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画像:パナソニックHD、姿勢推定技術を応用した魚眼カメラ角度推定技術を開発

2024年6月5日

技術・研究開発 / プレスリリース

~物理空間での精密な位置決めやナビゲーションを支援~

パナソニックHD、姿勢推定技術を応用した魚眼カメラ角度推定技術を開発

パナソニック ホールディングス株式会社(以下、パナソニックHD)は、物理空間での精密な位置決めやナビゲーションなどに欠かせない魚眼カメラの角度を、画像1枚から頑健かつ高精度に推定できる新たなカメラ校正技術を開発しました。

自動車やドローン、ロボットなどの自動運転における位置決めやナビゲーションは、高精度に機器の進行方向が推定できることを前提としています。そのため通常、カメラに加えてジャイロなどの専用の計測システムが使用されますが、小型軽量化や低コスト化のためには、カメラの撮影画像のみで高精度に機器の進行方向を割り出す技術が求められています。そこで当社は、広範囲の映像を撮影できるという特徴から、広範囲監視や障害物検知など幅広い用途で用いられている魚眼カメラにおいて、レンズ歪みにより困難とされている角度推定の課題を解決する技術を開発しました。具体的には、建物、道路などの人工物は互いにその面が直交すると仮定する「マンハッタンワールド仮説」の考え方のもと、姿勢推定に用いられるネットワークを応用することで、レンズ歪みの大きい画像に対しても、頑健かつ高精度にカメラ角度を推定できる技術になります。本手法は市街地の一般的な画像1枚からカメラ校正を行えることから、自動車やドローン、ロボットなどの移動体を用いた多岐にわたる用途での応用が期待されます。

本技術は、パナソニックグループのトップ人材育成プログラムREAL-AI(*1)の研究成果として、2024年6月17日から6月21日に米国シアトルで開催されるAI・コンピュータビジョン分野における世界最高峰の国際会議のひとつIEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition(CVPR)2024の本会議で発表します。

パナソニックHDは、社会実装を加速するAI技術の研究・開発とAIトップ人材の育成を通じて、お客様のくらしやしごとの現場へのお役立ちに貢献していきます。

■技術の内容

自動車やドローン、ロボットなどの精密な位置決めやナビゲーションを小型・低コストで実現するには、カメラだけでカメラの傾きを効率的に推定できれば理想的です。しかし、さまざまな物体が映りこむ市街地画像において、カメラ角度を推定するヒントとなる地面や垂直方向を捉えることは非常に困難です。建物、道路などの人工物は互いにその面が直交すると仮定する「マンハッタンワールド仮説」を導入することで推定しやすくなりますが、1枚の画像からカメラの角度を推定することは難しく、従来は、無限遠を見たときに収束する点である消失点の座標を複数求め、それらに基づき算出するという方法が取られてきました。この場合、消失点は三次元空間を直交するX軸、Y軸、Z軸の各軸の両端方向からなる6方向に対応しています。今回提案した手法はこの6方向に加えて、補助対角点と呼ぶ8方向を新たに定義しました。この補助対角点は、X軸、Y軸、Z軸のいずれに対しても45°または−45°の方向に定義されます。これらの補助対角点をAI学習時に消失点と同様に扱うことで推定に利用できる情報量が増え、カメラ角度推定の頑健性と精度が向上しました。

また、本手法は人工物の少ないシーンでも頑健な推定を行うために、従来は曲線検出に基づいていた消失点推定に、「ヒートマップ」を用いています。ヒートマップは、主に人の姿勢推定・骨格検出の分野で、高い頑健性と精度を示し、広く利用されている手法です。この考え方を応用することで、消失点の画像座標を直接推定するのではなく、画素ごとにその画素が「消失点である確率」を推定することで、「消失点である確率」が高い領域を消失点の画像座標として推定できるようにしました。
本手法のヒートマップで推定した消失点、および補助対角点の座標(図1)から、正確に消失点を推定できていることがわかります。これらの消失点と補助対角点の座標、および、2022年に発表したレンズ歪み推定技術(*2)などを組み合わせることで、最終的なカメラの傾きを導き出しました。

パノラマ画像から作成した人工の魚眼画像データに対する定性評価結果を図2に示します。ここで、傾きとレンズ歪みを視覚的に捉えやすくするために、水平線と垂直方向の基準線を描いています。従来法の結果(図2(a))ではこれらの基準線が傾き、正解画像のように縦横方向の中央で十字状にはなっていないことから、傾きとレンズ歪みの推定に大きな誤差があることが分かります。一方、本手法の結果(図2(b))では水色の線と、桃色線または黄色線が十文字になっていることが確認でき、高い精度でカメラの角度を推定できていることがわかります。

特に、街路樹が多く映り込んだシーンのように、人工物が少なくカメラ角度の推定が難しいとされる入力画像であっても、本手法は高精度にカメラ角度を推定できました。大規模データセットと複数の実カメラを用いた検証により本手法の有効性を検証した結果、世界最高精度(*3)を達成しました。

図1 本手法が検出した消失点(VP)と補助対角点(ADP)の定性評価結果とヒートマップ。赤色◯と緑色✕がそれぞれ正解と推定した消失点座標、桃色◯と水色✕がそれぞれ正解と推定した補助対角点座標を示す。ヒートマップは消失点と補助対角点である確率が高いほど赤く、低いほど青く可視化されている。ヒートマップの下部に記載されたfrontは前方のように、三次元空間の方向を表すラベルを示す。(採択論文より引用© 2024 IEEE)

図2 人工データを用いた歪みと傾き補正の定性評価。(a)左から右に入力画像、正解画像、5つの従来法の結果。(b)左から右に入力画像、正解画像、提案法の結果。桃色線が水平0°の方向、黄色線が水平±90°の方向、水色線が垂直0°の方向を示す。(採択論文より引用© 2024 IEEE)

■今後の展望

本手法は、姿勢推定に用いられる深層学習ネットワークを応用して、たった1枚の画像を入力するだけで、レンズ歪みの大きい画像でも、頑健かつ高精度にカメラ角度を推定できる技術です。特に、機器の進行方向を高精度かつ低コストで推定する必要のある、自動車やドローン、ロボットなどの移動体のナビゲーションや位置決めといった場面における貢献が期待できます。

今後もパナソニックHDは、AI技術の社会実装を加速し、お客様のくらしやしごとの現場へのお役立ちに貢献するAI技術の研究・開発を推進していきます。

*1 先端技術の素早い事業展開と価値創出を行うトップ人材の育成により、パナソニックグループの先端AI研究開発を牽引するべく全社横断で組織された社内研究グループ。京都大学教授・立命館大学客員教授 谷口 忠大氏や、中部大学教授 山下 隆義氏の指導のもと、若手からエキスパートまで多くのメンバーがトップカンファレンスへ挑戦し、これまで多数の研究が採択されています。
*2 N. Wakai, S. Sato, Y. Ishii, and T. Yamashita. Rethinking Generic Camera Models for Deep Single Image Camera Calibration to Recover Rotation and Fisheye Distortion. In Proceedings of the European Conference on Computer Vision, volume 13678, pages 679-698, 2022.
https://doi.org/10.1007/978-3-031-19797-0_39
*3 1枚の風景画像から推定するマンハッタンワールド仮説におけるパン・チルト・ロール角のカメラ校正精度において(2024年6月5日現在、当社調べ)

■論文情報

Deep Single Image Camera Calibration by Heatmap Regression to Recover Fisheye Images Under Manhattan World Assumption
https://arxiv.org/abs/2303.17166
本研究は、パナソニックHDプラットフォーム本部の若井 信彦、パナソニックHDテクノロジー本部の佐藤 智、石井 育規と、中部大学教授の山下 隆義氏との連携による研究成果です。

■関連情報

記事の内容は発表時のものです。
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配信元:
パナソニックホールディングス株式会社
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