2024年10月30日
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パナソニック コネクト株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役 執行役員 プレジデント・CEO:樋口 泰行、以下パナソニック コネクト)は、OpenAIの大規模言語モデルをベースに開発した自社向けのAIアシスタントサービス、「ConnectAI」の2023年6月~2024年5月までの活用実績と今後の活用構想を発表致しました。
当社は2023年2月より、(1)生成AIによる業務生産性向上、(2)社員のAIスキル向上、(3)シャドーAI利用リスクの軽減、を目的に、ChatGPTをベースとしたAIアシスタントサービスを国内全社員約12,400人に展開しています。経営TOPから現場まで、挑戦している人を応援する文化の浸透が、大規模かつスピーディな導入を可能にしました。
生成AIを活用する際に社員にどれだけの時間が削減できたかを回答してもらった結果、1回あたり平均約20分の削減につながっていることが確認できました。比較的削減時間が短い活用ケースとしては検索エンジン代わりのような単純な質問のやり取り、長い時間の削減につながる活用ケースとしては戦略策定の基礎データ作成といったものがありました。
こうしたデータも踏まえ生成AI導入の目標として掲げていた3点の達成結果は以下の通りです。
(1)生成AIによる業務生産性向上→1年で全社員18.6万時間の労働時間を削減。アクセス回数(12ヶ月)1,396,639回、直近3か月の利用回数は前年の同期間と比較して41%増。
(2)社員のAIスキル向上→検索エンジン代わりのような用途から、戦略策定や商品企画などの1時間以上の生産性向上につながる利用が増え、製造業らしい活用(素材に関する質問、製造工程に関する質問等)も増加。
(3)シャドーAI利用リスクの軽減→16か月の間に情報漏洩、著作権侵害などの問題は発生せず。
当社では、社員がConnectAIに的確なプロンプトを入力できるよう、プロンプトエンジニアリングの観点に基づきユーザーインターフェースをカスタマイズし、よくある日常業務15件のプロンプトサンプルをトップ画面に用意していますが、より具体的なプロンプトを入れた方が素早く的確な回答を得やすいという側面を考慮し、2024年6月17日より新たにプロンプト添削機能を追加しました。これにより、さらなる生産性の向上が望めると考えています。
また、2023年9月に、自社固有の公開情報(ウェブサイト・ウェブページ約3,700ページ、ニュースリリース495ページ、対外向けのパナソニック コネクトホームページ3,200ページ)を元に回答してくれる自社特化AIの試験運用を全社員を対象に実施し、一定の精度で回答できることを確認しました。その試験運用の結果を踏まえ、2024年4月からは自社固有の社外秘情報である品質管理630件、11,743ページに対しても回答してくれるAIの活用を開始しています。この取り組みにより、品質管理規定や過去の事例を元に製品設計時の品質についての質問が可能になりました。本機能には、回答結果の真偽を社員自身が確認できるよう、回答の引用元を表示する機能も実装しました。
製造業における品質管理の課題には、経験者のノウハウに依存するため情報が共有されにくいこと、事例の検索とその精査・判断に膨大な時間を要することなどがあげられます。これらを解決するため、社内にある品質管理規定や過去に発生した品質問題をConnectAIで参照できるような開発を行いました。本サービスはリリース以来、日々の業務で活用されており回答に対する社員の評価は3.5点(5点満点)と高い水準となっています。この開発により一定の効果をあげたことから、今後数年をかけて活用することで、パナソニック コネクトでは、経験者でも判断が難しい設計段階での問題や部品に起因する問題、また製造方法や作業手順の問題について原因の特定を容易にし、手戻りの時間も減らせるようになることで、人手不足を補い、より短い時間で精度の高いものづくりにつなげていきたいと考えています。
これまで生成AIを活用してきた経験に基づき、自社固有の質問や最新の公開情報に回答できないことや、回答の正確性を担保できないことなどが大きな課題と認識しています。これを解決するために自社データと生成AIの連携を行ってきましたが、自社データの整備が非常に重要であると改めて認識しています。生成AI用のデータを「コーパス」と呼びますが、こうした知見を基に、当社では今後自社データの整備を構造的に進め、「パナソニック コネクトコーパス」を構築していこうと考えています。
今後は自社データの対象範囲を拡大し、品質管理に加えて、人事の研修サポートや社内ITサポート、カスタマーセンターなどの社内サービスにも広げていきます。人事ではまず生成AIが社員に適した研修を提案する研修特化AIの導入を進めています。また、パワーポイントやエクセル、PDFなどの非構造化データ(※1)に加えて業務システムなどに蓄積された構造化データ(※2)も対象に拡大を進めてまいります。これにより、より広い業務領域で、数値に基づいた正確な回答が得られることになり生成AIの業務活用が加速すると考えています。さらにデータ整備が整ってきた段階で、個人の職種や権限に応じて回答を行う個人特化AIの導入も検討していきます。
さらにパナソニック コネクトでは、将来的にはスウェーデンの哲学者、ニック・ボストロムが提唱する人工知能の3つの発展段階(※3)に沿って、今後AIがエージェント型への進化を遂げてゆくと見込んでいます。現在の1つの問いかけに対して回答するAI(オラクル型)から、今後は課題を明確にすることで目的を達成するために連続したタスクを他のシステムと連携して完了するAI(ジーニー型)へと進化を遂げ、さらには長期的な目標を持って計画・立案・タスクの実行・最終確認まで持続的に状況を判断しながら業務を遂行し続けるAI(ソブリン型)が登場すると見込んでいます。これが実現できるようになると、最小限の人の介入で自律的にAIが業務をこなすオートノマスエンタープライズ(自律型の企業)(※4)が今後実現できると考えています。
当社は、「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」というパーパスを掲げています。この度のパナソニック コネクト コーパスの開発を通じ、熟練社員の定年退職による知識やノウハウの伝承の問題や事例の検索や精査に費やす時間の課題を解決し、知識や経験の永続化と民主化を目指すことで、多様な人々が幸せに暮らせる、持続可能な社会を実現していくことを目指していきます。
※1 メールやチャットなどのテキスト、音声、動画、センサーログ等
※2 ExcelやGoogleスプレッドシートなどのように、列や行を持つデータ
※3 出典 Nick Bostrom, Superintelligence: Paths, Dangers, Strategiesより
※4 AI技術を活用して業務を自動化し、自律的に運営・成長できる企業形態のことを指す。従来の企業では、多くの業務が人手で行われており、意思決定も人間が行っていたが、生成AIの登場により、これまで人間しかできなかった創造的な作業や複雑な判断の一部も自動化できるようになり、企業のあり方が大きく変化する可能性がある。
一方でオートノマスエンタープライズの実現には、生成AIモデルの一層の進化を必要とする。正しい判断であるかどうかの確認プロセス、想定外の動作に対するセーフティ機構などの整備が必要となってくる。
パナソニック コネクト株式会社は2022年4月1日、パナソニックグループの事業会社制への移行に伴い発足した、B2Bソリューションの中核を担う事業会社です。グローバルで約28,300名の従業員を擁し、売上高は1兆2,028億円(2023年度)を計上しています。「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」をパーパス(企業としての存在意義)として掲げ、製造業100年の知見とソフトウェアを組み合わせたソリューションや高度に差別化されたハードウェアの提供を通じて、サプライチェーン、公共サービス、生活インフラ、エンターテインメント分野のお客様をつなぎ、「現場」をイノベートすることに取り組んでいます。また、人と自然が共存できる豊かな社会・地球の「サステナビリティ」と、一人ひとりが生きがいを感じ、安心安全で幸せに暮らすことができる「ウェルビーイング」の実現を目指しています。
また、「人権の尊重」と「企業価値の向上」を目的に、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)推進を経営戦略の柱のひとつに位置づけ、多様な価値観を持つ一人ひとりがイキイキと力を発揮できる柔軟性の高い企業文化の改革に取り組んでいます。
▼パナソニック コネクト株式会社 ウェブサイト
https://connect.panasonic.com
▼パナソニック コネクト Newsroom
https://connect.panasonic.com/jp-ja/newsroom
▼パナソニック コネクト DEI(Diversity, Equity & Inclusion)
https://connect.panasonic.com/jp-ja/about/sustainability/dei
記事の内容は発表時のものです。
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