有意な正の相関(R=0.838)が観察された(図3)。
図3 機械的アルゴリズムで検出した衣服内温度と基礎体温の高温期移行日の散布図
■研究データ(3):婦人科医師の目視による高温期移行日判定
機械的アルゴリズムを用いず、婦人科医師による高温期移行日の判定を行った結果、衣服内温度と舌下温度の高温期移行日の相関は、R=0.915と非常に高い結果が得られた。
図4 婦人科医師の目視判定による衣服内温度と基礎体温の高温期移行日の散布図(0日=LH陽性日)
※1 Murayama Y. et al.: IEEE Access Vol 12, 182374-182385(2024)
https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?arnumber=10776946
※2 当社から依頼し、いただいたコメントを編集して掲載しています
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