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2016年2月3日
製品・サービス / プレスリリース
業界初*1、ダイナミックレンジ123dBの明暗差を鮮明かつ時間ずれなく撮影が可能に
パナソニック株式会社は、有機薄膜*2を用いたCMOSイメージセンサを用いて、明暗差の大きいシーンを、従来比*3100倍のダイナミックレンジ[1]まで、時間差なく撮影できる、広ダイナミックレンジ化技術を開発しました。光電変換を行う有機薄膜と回路部での電荷蓄積機能を独立に設計可能な特長を活かし、従来は困難であった、ダイナミックレンジ123dBの明暗差のあるシーンの撮像においても、明るいところ*4で白とびなく、暗い被写体でも鮮明で質感豊かな映像を再現します。
本技術により、特に逆光やライト照射下に被写体があるような明暗差の大きいシーンの撮像においても、情報欠けなく、より豊かな色階調の再現ができるようになります。さらにこれまでのような露光時間を変えて順次撮影したデータを合成することがないため、高速に動く被写体の高精度な撮像が可能となります。これまで適用が困難であった高速で広ダイナミックレンジが求められるシーンを捉えるカメラやセンシング用途への適用が期待できます。
本開発は、以下の特長を有しています。
1. 光電変換機能を有する有機薄膜と、信号読み出し回路部を完全に独立させることで、広い入射光線角度(60度)、高感度、高飽和、信号処理回路の高機能化が可能。
2. 当社独自の「明暗同時撮像構造」を導入することで、従来のチップサイズのままで、完全同時撮像時のダイナミックレンジ[2]123dB(従来のイメージセンサ*3比100倍)を実現。
本開発は、以下の技術により実現しています。
(1)光電変換部と回路部を独立設計可能な有機薄膜を用いたCMOSイメージセンサ設計技術。
(2)有機CMOSイメージセンサの高飽和性と感度設定の自由度を活かし、1画素内に明暗2つの感度検出セルを備えた1画素2セル構成技術。
(3)暗い被写体撮像時のS/N[3]特性向上のため、画素リセット時のノイズをキャンセル可能な容量結合型ノイズキャンセル技術。
従来のイメージセンサでは、露光時間の異なる複数のデータを順次撮影後、撮影した複数の画像をデータ処理し合成することで、ダイナミックレンジの拡大を図っていましたが、時間差のある複数画像データを処理するため、動きのある画像は歪んでしまうという課題がありました。
国内58件、外国44件(出願中含む)
本技術の一部は、2016年1月31日~2月4日に米国サンフランシスコで開催される国際学会ISSCC(International Solid-State Circuits Conference)2016にて発表します。
従来のイメージセンサは、受光部のシリコンフォトダイオード、金属配線、カラーフィルタ、オンチップマイクロレンズで構成されており、光を電気に変換する機能、かつ、信号電荷を蓄積する機能は、共にシリコンフォトダイオードで行われていました。一方、有機CMOSイメージセンサでは、光を電気信号に変換する機能を、シリコンフォトダイオードに代えて有機薄膜で、信号電荷を蓄積し、電気信号の読み出しを行う機能を下層の回路部で、完全独立に行っているため、以下の特長を実現できます。
入射光線範囲を60度に拡大、忠実な色再現性を可能に。
シリコンフォトダイオードに代えて、光吸収係数[4]が大きい有機薄膜を採用することで、シリコンフォトダイオードの数分の1となる0.5μmまで薄膜化を実現。従来のシリコンフォトダイオードでは2~3μm程度の深さが必要なため、光線入射角が30~40度に制限されていましたが、有機CMOSイメージセンサ技術では、薄膜化により、60度の広い入射光線範囲を実現できます。このことにより、斜めから入射する光を効率よく利用することができ、混色のない忠実な色再現性を可能にします。また、レンズの設計自由度が増し、カメラの高性能化、小型化につながります。
従来比1.2倍の感度を実現し、暗いところでもクリアな映像を撮像可能。
有機CMOSイメージセンサの構造は、当社の半導体デバイス技術で形成した、画素内のトランジスタや容量などの回路部の上に、有機薄膜を積層します。従来のイメージセンサでは、各画素に、シリコンフォトダイオード以外の部分に光が入射するのを防止する遮光膜を形成する必要があったため、受光部分の面積が制限されていました。しかし、有機CMOSイメージセンサでは、全面に有機薄膜を形成することが可能なため、センサ面上で受ける光を全て有機薄膜で受光することができます。これにより、従来比1.2倍の感度を実現し、暗いところでもクリアな映像を得ることができます。
有機薄膜、回路部を完全独立に設計し、カメラの高機能(高飽和)を実現。
有機CMOSイメージセンサの構造は、光を電気信号に変換する有機薄膜と、信号電荷を蓄積し、電気信号の読み出しを行う回路部を完全独立に設計できます。このため、有機薄膜を自由に選択することで、波長、感度など、光を電気信号に変換する時の特性を自由に設定することが可能です。また、従来のイメージセンサでは、各画素に、シリコンフォトダイオードとトランジスタや容量などの回路を共に配置する必要があったため、回路の面積が制限されていましたが、有機CMOSイメージセンサでは、シリコンフォトダイオードを形成する必要がないため、シリコン基板上に、高速、広ダイナミックレンジ、高飽和といった高機能な回路を搭載することが可能になります。
特に、従来のイメージセンサでは、シリコンフォトダイオードに蓄積していた信号電荷を、有機CMOSイメージセンサでは、光を電気信号に変換する部分とは別に、信号電荷を蓄積するための大きな容量を設けることで、蓄積電荷の飽和値[5]を従来のイメージセンサ*3よりも飛躍的に増大させた構成を実現できます。
有機CMOSイメージセンサ特有の、光を電気信号に変換する有機薄膜と信号電荷を蓄積する容量部を完全独立に設計可能な画素構造、飽和性を活かし、1画素内に、感度の異なる2つの画素電極、信号電荷蓄積量の異なる2つの容量、2種類のノイズキャンセル構造のセルを設けました。 こうした明るいシーンと暗いシーンを異なる構成のセルで同時に撮像することで、一回の撮像で、従来のイメージセンサ比*3100倍のダイナミックレンジ123dBを実現できます。セルの構成は以下の通りです。
・セル1:高感度セル | 高感度画素電極+小蓄積容量+容量結合型ノイズキャンセル構造 |
・セル2:高飽和セル | 低感度画素電極+大蓄積容量+従来型ノイズキャンセル構造 |
この技術により、明暗差の大きいシチュエーションにおいても、高精度な高速撮像、ならびに、高速高精度な動体検出を可能とします。
さらに、「1画素2セル構成技術」の高飽和セルでは、低感度の状態で、読み出し時間以外、常に信号電荷の蓄積を実施しています。そのため、現在、車載カメラ・業務放送用カメラなどで課題となっている、信号の撮像欠けによる、LEDフリッカ[6]・蛍光灯フリッカ[7]の問題は発生しない構造となります。
有機CMOSイメージセンサは、有機薄膜と電荷蓄積部を金属配線で接続する構造であるため、蓄積電荷を完全に読み出すことができません。そのため、画素(信号電荷蓄積ノード)リセット時のリセットノイズの影響を受けるという課題があります。この課題に対し、当社独自の半導体デバイス技術と新たに『容量結合型ノイズキャンセル回路』の開発により、発生したリセットノイズ自体をキャンセルする構成を開発しました。本回路では、列毎に設けた負帰還ループを用いることで、画素毎にリセットノイズの抑制を実施します。さらに、容量結合型の構成を用いることで、負帰還制御のロバスト性を向上するとともに、リセットノイズを1.6電子まで大幅に抑制することを可能としています。
今後、この有機CMOSイメージセンサ技術を、監視・車載用カメラ、業務放送用カメラ、産業検査用カメラ、デジタルカメラなど幅広い用途に提案し、高速・高精度なイメージング、センシング機能の実現に貢献していきます。
以上
記事の内容は発表時のものです。
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