2024年10月3日

技術・研究開発 / トピックス

「脳の健康状態を見える化する機器」が2年連続で愛媛県松前町のフレイルチェック事業に採用 ~事業応募者増加に貢献~

パナソニック ホールディングス株式会社 プロダクト解析センター(以下、プロダクト解析センター)は、開発した脳の健康状態を見える化する機器(「推定BHQ」計測器)が2023年に引き続き松前町(愛媛県松前町)で取り組まれているフレイルチェック事業に導入され、事業応募者増加に貢献しました。併せて、一般社団法人ブレインインパクト(以下、ブレインインパクト)により、町民の生活習慣等に関するアンケートも行われました。

松前町のフレイルチェック事業は在住高齢者を対象に心身の生活機能をチェックする取組みで、ブレインインパクトが監修しプロダクト解析センターが開発した「推定BHQ」計測器による脳の健康状態の計測と、ブレインインパクトが作成した脳に良い18の行動指針「BHQ Actions」に基づいた町民の脳の健康行動の実施状況(生活習慣も関連)が調査されました。本取り組みは2年連続で実施しており、2023年度に引き続き、事業応募者の増加に貢献し、「脳の健康測定」が行動変容のきっかけになったことが分かりました。さらに、今回の調査結果の分析からは、フレイルリスクとBHQ Actionsの実践状況が関連しており、脳の健康づくりは、フレイル予防とあわせて実施していくと有効であることが示唆されました。

図1 フレイルチェック事業参加募集チラシ

■2年連続で事業応募者増加、参加動機は「脳の健康測定がしてみたかった」が最多
2024年度のフレイルチェック事業応募者は276人で、2023年度からさらに1.4倍増加しました(2023年度は、前年度比2.7倍増加)。当日の参加者へのアンケート調査で参加動機を聞いたところ、2023年度と同様に、「脳の健康測定がしてみたかった」の回答が最多であり、引き続き事業応募者の増加に一定の貢献ができたことが示唆されました。

図2 2022年度からの事業応募者の推移(左)と2023年度、2024年度の参加動機(右)

■「脳の健康測定」が行動変容のきっかけとなった人が約半数
特に、2023年度もフレイルチェック事業に参加し、脳の健康測定を行った方に対して、「前回、脳の健康状態を測ったことで、意識的に行動変容をとるようになったか?」と伺ったところ、44%の方が「あてはまる」または「大いにあてはまる」を選択し、具体的な実践内容として、「運動体操をする」「メタボ教室にいく」「人と良く触れ合う」「新しい分野に挑戦する」など、脳の健康維持・増進に効果的な18の行動指針「BHQ Actions」に沿った行動を実践されたことがわかりました(図3)。

図3 2023年度の脳の健康測定参加者の行動変容の有無

■フレイルスコアとBHQ Actions全体平均スコアが関連、フレイル予防と脳の健康づくりの両立を示唆
2024年度の事業では、全ての参加者に対して、脳に良い18の行動指針「BHQ Actions」の実践状況を回答してもらいました(18の行動指針をカテゴライズした7項目について5段階で評価)。また事業内であわせて取得したフレイルチェック質問項目(*1)の結果から、フレイルリスクと関連するフレイルスコア(*2)を算出しました。これらの関連を調べるため、BHQ Actions実践状況の評価値の全体平均であるBHQ Actions全体平均スコアとフレイルスコアとの相関係数を計算したところ-0.3のマイナスの数値が得られました。つまり両者に少なくとも負の相関関係があり、BHQ Actionsを実践している人ほどフレイルリスクと関連するフレイルスコアが低い傾向がみられました(図4)。このことから、フレイル予防とBHQ Actionsで表される脳の健康行動の実践は、あわせて実施していくことが有効であると示唆されます。

今回の結果から、フレイルチェック事業のような健康確認事業に、脳の健康状態を見える化する機器を併用することで、より地域の人々の興味関心をひき、行動変容を促すきっかけとなる可能性が示されました。プロダクト解析センターは、今後もBHQ推定技術を通じて、人々の脳の健康状態を見える化し、ウェルビーイングなくらしの実現に貢献してまいります。

図4 BHQ Actions実践状況アンケート(左)とフレイルスコアとBHQ Actions実践状況の関連(右)

*1 フレイルチェック質問項目:厚生労働省が後期高齢者のフレイル早期発見に向けた作成した15項目の質問票。「体と心の健康状態」「口腔機能」「運動・転倒」「認知機能」「喫煙」「社会参加」など10類型で構成され、75歳未満でもフレイル状態かどうかチェックできる。参考:「厚生労働省 後期高齢者の質問票の解説と留意事項」https://www.mhlw.go.jp/content/000605506.pdf
*2 フレイルスコア:東京都健康長寿医療センター研究所が明らかにした「フレイル関連12項目」について、健康リスクがあると考えられる回答数(12点満点)。4点以上でフレイルリスクが高いことを示す。参考「東京都健康長寿医療センター研究所 プレスリリース」https://www.tmghig.jp/research/release/2023/0710.html

<ご参考>
◇パナソニック ホールディングス株式会社 プロダクト解析センターについて
https://holdings.panasonic/jp/corporate/pac.html
パナソニック ホールディングス株式会社 プロダクト解析センターは、パナソニックグループのプロダクトを通して蓄積された解析評価技術を幅広い分野のお客様にご利用いただいております。今回開発した顔の表情による「推定BHQ」計測器について、スマホアプリなどでの簡易な計測の実現を行っていくと共に、企業や自治体などを対象に社員や住民の脳の健康管理に用いていただけるよう、商用化を行うことも検討しています。

◇一般社団法人ブレインインパクトについて(https://www.bi-lab.org/
一般社団法人ブレインインパクトは脳の健康管理指標BHQに関連する各種取り組みについての国際標準化活動を推進すると共に、脳情報のデータベースを公的共用リソースとして提供しています。今回の研究成果を活用し、脳科学研究の振興及び研究成果の社会への還元をより一層進めていく予定です。ブレインインパクト理事長の山川は以下役職も兼務しています。
・東京工業大学科学技術創成研究院バイオインターフェース研究ユニット特定教授
・京都大学ブレインヘルスケア・ビジネスエコシステム寄附講座特命教授
・神戸大学産官学連携本部客員教授

◇松前町について(https://www.town.masaki.ehime.jp/
愛媛県松前町は、交通の利便性が高く、豊かな水資源とバランスの取れた産業に恵まれ、大型の交流拠点施設が立地するなど、町内で「衣・食・住」が完結できる町、「ライフタウン」として非常に恵まれた町です。松前町では、より良い町にするため、誇れるライフタウンの実現を目指し、まちづくりに全力で取り組んでいます。

◇「推定BHQ」計測器の紹介
パナソニック ホールディングス株式会社 プロダクト解析センターが開発した顔画像から脳の健康状態を推定する「推定BHQ」計測器は、モニターに映し出された喜怒哀楽の表情を参加者にまねてもらい、その表情・感情の変化からBHQを推定します。「推定BHQ」計測器詳細については、パナソニック ホールディングス株式会社のプレスリリース(https://news.panasonic.com/jp/press/jn230801-2)をご確認ください。

◇「BHQ Actions」の紹介
脳科学の専門家であるBHQプロジェクトメンバーが中心となり、脳の健康維持や向上に有効であることが学術的に示されている生活習慣や心理特性から、脳を健康にするための行動指針を18個抽出したものです。健康管理、運動、社会生活、食事、睡眠休息、学習、環境の7つのカテゴリにわけてわかり易く示しています(図5)。「BHQ Actions」の詳細については、ブレインインパクトホームページ(https://www.bi-lab.org/bhq-actions)をご確認ください。

図5 BHQ Actionsの一覧


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