2024.12.19
COP29の議論・展示に参画~脱炭素・サーキュラーエコノミー型社会への貢献を発信
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2024年11月11日から24日にかけ、アゼルバイジャン共和国の首都バクーで、国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(UNFCCC COP29、以下COP29)が開催。2035年までの気候資金(途上国の気候変動対策を支援する資金)の新たな目標額などが合意された。パナソニックグループは2018年から6年連続でジャパン・パビリオンに出展するとともに、削減貢献量やサーキュラーエコノミー(CE)に関するセミナーに参画した。長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」の下、「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立に向け、事業活動を推進するパナソニックグループ。COP29では、現在グループを挙げて推進する具体的な環境課題解決の取り組みを発信した。
3電池を連携制御、必要電力を再エネで100%まかなう
COP29の会場では、環境省が「Solutions to the World」のテーマで、ジャパン・パビリオンを開設。11事業者が、日本の気候変動対策の長期目標である「2050年ネットゼロ(温室効果ガス排出の実質ゼロ)」の実現と、世界の脱炭素化や気候変動への適応を支える技術・製品・サービスなどを、リアルとオンラインで展示した。
パナソニックグループは、純水素型燃料電池と太陽電池、蓄電池を最適に組み合わせることで、事業活動で消費するエネルギーを、100%再生エネルギーでまかなう取り組みを紹介した。2022年4月から実証施設を稼働している滋賀県の草津拠点では、純水素型燃料電池の発電時に発生する熱を吸収式冷凍機(空調機)の熱源として活用する実証実験を、今年7月から開始している点を説明。加えて英国の工場でも3電池の連携制御設備を導入中(※1)である点に言及した。
※1 COP29閉幕後の2024年12月3日に、導入完了のプレスリリースを発信 https://news.panasonic.com/jp/press/jn241203-2
こうした実証のグローバル展開を通じ、地域特性を踏まえた最適なソリューションの実現を目指す方向性を発信。地産地消の分散型エネルギーパッケージによる災害時のレジリエンス性の向上や、社会のカーボンニュートラル・エネルギーの安定供給への貢献、さらには地域のパートナーと連携した、さまざまなお客様へのエネルギー提供につなげる意思を示した。
削減貢献量の意義・標準化を議論、活用拡大を訴える
自社の製品・サービスが社会に導入されることで、CO2排出量の削減にどれだけ貢献したかを示す指標が、CO2削減貢献量(以下、削減貢献量)だ。パナソニックグループは一企業の枠を越え、その認知拡大や国際標準化に取り組んでいる。認知拡大に向けては、2023年5月のG7広島サミット(主要国首脳会議)成果文書への記載に尽力したほか、同年冬のCOP28のジャパン・パビリオンのセミナーでは、グループCEOの楠見雄規が登壇し、その意義を広く発信した。削減貢献量の国際標準化に向けては、国内外の標準化団体や企業連合の活動に参画、規格検討や事例集作成に注力している。また2023年度からは、自社の代表的な事業領域を対象に、削減貢献量の数値とその算定方法をサステナビリティ データブックに掲載(※2)している。活動の結果、削減貢献量は脱炭素社会の実現に向けた企業の貢献を評価する指標として、徐々に浸透しつつある。
※2 サステナビリティ データブック 2024では、ヒートポンプ式給湯・暖房機、省エネ製品への置き換え、宅配ボックス、車載用円筒形リチウムイオン電池、真空断熱ガラス、熱交換気システムの6事業領域が対象。
こうした活動の一環として、11月16日にジャパン・パビリオンで開かれたセミナー「産業及び金融分野における削減貢献量の標準化に向けて」(主催:経済産業省)に、パナソニック オペレーショナルエクセレンス(株)品質・環境担当執行役員である上原宏敏が、IEC(国際電気標準会議)で削減貢献量の標準化を進める立場として参画。国内外の有識者と議論を交わしながら、削減貢献量の意義や標準化の進捗を紹介した。
上原は、削減貢献量の算定方法などを定める国際規格(IEC63372)に関し、座長を務めるシュナイダーエレクトリック株式会社をはじめとする他社と協働しながら、パナソニックグループが標準化に取り組んでいることを紹介。ISO(国際標準化機構)やWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)とも連携し、これらの団体が進める削減貢献量標準化の取り組みとも整合性を図っている点に言及した。その上で、早ければ2025年の上半期にIEC63372を公表できるという見通しを示唆。「ソフトウェア産業を含む電気・電子業界全体が、社会に対して削減貢献量を的確に開示できるようになる」と強調した。
その上で上原は、削減貢献量の標準化により、政府や金融機関などが、脱炭素化に貢献する企業のソリューションを適切に評価し、インセンティブ付与や投資判断に活用できるようになることへの期待を表明。加えて、2015年のCOP21で採択された「世界の平均気温の上昇を、産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という目標の達成に向け、電気・電子業界に留まらず、あらゆる産業界にとって削減貢献量の標準化は意義がある点を強調した。
CE型社会への移行に向けた、自社と他社協働の貢献を発信
地球温暖化に加え、資源の枯渇による地球環境への影響が深刻化している現状を踏まえ、2023年4月のG7気候・エネルギー・環境大臣会合では、企業によるCE(サーキュラーエコノミー)取り組みや、政府・金融機関との連携を促すことを目的に、CEREP(循環経済資源効率原則)が採択され、G7各国首脳は広島サミットにてCEREPを承認した。またWBCSDも企業がCEの取り組みを評価・促進するための指標や目標である、GCP(グローバル循環プロトコル)の開発を進めている。
このように、CEの重要性の認知が高まり、仕組みの構築も進む中、COP29では環境省が11月12日に「CEREPとGCPを通じたグローバルスタンダード形成」をテーマにパネルディスカッションを主催。同セミナーにも、パナソニック オペレーショナルエクセレンス(株)の上原が参加、国内外の有識者と意見交換した。
パナソニックグループは長年にわたり、資源の有効活用と顧客価値の両立に取り組んできた。また2023年11月には、資源効率の向上を脱炭素化・資源消費の削減につなげ、持続可能な社会の実現に貢献できる事業運営基盤を確立するべく、「サーキュラーエコノミーグループ方針」を発信している。これらを踏まえ上原は、お客様に良い商品を末永く使っていただくという考え方の下、パナソニックグループが「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立を目指して進めているアクションとして
- 新規資源投入の削減:修理がしやすい商品設計、モジュールの共通化、再生材の活用など
- 長期間使用が可能なビジネスモデルへの変革:IoTを活用したメンテナンス・アップデート、サブスクリプションビジネスの導入など
- リサイクルの仕組みの創出:日本でのリサイクル工場の運営ノウハウを活用した、部品・モジュールの再利用など
――を紹介した。
またWBCSDに加盟するパナソニックグループは、GCPの開発にも積極的に参画してきた。こうした活動を通じて、CE社会の実現に当たっては越えなくてはならないハードル・課題も浮かび上がりつつある。その点について上原は、「カーボンニュートラルと同様の、科学的根拠がある共通目標の設定」「経済合理性のあるCE型社会システムの構築」「イノベーションを加速する評価指標の整備」「資本市場の理解醸成」「消費者の行動変容」を挙げるとともに、「パナソニックグループは今後も、GCP開発の取り組みに積極的に参画することで、こうした課題の解決と、CE型社会への早期移行に貢献していく」と言及した。
「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現を、パーパス(存在意義)として掲げるパナソニックグループ。地球環境問題の解決は、その実現に当たっての大前提と位置付けている。今後も「Panasonic GREEN IMPACT」の推進とともに、社会やグローバルのパートナーと緊密に連携しながら、脱炭素・CE型社会の実現に向けた活動を重ねていく。
※掲載している解説図版は、COP29でのパナソニックグループ発表内容(原典:英語)を日本語化したものです。
記事の内容は公開時のものです。
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