2024年11月15日
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パナソニック ホールディングス株式会社(以下、パナソニックHD)は、AIモデルが見落としてしまった物体に着目することで、少ない学習データで精度良くAIモデルの横展開を可能とするAI技術を開発しました。
画像認識AIの現場導入は、AIモデルの現場毎の個別開発から、開発済みのモデルの横展開による効率化に注目が集まっています。しかしながら、撮影条件が異なる環境では、認識性能が低下してしまう課題があります。一般的に認識性能を向上させるには、新しい環境における大量の教師データが必要であり、コストや時間を要します。これに対し、学習に効果がありそうなデータをAIが自動的に選出し、少量のラベル付けのみで、全てのデータにラベル付けした場合と同等の効果を得る「アクティブドメイン適応法」という手法が提案されています。
アクティブドメイン適応法は、新しい環境の情報を効率的に獲得するために、AIモデルにとって「予測結果に自信がない」データを優先的に選択します。一方、AIモデルが「見落とした」データは、未検出を防ぐ重要な情報を含んでいるにも関わらず、学習データとして選出されにくい、という特性がありました。
そこで当社はAIモデルが「見落とした」データも考慮可能なアルゴリズムを新たに開発しました。ベンチマークデータセットを用いた評価実験(*1)では、新しい環境のデータのうち僅か5%の画像にラベル付けをするだけで、全データにラベル付けした場合と同等の認識性能であることを確認しました。
本技術は、パナソニックグループのトップ人材育成プログラムREAL-AI(*2)の研究成果として、2024年6月17日から6月21日まで米国シアトルで開催されるコンピュータビジョン分野のトップカンファレンスThe IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition(CVPR2024)で発表します。
パナソニックHDは、社会実装を加速するAI技術の研究・開発とAIトップ人材の育成を通して、お客様のくらしやしごとの現場へのお役立ちに貢献していきます。
撮影条件が異なる環境に、コストや時間を抑えながらAIモデルを適応させる手法として、「アクティブラーニング」と「ドメイン適応」という二つの手法を組み合わせた「アクティブドメイン適応法」が提案されています。アクティブラーニングは、まだ教師ラベルのついていない、新しい環境で撮影した大量のデータから、不確実性が高い、すなわち予測結果に自信がないデータを「人間に教師ラベルを付けてほしいデータ」として選出します。教師ラベル付けには膨大なコストと時間がかかることから、ここでどれだけ少数精鋭の有用なデータを選出できるかが、コストと精度に大きく影響します。そして、ドメイン適応では選出したデータを追加の教師データとしてAIモデルをチューニングします。
一方、ドメイン適応における精度低下の要因を事前に分析したところ、偽陰性(FN)エラー、つまり未検出の増加がパフォーマンスに大きな影響を与えることがわかりました。つまり、ドメイン適応で精度低下を抑制するためには、未検出の物体を考慮したアクティブラーニングの設計が重要となります。
先に挙げた従来のアプローチでは、AIが「自信を持って」見落としたデータが選出されにくく、未検出に繋がるという課題がありました。そこで未検出の物体を考慮するため、「AIが見落としてしまう可能性(検出不能性)」を考慮した「FNPM(偽陰性予測モジュール)」を統合した手法を提案しました。各画像の検出不能性を評価するFNPMの導入により、多数の未検出物体を含む画像がより選出されやすくなります。未検出に対するロバスト性を高めることができるため、ドメイン適応におけるパフォーマンス低下を抑制可能です。
車載カメラのベンチマークデータセットを用いた評価実験(*1)では、新しい環境のデータのうち僅か5%の画像にラべル付けをするだけで、全データにラベル付けした場合と同等の認識性能であることを確認しました。
本手法は、AIモデルが見落としがちなデータに着目するという新しい工夫により、少ないラベル付け工数・コストで効率よくAIモデルを多現場展開できる技術です。特に見えの変動が大きい車載カメラのベンチマークセットに対する評価実験で有効性を確認できたことから、物体検出タスクに広く適用可能と考えられます。サプライチェーンマネジメントにおける現場最適化ソリューションやサーベイランス、車載センシングなどの分野におけるAIモデルの多現場展開への貢献が期待されます。
今後もパナソニックHDは、AI技術の社会実装を加速し、お客様のくらしやしごとの現場へのお役立ちに貢献するAI技術の研究・開発を推進していきます。
*1 CityScapes, KITTI等の主要なベンチマークデータセット間のドメイン適応において、新しい環境において決まった割合(5%、1%など)の少量データのみをラベル付けして認識性能を比較する実験。
*2 先端技術の素早い事業展開と価値創出を行うトップ人材の育成により、パナソニックグループの先端AI研究開発を牽引するべく全社横断で組織された社内研究グループ。京都大学教授・立命館大学客員教授 谷口 忠大氏や、中部大学教授 山下 隆義氏の指導のもと、若手からエキスパートまで多くのメンバーがトップカンファレンスへ挑戦し、これまで多数の研究が採択されています。
本研究は、パナソニックHD テクノロジー本部の中村 譲、石井 育規と、中部大学教授の山下 隆義氏との連携による研究成果であり、パナソニックグループのAIエキスパート育成プログラムREAL-AIの枠組みで開発したものです。また本研究は、1万件を超える研究論文が投稿されたコンピュータビジョン分野のトップカンファレンスCVPR2024において、採択率23.6%の狭き門をくぐった全採択論文2,719件のうち、わずか11.9%(324件)の注目論文のみが選出される「Highlight」に選出されました。
CVPR2024 公式サイト
https://cvpr.thecvf.com/Conferences/2024
Panasonic×AI WEBサイト
https://tech-ai.panasonic.com/jp/
Panasonic×AI X
https://twitter.com/panasonic_ai
記事の内容は発表時のものです。
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