5月11日、パナソニックグループは2021年度決算を発表した。2019年度からの3カ年にわたる中期戦略の最終年度となる2021年度の成果、そして4月から本格スタートした事業会社制1年目であり、グループCEOの楠見が「競争力強化の2年目」と位置付ける2022年度の見通しは――。パナソニックグループが今後進もうとしている方向性を、この節目となる決算に注目して読み解きたい。
収益力の着実な改善で 売上・利益全てで前年を上回る着地に
パナソニックグループが2019年度から取り組んできた中期戦略の最終年度――2021年度決算は、売上高・調整後営業利益・営業利益・純利益の全てで前年を上回る着地となった。
低収益体質からの脱却に向けた取り組みを着実に推進し、掲げてきた「経営体質の強化」「事業ポートフォリオ改革」「車載事業の収益改善」のポイントにおいても、しっかりと成果を上げている。
「経営体質の強化」では1年前倒しで達成した1,000億円の利益貢献という目標をさらに350億円上積み。「事業ポートフォリオ改革」では、Blue Yonder社の全株式取得、車載電池の北米工場の生産ライン増設など成長に向けた投資を実施。「車載事業の収益改善」については、19年度の赤字から20年度は黒字転換を実現した。
そして、21年度は旺盛なEV需要を背景に車載電池で大幅増収を達成したエナジー、産業用モータやコンデンサ、EVリレー等が好調なインダストリー、実装機・プロジェクタなどで増販を達成したコネクトなどで増収増益となり、全社でも増収増益を達成。純利益は前年比55%増となるなど、2022年度以降の新たな中長期戦略へ弾みをつけた。
ネット資金においても、前中期戦略が始まった19年度期首との比較で改善。前中期戦略において設定したキャピタルアロケーション方針のもと、成長投資や構造変革に必要となる強い財務基盤を構築するため、必要な資金は、事業からのキャッシュフローで充当する戦略を着実に実行。営業キャッシュフローに加え、事業入替や資産売却等で資金を創出し、Blue Yonder社全株式取得を含む成長投資に対応しながらも、3カ年合計で、約1,600億円の資金創出超過となった。
会見では、グループCFOの梅田はBlue Yonder社の売上成長について、「2021年度の売上高は⼆桁成長。ソフトウェアの単体売りが減り、リカーリング型のビジネス、SaaS型のビジネスが増え、より収益の確度が高まっている」と自信を見せた。
2022年度も引き続き増収増益へ 自主責任経営の徹底で、競争力強化を加速
2021年度決算とともに示した2022年度の業績見通しは引き続き「増収増益」。需要回復に加え、各事業会社の自主責任経営による事業競争力の強化の取り組みを継続していく考えだ。
パナソニックグループは2022年4月1日、事業会社制へと移行し、事業会社を主役とする新しいグループ体制となった。同日発表したグループ中長期戦略では、長期視点での経営へと舵を切る戦略、そして中期KGIとともに、長期視点でグループが成長していくための投資の考え方を説明。事業会社ごとに自主責任経営のもとキャッシュフローを回し、あるべき姿に向け、自ら投資を行い、各事業領域でさらなる成長を目指す。そして、長期視点で構築した「戦略」と、あらゆる現場でのムダや滞留の撲滅によって高めた「オペレーション力」、すなわち競争力強化によって得られたキャッシュを積み上げ、累積営業キャッシュフロー2兆円を目指すとした。
2兆円という挑戦的な目標――これこそが成長に向けた強い意志であり、お客様へのお役立ちへの思いである。
また会見の中では、中期経営目標(KGI)に対する2022年度公表値の水準についての質問も出た。足元のロシア・ウクライナ情勢や原材料高騰の影響、また影響を見積もることが現在困難なコロナによる上海のロックダウンなど、「経営環境の変化を見極めながら適切な対応策を取っていく」と言及するとともに、梅田は「(KGIは)簡単ではない挑戦的な目標だが、色々な取り組みに対するスピード感も上がっている。(営業利益も)2024年度に最大金額を目論み、達成を目指す」と答えた。
また、「10年先のゴールからのバックキャストで、中長期的にやるべきことはやれるよう、各事業会社が中長期的に必要と考える投資、研究開発費用を計上している」と、長期視点での経営と事業会社の自主責任経営による意識の強まりに応えようとする姿が垣間見える発言もあった。
同日には、決算会見に先立ち、Blue Yonder社を中核としたSCM事業の株式上場準備の開始についての発表も行われた。急拡大するSCM市場において、競争力強化の加速を目指す強い意志を示した。
2022年度は、それぞれの事業における競争力強化の仕上げの年。新たな中長期戦略のもと、自主責任経営の徹底を強固なものとし、社員一人ひとりが、改善に次ぐ改善を重ねていくことで、さらなる高みを目指す――こうした姿勢こそが、お客様へのお役立ちの拡大、そして事業成長力の獲得につながっていく。